出会い、別れ(7)
夏菜との花見の翌日。
いつも通り登校し、朝のホームルームの時間を待っていた。
しかし、今日はいつもと違い、ホームルームの時間になってもクラスの担任は教室に入って来る事はなく、その異様な状況に周囲もざわつき始めた。
チラリと隣の席を見ると、席の主は見当たらない。
背中がゾワっとした。嫌な予感がする。
制服のポケットからスマホを取り出してNINEを開くが、夏菜からのメッセージは来ていなかった。
取り敢えず安否確認の意味も込めて、『風邪か?』とメッセージを送ってみるが、直ぐに返事が来る様子はない。
…まぁ、昨日疲れてたっぽいし、風邪かなんかだろ。
そう思いスマホをしまうと、ちょうど良く担任が教室に入って来た。
「静かに」
担任の一声で教室の喧騒は直ぐに静まった。
教室内を見渡し、静かになった事を確認してから、担任は言いにくそうに、ゆっくりと口を開く。
「…朝のホームルームは無しになりましたが、皆さんはもう少しだけここで待機していてください」
「先生、なんかあったんすか?」
担任の言葉に、クラスメイトの一人が反応を示す。その言葉に、担任は苦虫を噛み潰したような顔をするが、直ぐに取り繕って説明しよう口を開いた時。
ピンポンパンポーン。
校内放送を知らせる曲が鳴る。
『全校生徒の皆さん、おはようございます。本来、この時間は朝のホームルームを行っている時間ですが、その時間を借りる事を許してください』
低い男のしゃがれ声が教室中に響く。
背筋がピンと立つ。また嫌な予感がした。
担任にバレないように、ポケットから再びスマホを取り出すが、画面にNINEの通知メッセージは表示されていない。
そして次の瞬間、俺は信じられない言葉を耳にした。
『…昨日、午後十時二十五分頃、二年E組の夏菜咲々良さんが亡くなりました』
「…………………………………………は?」
思考が停止した。
直ぐそばでカタンと床に何かが落ちる音が聞こえた。
それが、自分のスマホが床に落ちた音だと、俺は気付く事はなかった。




