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帝王は、受験者を手玉にとる


「さぁ、残った15人。ハンデをくれてやろう、全員でかかってこい。誰かが何処かに触れた時点で全員合格にしてやる」


その舐め切った言動に怒りを覚えた者はこの中にはいない。今の条件ですら達成する事はほぼ不可能に近いと理解しているからだ。だが…不可能如きに諦めているようだったら今この場所には立っていない!


「ちなみに言うが…これは実戦形式だ」


言い終わるが先か。瞬く間に臨戦体制を整える受験者達を見て帝王が笑う。


「良い反応だ。…だが、まだ遅い」


直後帝王から最も離れた場所にいた受験者の男数名から血飛沫が噴き出す。帝王は笑っていたのでは無い。嗤っていたのだ。現に今の攻撃も、どれだけ俺から遠ざかろうが全て俺の間合いだと暗に示している。


その絶対的強者の攻撃的な笑みに恐れを成すのは無理も無い話だ。実際に心を折られた者も数名いる。だが、折れなかった者も責める事は出来ない。何故なら一歩間違えれば自分たちもそうなっていただろうと言う確信があるからだ。


「う…ウオォォオオオ!!!」


声を上げて無理矢理にでも恐怖を心の奥底から押し退ける。その効果は周りにも伝播した。徐々に、折れていなかった者達の目に僅かに光が宿る。


だが。だが!だが!!


果たして其れを恐怖の元凶が許すだろうか?否!断じて否!!あぁ、大人気なきは帝王の本質か、はたまたその職に就いているという重みが成す業か。


味方を奮い立たせた剣士はその自慢の剣も鎧も砂と化し、魔法を極め、遂に無詠唱の極致まで辿り着いた者はその魔法を放つ前に結界に閉じ込められ自らの魔法でその身を灼いた。


惜しむらくはその才能。帝国でなければ英雄や賢者として名を馳せていたであろう。恨むべくは帝王の強さ。その才能ですら無慈悲にその圧倒的な力を持ってせる。


時間にすれば僅か数秒。だが、帝王との闘いでは1秒すらも1分、1時間に変わる。その中でまだ辛うじて残っていた自信は修復不可能な程粉々に砕かれた。


しかし--


1人だけ、まだその目に決意の灯火を消していない者がいる。体は見ていられない程に惨たらしく変わり果て、その額から流れ出る汗の量から精神も限界寸前である事を理解させられる。


それでも尚立ち上がるその気力に、焦点のあっていない目でも優に感じられるその気迫に、帝王でさえ尊敬の念を抱かずにはいられなかった。


そして、決着の時が来る。

今回の書き方は如何でしたでしょうか?テンポを意識してみました。いつもより良いよ!と思われた方はぜひブックマークや評価をお願いします!

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