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19話【直往】

19話【直往】



「ここじゃあ話せねぇからとりあえず倉庫裏まで来てくんね?」


 そう言うと鈴木は僕に背を向けて歩き出す。


 本当は早く帰りたかったんだけど、鈴木の真面目な態度に気になった僕は断りきれず黙って鈴木の後をついて行った。



 普段はあまり使われていない旧校舎の体育用品を保管する倉庫。いつもはちょっと悪い人たちの溜まり場になってるけど今日は誰もいないみたいだった。



 鈴木が立ち止まりこちらを振り返る。



「……なんでお前なんだよ」


「え、なに?」


 少し俯いて呟いた鈴木の言葉が聞き取れず、僕は眉をひそめた。


「お前さ」


 鈴木が顔をあげて僕をまっすぐ見つめてくる。その表情が少し悲しげに見えるのは僕の気のせいだろうか。


「お前、なんでいつも龍治りゅうじと一緒にいんの?」


「え……?」


 僕は一瞬なにを言われてるのか分からなくて目をぱちぱちとまたたいた。



「『え』じゃねーよ。龍治となんでいつも一緒にいるんだよっ」


 少しイラついたように声を荒げる鈴木。



「な、『なんで』って言われても……」


「小学校の時からずっと龍治のあとばっかりついてんじゃん!」


 言いながら鈴木は苛立ちをぶつけるように近場の小石を思いっきり蹴った。蹴られた小石が鉄製の倉庫の扉に当たり不快な音を立てた。



「りゅうちゃんとは幼馴染おさななじみだし……」


「俺だって幼馴染だろーが!」


 鈴木は僕の肩口を平手で力一杯押し退けてきて、


った!」


 僕は押された拍子に数歩後ろによろけた。


「って言うか。なんの話なの?!」


 鈴木が何をしたいのか何を言いたいのか分からず、僕もだんだんとムカついてきて鈴木を思い切り睨みつける。


「生意気なんだよお前!」


「はぁっ?!」


「金魚のフンみてーに龍治の後ばかりついていきやがって!」


 鈴木は早口で言って僕の胸ぐらを掴んできた。


「き、『金魚のフン』って……」


「みんな言ってるぜ。小学校の時から」


 バカにするようににやりと笑った鈴木は僕の胸ぐらから手を離す。


「そ、そんな事……っ?!」


『そんな事ない』と言い終わる前に僕は、左頬に鈍くて重い打撃音と共に左側の口内が強く押し込まれる強い痛みを感じた。


 反動で右を向いた顔。衝撃で一瞬だけ視界がちかちかと点滅する。



 殴られた?



 そう思うと同時に間髪入れずに今度は鳩尾みぞおちに膝蹴りを入れられて、


「ぐっ、げほ……っ!」


 喉の奥から何かが込み上げるような感じがしてジンジンと熱く痛むお腹を抱えて僕は地面に膝をついてしまう。


 

 痛さと吐き気でせる僕が少しだけ顔をあげると、傷ついてるような、でもどこか怒っているような複雑な表情をした鈴木の姿が目に映った――


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