敗北者は、寮に着く
「合格おめでとうございます。では、寮に案内しますので、私に付いてきてください」
さっきの試験監督だ。…何処から出てきたんだ?…まぁ、こんな化け物ばっかりの学校で気にしたら負けか。俺は、まだ治りきっていない体を無理矢理動かしてついていった。不思議な事に、寮に着くまで誰とも会わなかった。疑問に思い、試験監督に聞いてみた。
「あの、誰とも会わないのですが…何故ですか?」
「…あれほどの力を持ちながら感知出来ないのですか?…何をしてきたのですか?」
…あれ?馬鹿にされた?…気にしない事にしよう。そんな事よりも 感知?…確かに今迄でもそれ系の修業はしていなかったな。けど、今するのは無理だな。さっきの戦いでもうボロボロだ。
五分程歩くと、寮に着いた。
そこは…
一軒家だった。
…ゑ?こんな狭い所に?…そういえば、この学校に、何人いるか聞いてないな。どっちも聞くか?…いやぁでもなぁ、馬鹿だと思われるか。あぁ、でも[聞くは一時の恥]って言うしなぁ。
「あの、この学校って何人生徒がいるんですか?」
「…男子が貴方を入れて3人。女子が5人です。…それよりも寮が一軒家である事に疑問は感じないのですか?」
「…はい。ですが、あんまり聞きすぎると自分で考えて無いみたいで…」
「ハァ、いいですか?当たり前ですがここは、学校です。つまり、貴方は勉強をする為にここに来ているのです。たしかに、何でもかんでも聞くのは良くないでしょう。ですが、考えても分からないのであれば聞けばいいのです。いえ、むしろ聞きなさい。それが、ここに来た貴方の義務であり、権利なのです」
その言葉は、俺の心にスッと入ってきた。思えば俺は、本で調べる事はあっても誰かに聞くと言う事は今迄ほとんどしてこなかった。そのせいか、俺は人に何かを聞くことは恥ずかしい事だと思っていた。いや、思い込んでいた。でも、違うんだ。
聞いたっていいじゃ無いか 生徒だもの
カルワ
…何か、浮かんできたな。まぁ良い。この学校にいる間はこの言葉を座右の銘にしよう。
「では、何故一軒家なのですか?少ないとはいえ8人もいるわけですし、それに女子もいるから教育衛生上良くないのでは?」
「いい質問の仕方ですね。…その答えは中に入ったら分かりますよ」
目で促されて入ってみると中は…高級宿泊施設のようだった。…高級宿泊施設行った事無いけど。
「こ…れは一体…どうなっているんですか?」
「フフ、やはり新入生がそうやって驚くのを見るのは飽きませんね。これは空間魔法術です。あの一軒家は只の張りぼて。日替わりでこの空間を維持しているのです。ちなみに明日の当番は貴方ですよ?」
…ついていけるのだろうか
俺は思っていたよりも過酷な学校生活に心が折れそうだった。