表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世で見た彼女の笑顔は  作者: ひゃるる
7/8

出会い、別れ(7)

 夏菜との花見の翌日。

 いつも通り登校し、朝のホームルームの時間を待っていた。

 しかし、今日はいつもと違い、ホームルームの時間になってもクラスの担任は教室に入って来る事はなく、その異様な状況に周囲もざわつき始めた。

 チラリと隣の席を見ると、席の主は見当たらない。

 背中がゾワっとした。嫌な予感がする。

 制服のポケットからスマホを取り出してNINE(ナイン)を開くが、夏菜からのメッセージは来ていなかった。

 取り敢えず安否確認の意味も込めて、『風邪か?』とメッセージを送ってみるが、直ぐに返事が来る様子はない。

 …まぁ、昨日疲れてたっぽいし、風邪かなんかだろ。

 そう思いスマホをしまうと、ちょうど良く担任が教室に入って来た。


  「静かに」


 担任の一声で教室の喧騒は直ぐに静まった。

 教室内を見渡し、静かになった事を確認してから、担任は言いにくそうに、ゆっくりと口を開く。


  「…朝のホームルームは無しになりましたが、皆さんはもう少しだけここで待機していてください」


  「先生、なんかあったんすか?」


 担任の言葉に、クラスメイトの一人が反応を示す。その言葉に、担任は苦虫を噛み潰したような顔をするが、直ぐに取り繕って説明しよう口を開いた時。


 ピンポンパンポーン。

 校内放送を知らせる曲が鳴る。


  『全校生徒の皆さん、おはようございます。本来、この時間は朝のホームルームを行っている時間ですが、その時間を借りる事を許してください』


 低い男のしゃがれ声が教室中に響く。

 背筋がピンと立つ。また嫌な予感がした。

 担任にバレないように、ポケットから再びスマホを取り出すが、画面にNINEの通知メッセージは表示されていない。

 そして次の瞬間、俺は信じられない言葉を耳にした。


  『…昨日、午後十時二十五分頃、二年E組の()()()()()さんが亡くなりました』


  「…………………………………………は?」


 思考が停止した。

 直ぐそばでカタンと床に何かが落ちる音が聞こえた。

 それが、自分のスマホが床に落ちた音だと、俺は気付く事はなかった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ