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22話【龍治】

22話【龍治】



 俺が倉庫裏に駆けつけた時には遅かった。地面にうずくまるなおと、その直を執拗しつように足蹴りしている孝弘たかひろの姿。



「何してんの?」



 自分でも驚くくらい低い声。



「り、龍治りゅうじ……」

「りゅうちゃん……」


 孝弘と直が同時に俺の名を呟く。


 俺は、一時停止したように動かない孝弘の前を通り過ぎて一直線に直のところまで行く。


 直の側で膝をついて致命的になるような怪我がないかをサッと見る。制服は破れてないけど砂や土が付いてぐちゃぐちゃになっていた。顔を覗き込めば左頬が少し腫れている。右の拳で殴られたのがすぐに分かった。顔は一発だろうけど、あとは蹴ったりしたんだろうな。



「……帰るぞ、直」



 俺は一言いって直の腕を掴んで立ち上がらせる。



「……う、うん」


 弱々しく頷く直の腕を俺の肩に回して立つのを助けてやる。



「いたッ……」


 何とか身体を起こした直は一応立てはしたがすぐに左足がガクンと崩れる。



 これじゃあ歩けねぇか。


 そう思った俺は少し前屈みになって直に背中を向け、


「おんぶしてやるから」


「……え。でも僕……」


 肩越しに直を振り返ってみれば、少し戸惑ったような直の顔が見えた。



「痛くて歩けねえんだろ? 早くしろよ」


 苛立ったように早口で言うと直はためらいながらも俺の背に身を預けてきた。その時に直が、「……りゅうちゃん、ごめん……」そう呟いたのを俺は聞き逃さなかった。



「龍治、俺……俺は……」


 俺と直を黙って見ていた孝弘は、すごく悲しそうな、でもちょっと切なそうなよく分からない表情をしていたが、俺は早く直の怪我をどうにかしたくて、孝弘のことは無視して急いでその場を後にした。






 ――良かれと思って俺は直から離れたけど、それは逆効果だったらしく、背負っている直の体温を感じながら俺は後悔していた。



 なんでもっと早く気づいてやれなかった?


 なんのために俺は直から離れた?



 守っているつもりだったのに、なんで直は殴られてんだ?



 悔しいのか情けないのか分からないけど、背中越しに直が泣いてるのが分かって俺も目から汗とは違う何かが込み上げてきそうだった。


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