16話【龍治】
16話【龍治】
直を客間に残して俺は自室で着替えを始める。勢いで直を家に呼んだのはいいけど、寝るところとか全然考えてなかったな。
『まあ、俺のベッドで一緒に寝ればいいか』
なんて気楽に言ってるけど本当は心臓がバクバクとしている。
好きになったやつが、一週間も自宅で一人きりの夜を過ごすなんて聞いたら一緒にいてやりたくなるし、それに直は何かにつけて危なっかしいところがあるというか間が抜けているというか……とにかく一人きりのにはさせられなかった。
あと、多分だけど、直のやつまたいじめられている気がする。俺の前では平気そうな顔して隠しているみたいだけど、幼馴染の勘っていうのか、とにかく直の表情がいつもと少し違う感じがしていた。
直本人に直接聞きたいけれど、はぐらかすだろうし、しばらく様子見をしていこうと思う。
ルームウェア(普通のカジュアルなスポーツジャージ)に着替えて直がいる部屋に戻ると、ソファにちょこんと座っている直の姿が目に入り、それが相変わらずだと思うのと同時に同じ空間にいるっていうのが嬉しくて照れ隠しに吹き出すように笑ってしまった。
「え?! なにりゅうちゃん、僕なんか変?!」
「いや違う。お菓子先に食べてればよかったじゃん」
目を丸くして慌てる直を軽くあしらって俺は直の向いに座る。ローテーブルに用意されたお菓子を一口つまんで紅茶と一気に喉に流し込む。
「……りゅうちゃんいないのに先に食べられないでしょ」
少し上目遣いで口を尖らす直。
そんな直が可愛いなぁ、と正直に思っていたら目と目が合ってしまい俺はいたたまれないのと何かしらの罪悪感ですぐに目を逸らしてしまった。
「どうしたの? りゅうちゃん」
きょとんとして首を傾げる直。そのしぐさがまた可愛いくて俺の保護欲をそそってくる。
こいつ、分かっててやってんじゃねーか?
そんな気さえしてくるが、多分これは直の昔からの癖なんだろう。直自身でさえ意識していないだろう『小さな癖』を知っているってだけで俺は少し誇らしくもあり優越感に浸った。




