帝王は、両手に花を持ち花の都を目指す
この帝国において帝王の仕事はさほど多くは無い。帝王のみが許可出来る事に対する署名や定例会での会長くらいのものだ。カルワは自主的に民の意見に目を通したりしているが、たかが知れている。
建国当初は隷属国の管理やら何やらで目が回るような忙しい日々だったが、最近は落ち着いてきている。
その事を察したイブとケシャナはカルワをデートに誘った。勿論2つ返事でオッケーをもらいあらかじめ2人で決めてあったデートコースを回る事になった。
デートの舞台は帝王直轄領(帝王城から出ている結界の内部)にある花の都と呼ばれる場所だ。デートスポットとして名高いこの都は他の都とは違い、観光による収入だけで都の維持費を賄っている。その為、この都では税率が限りなくゼロに近い。
行き方としては馬車が最も人気が高い。馬車を持っていない、または持てない者でも気軽に女王や姫のような感覚を味わうことが出来るのが人気の理由だ。その例に漏れず、カルワ達も馬車で移動する。が、当然帝王とその妃たる者普通では示しがつかないので、最上級グレードの馬車を使っている。牽引する馬は人造馬であり、機械の体に動力源として魔素を使っている。
馬車自体も特別仕様となっており、様々な魔法や魔術が付与されており中でも極め付けなのが馬車内の時間を操る事ができるという事だろう。この機能を使えば主観では一瞬で目的地に到着した様に感じたり、逆に楽しいひと時をふた時やみ時に増やす事も出来る。カルワ達は会話を楽しむ為に馬車内部の時間の速さを2倍に設定している。
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凡そ3時間程かけて花の都に着いた3人はその幻想的な光景に心を奪われていた。色とりどりの花が空を埋め尽くし、床は踏みしめる度に色や模様を変え、奥には遊園地や水族館等が立ち並ぶ。その光景に見とれていると、この都の管理人がやってきた。
「これはこれは帝王陛下。それに、妃様方も。よくぞここまでお越しになられました」
「ああ。2、3日はここに滞在するつもりだ。宜しく頼む」
「畏まりました」
「それと、何か困っている事があれば迷わず俺に言えよ?」
そうカルワが口にした瞬間、管理人の目が光った。そして、
「帝王陛下。……いえ、カルワ様。そのお話は今、この場でするには相応しく無い話題です。ここは花の都。全ての娯楽が集まる町。そういった場所ですので、帝王陛下とその配下としてではなく、お客様と管理人という立場を貫きたく存じます」
「そ…うだな。うん、俺が悪かった。存分に楽しませて貰うよ!」
「ありがとうございます。では、ようこそ夢の町へ!どうか思い出に残る時をお過ごしくださいませ!」
昨日投稿出来ずに申し訳ございません。





