11話【直往】
11話【直往】
「……りゅうちゃん体調でも悪いの?」
「いやッ大丈夫!」
りゅうちゃんの様子が少し変だったから僕はりゅうちゃんの顔を覗き込んだだけど、りゅうちゃんは慌てたように顔を逸らしてしまった。
「そっか……」
りゅうちゃんのそんな態度に僕は少し寂しいような悔しいような気がしたけど、それ以上はなにも言わずにただ隣を歩いた。
りゅうちゃんはきっと僕に言えない何かを隠しているのだろう。でもそれはきっと僕が嫌いとか単純なことじゃなくて、僕を『気遣って』のことだろうと、自分勝手にそう思い込むことにした。
「あ、そうだ」
僕は、あることを思い出してふいに足を止めた。
「どうした?」
声に気づいて振り返ってくるりゅうちゃん。
「ちょっとコンビニ寄っていい?」
「コンビニ? 別にいいけど」
りゅうちゃんがちょっと眉をしかめて僕を見る。
「うん。夕飯買いに行くんだ」
「……おふくろさん、いないのか?」
「うん」
僕は小さく頷いて、今日から一人で留守番する事を伝えた。
「おばあちゃんがさ、腰痛めたみたいで。母さん実家に帰ってるんだ」
そこまで言うとりゅうちゃんはきょとんとした顔をして、
「え、でも親父さんは?」
「父さんは単身赴任」
「そうか……」
短くさらりと言うと、りゅうちゃんは少し顔を俯かせて頷いた。
「凛華と蓮華、素往は母さんが一緒に連れて行ったから今日から一週間くらい一人で留守番なんだ」
僕はりゅうちゃんと隣立ってコンビニの扉をくぐった。
僕には、下に歳の離れた双子の妹たちと弟がいて、凛華と蓮華は五歳で、素往は三歳になったばかり。僕が長男で四人妹弟だ。
「お前……、一週間も一人なのか?」
今日の夕飯と明日の朝ごはんを選んでいる僕の隣でりゅうちゃんは心配そうに僕の顔を覗き込んできた。
「うん。まあそうなるね」
「だったらその間、俺の家に来ないか?」
「え?」
りゅうちゃんの突然の申し出に、最初意味が分からなくて僕はポカンと口を開けて間抜けな顔になってしまった。




