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1話【直往】

1話【直往】


 ――始まりは何だったんだろうか?


 確か、りゅうちゃんからの告白だった気がする。



「ねーぇ、りゅうちゃん」


 僕は隣でゲームに夢中になっているりゅうちゃん【龍治りゅうじ】に話しかけた。



「何だよ! 今いいとこなんだから! それに、『りゅうちゃん』って呼ぶのやめろッ」


 胡座あぐらをかいて携帯ゲーム機の画面から目を離さないりゅうちゃん。


 僕はりゅうちゃんの側で横たわっている自身の半身を起こしてりゅうちゃんの背中に自分の背中をくっつけて座り直す。

【彼が】構ってくれなくて僕はちょっと唇を尖らせてしまった。相手にしてくれないさみしさの裏返しで――


「……。聞きたい事、あるんだけど…」

 もったいぶるようにたっぷりと前置きを含んでからそう呟くと、

「……何だよ?」

 画面からようやく視線を外してこっちを見てくれた。



「やっとこっち見てくれた」

 笑顔で。そう言えば――


「なぁ〜に?」携帯ゲーム機を床に置いて、「構って欲しいの?」身体ごと僕の方に向き直ってくれた。


「うん」


 頷いて、りゅうちゃんの額に自分の額をそっとくっつけた。

 眼前がんぜんにあるりゅうちゃんの顔。自然と互いの視線が絡む。


「お前って――」

 りゅうちゃんの唇が声に沿って動き――次には僕の唇にそっと重ねられた。



 ――柔らかい。


 ――あったかい。


 ――優しい。



 まだ――もっと。


 ずっと。この状態でいたい――



 そんな感情とりゅうちゃんの唇を堪能たんのうしていたかったのに、すぐに離された。



「ねー、りゅうちゃん」


「なに?」


「もっとして。」

 甘えた声でおねだりしてみた。


「……」

 目の前のりゅうちゃんの顔が呆れたような表情になる。


なお、お前――」僕の名を呼ぶりゅうちゃん。ジッと僕の目を見て、

「調子乗りすぎ!」

 と、軽くオデコをオデコで頭突きしてきた。


「あいたッ!」

 本当に痛かったので僕は咄嗟とっさに身を引いてしまった。


「もーッ、いったいぃ! りゅうちゃん頭固い! 痛い!」

 わざとだけど、オデコを押さえてわめいてみる。


「あーもー。ウルセェ」

 完全に棒読みで言って、りゅうちゃんは再び携帯ゲーム機を持つ。


「ねー待って待ってりゅうちゃん」

 僕はつかさずりゅうちゃんの背中から抱きついた。


「んな駄々っ子と付き合ってられねーの」

 サラリと冷たい事を言うりゅうちゃんに少しムカついたので、



「…りゅうちゃんが【告白】してきたくせに」

 水戸黄門の紋所もんどころみたく最終兵器を言ってしまった。これを言うと、りゅうちゃんはすぐに黙ってしまうから。


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