敗北者は、元の世界に帰還する
〈5分後〉
「よし!皆いるな?
では、教室に転移するのじゃ!」
パッと視界が切り替わり見慣れた景色が目に入る。
合宿、色々あったけどあっと言う間だったな。
…あ、カダラに挨拶しておいた方が良かったか?
「合宿ご苦労じゃった。
今日はゆっくり休んでくれたまえ。
では、解散!」
それぞれが行きたい場所に転移し生徒で教室に残っていたのは、俺とケシャナとイブとカミラの4人だった。
「…どうしたのじゃ?
お主は帝王として帝国に帰らなくて良いのか?」
「…少し話がある」
「フム、面子から考えるにカミラの家族の事か?」
…こんなに少ない要素だけで正解を導き出すとは……知ってはいたが、やはり只者じゃ無いな。
「分かっているなら話が早い。
単刀直入に言うと、俺は今からこの国を無血開城させる。アンタにはその時、敵対しないで欲しい」
「…なんじゃ、そんな事か。
儂は元よりこの国に属してはおらんぞ?」
「そうなのか?
じゃあ安心だな、不確定要素は潰せた。
直ぐにでも国に戻り戦争の準備を始めよう」
「待つのじゃ」
「…何だ?」
「儂はこの学校に入学する前に『何故そんなに強さを求めるか』と問うた。お主は『復讐の為だ』と答えた。だが、もう復讐は済んだであろう?次は何を求め、何を目指しているのじゃ?」
「俺は……幸福な世界を作りたいと思っている。だが、そこに穢れを入れるつもりはない。他人を蹴落とすのでは無く、自分を高め。困っている者がいれば、迷わず救ってやれる。そんな者ばかりの世界を俺は作りたい。かつての父さんや母さんが作った王国の様に」
「理想論に過ぎ無い……とほざく者もいるだろうが、お主なら実現できるじゃろう。
そう思わせてくれる何かがある。
親の背を見て子は育つと言うが、あまりにも似過ぎているな……」
校長は、何処か遠くを見る様な目でこちらを見ている。
「…もう良いか?」
「あぁ、引き止めてすまんかったのぅ」
俺は帝王の間に3人を連れて転移した。





