人魚
その日はとても暑かった。
日がカーテンの隙間からさんさんと顔面に降り注いでいる。
昨夜、両親と妹が旅行に出かけて洗濯機を回してない事や、汗だくでシャワー浴びたいなど色んな思考が脳内で駆け回っている。が、いくら暑くても面倒くささの前には為す術もなくとりあえずスマホで時間を確認した。
もうとっくに13時過ぎ、(ニートとはいえこんな生活良くないんだろうけどなぁ……)なんて事を考えていると家のチャイムがなり、ボサボサの髪のまま1階まで駆け下り。
「は〜い」返事をしながらドアを開けると少し違和感を覚えるくらいに細い配達員が立っていた。
顔は帽子を深く被りよく見えなかった。
無言でその身体には不釣り合いな大きな発泡スチロールの箱をこちらに差し出してきた。
「あ、ありがとうございます〜、え〜っと、サインとかは……」箱を受け取り、視線を上げそう言いかけると配達員の姿は影も形もなかった。
(ヤバいものを受け取ったのでは…?)そう思い家の外に置いておこうか迷ったがとりあえず玄関を閉めリビングに箱を置きそれを目の前にする様にあぐらをかいた。
腕を組み開けるか悩んでいると、箱の中から何か聞こえたような気がした。
身構えてすぐ逃げられるように中腰で身構え、箱に近づく。
ガタガタッ!
明らかに音も、なんなら振動で箱が少し動き。文字通り腰を抜かす。
「な、なんなんだよ〜〜っ!!」
半ば諦め気味に情けない声をあげると内側から箱が勢いよく開けられ何かが襲いかかってくる。
(あ、しんだ……)目を強くつむり、でも諦めた様な表情で固まっていると、爪やキバで皮膚を切りさられるでも、針やトゲで刺されるわけでもなく、どちらかというと、そう……
やわらかい……?
恐る恐る目を開けると小さな女の子がこちらをニコニコと笑みを零しながら見上げている。
「……は?」
ヤケに大きな箱かと思えば女の子が入っていて、そして肌が冷たい、クール便に入って送られてきて、でも生きてて、尾ビレ?
少女の後ろに大きな尾ビレが見え、首を伸ばし横から見てみると下半身が魚の様な、絵本などに出てくる人魚そのものだった。
「タケ…ル?」
「えっ!?」まさか自分の名前を呼ばれるとも思わずまたも情けない声をあげてしまう。
「覚えてないの……?」
「なっ、なニガッ!?」声が裏がえる
「今よりも〜っと小さい頃、タケルが私を助けてくれた。網にかかって動けないところ。」
「アミ?助けた?え〜〜〜……っと。」
確かに記憶もおぼろげなほど小さな頃、海岸の岩場で何故か巨大なアミに引っかかってもがく女の子がいた。
顔や声は思い出せないし、重い網をどかしてあげると直後に後ろから自分を呼ぶ声がして振り返り、視線を戻すと女の子は居なくなっていた。
「あの、20年くらい昔の……?」
「多分そう!名前、タケルであってる?」
「そう、だけど……じゃ、じゃあ、あの女の子が、君で、人魚ってこと?」
「そう!あれからね、タケルの事を考えると胸が苦しくて、物凄くお腹がすいて、すっごく会いたかったから人間の事いっぱい教えてもらって会いに来たの!」
「は、はぁ……」何一つ理解できない…。
「その、それで何をすれば……」
「何もしなくていいよ?ただでさえ人間は短命なんだから、あっ!そうだった!結婚しよっ!!」
「はぇ……?」クソニートの脳内も真っ白で理解する事を諦めている。
何が何でどうなっているのやら、
真実は全て名も無き人魚しか知らない。
ある程度思いつくけど続きを書く予定はありません
冒頭だけこんな感じに書き続けていく
かもしれません