ランドセルを背負った息子が、おかあさんをまもると言った
タイトル浮かばず、長くなりました。
「夏祭りに行く前に」の続き?にもなっていますが、これ単体で読めます。自作品のスピンオフ、のさらにIFストーリーです。
「えへへー」
来年小学校に入学する息子が、まだまだ大きいランドセルを背負って、嬉しそうに笑った。何かを期待するような視線が母親の凪沙に向かう。
「立派になったね、暁斗。もう小学生かぁ」
笑顔で凪沙は暁斗の頭をなで、暁斗はご満悦だ。その様子を見ながら、父親である泰基は内心でツッコんでいた。入学は来年だろ、と。
「あのね、おとうさんがいったの。しょうがくせいになったら、けんどうやっていいって」
暁斗の発言に、泰基は僅かに眉をひそめる。
確かに言った。泰基が先生をしている剣道を、やりたいと言った暁斗に「小学生になったらな」と言った。
だが、それが何だというのか。
「そしたらね、オレつよくなるんだ! おとうさんよりつよくなって、おかあさんのこと、まもってあげるね!」
聞いていた泰基は吹きそうになったが、凪沙は違うようだ。感動した顔つきで、暁斗を抱きしめた。
「んもー、かわいいっ! ありがとね、暁斗。頼りにしてるからね」
「ちがうっ、かわいいじゃなくて、かっこいいの!」
自分を格好いいと言うなと、ツッコみたい泰基を余所に、凪沙は暁斗を抱きしめたままだ。
「うんそうだね、暁斗は格好いいもんね」
「そうだよ。えへへー」
母親が素直に言い直したことで満足したようで、暁斗は嬉しそうに笑う。だが、泰基に向けてきた表情は一変、何かを挑むような顔をしていた。
その視線をサラリと受け流した泰基だが、暁斗が重そうにランドセルを手で支えていることに気付き、容赦なく引き離す。
「ええー、なんで!?」
不満げな凪沙の声を聞き流して、暁斗に声を掛けた。
「ランドセルを下ろせ。重いんだろ」
「……だ、だいじょうぶ、だもん」
そう答えるものの、強がっていることは丸分かりだ。そしてそれを、凪沙が気付かないわけもない。
「あ、そうだね。まだ暁斗ちっちゃいもんね。ごめんね、気が付かなくて」
慌ててランドセルに手をかけて下ろそうとする凪沙の手を、暁斗は拒まない。けれど、唇を尖らせて不満そうな顔をしていることに、泰基だけが気付いていた。
(ちっちゃいって言われちゃったもんな)
そもそも、空のランドセルを重く感じているうちは、まだまだだ。
上手く妻を使って仕返しできたことに、泰基は内心で笑う。自分に挑むなど十年早い、と思いながら。




