帝王は、その人材に価値を見出す
「それは、お前だ」
帝王の指の先には目深にフードを被った黒ずくめの男がいた。その身長は200を下回らないであろう。フードからは三日月形の口だけがのぞいていた。
「私が…不合格ですか…ククク。
…理由をお聞きしても?」
「適性試験の結果だ。狙ってやったとしか思えないんだがな…
動物を虐待して快感を得た事があり、子供の頃に虐待を受け、人を殺す事に興味がある。
間違いなくお前は殺人狂。もしくは、それに準ずる適性がある。そんな奴を帝王にする訳にはいかない。だから不合格だ」
「ククク、成る程成る程…分かりました。最後に1つだけ質問をしてもよろしいでしょうか?」
「何だ?」
「今ここで貴方を殺したらどうなりますか?」
「それはお前が次の帝王になるな」
「成る程…では、殺します」
殺意を一切感じさせないままに放たれた殺害予告。それに続き、コンマ数秒の間に放たれた幾千幾万という魔術、魔法。先程、数百という魔術を浴びせられた帝王でさえ、その威力には目を見張るものがあった。帝王に反応する暇も無く…それらの攻撃は直撃した。
「フゥ…これで帝王の座は私のものですね。では、最初の命令です。即座に聖精神王国に攻め入るのーーー「久しぶりに驚いたな」っ‼︎‼︎⁇⁇⁈」
帝王は先程と同じように煙の中から姿を見せた。先程と少し異なるのは若干額に汗をかいている事だろうか。
「ば、馬鹿な…こ、この私の1年分の貯蓄を受けても……無傷…⁉︎いや!そんな事はあり得ない!今の攻撃は確かに意識の埒外でした!それで無傷という事は…」
手足を震えさせ、男はブツブツと自らの考えを呟いた。
それに対し帝王は、より絶望を与えるために説明を施してやる。
「そう、俺の無意識の魔素防御力の方がお前の魔素攻撃力より高いという事だ」
「そ…んな…無意識の防御力は普段の10分の1になる…訓練次第で増えるとはいえ、それでも半分以下の筈…という事は少なくとも10億以上…⁇」
(まぁ流石にそんなには無いんだがな…普段から結界重ね掛けしといて良かったな。いや、それよりも…)
「お前、スキルを無効化するスキルを持っているな?」
「……」
「お前の攻撃には危険予知が反応しなかった。今も鑑定が弾かれているな。どんなスキルだ?」
「……殺してください」
ずっと口を噤んでいた男は静かに言葉を発した。しかしそれは質問の答えでは無く、自らの死を望むものだった。
そんな態度を帝王が許すはずも無く、男は……
「は?お前みたいな優秀な人材を殺す訳がねぇだろうが。一生俺に尽くせ」
帝王にスカウトされた。
ヤベェ、いつのまにか5日も過ぎていやがる…だと!?
バイト忙しいって言うのを言い訳にさせてください……





