敗北者は、帝王として決断を下す
「1つ目についてですが、きっかけは聖精神王国の使者が接触してきた事です。その使者は父…当主にこんな事を言ってきました。
『この国に、叛旗を翻すつもりはありませんか?』
勿論、父は国に忠誠を誓った身。直ぐにその使者を追い返しました。ですが、その使者は、何度でも来て当主を説得しようとしていました。
私も母も妹も、無駄な事に時間を割かれてしまうなぁ。ぐらいにしか思っていませんでした。が、私たちは父の目が段々と変わっていた事に気付くべきでした。
ですが、気付いた時にはもう手遅れでした……
ある日、父は急に
『あの国王はダメだ!私が王になり、この国を統治するのだ!!』
と私たちに言ってきました。その時の父の目は明らかに正気を失っていました。きっと、何らかのスキルで洗脳されていました…
そして、私兵を動かし明確な敵対行為を取ったとして一家もろとも地下牢に幽閉されてしまいました…私だけは英雄学校に通っているお陰で見逃してもらえましたが…
助けてほしいと言うのは、幽閉されている家族の事です。何とか国王様を説得して家族を解放して欲しいのです。父の洗脳が解けているのはもう確認済みです。『何故あんな事をしたのか分からない。その使者の記憶も無い』と、言っていました…
2つ目は、この辺りで頼れる国が帝国とその属国しかなかったからです。しっかり国家としての体制をとれているのは周辺諸国にはもう帝国と聖精神王国ぐらいしかありません。
3つ目のメリットについては…私が当主を説得し、我が領地領民共々、貴国の傘下に入る事を約束します。
デメリットは、王国に良くない感情を抱かれると思います……」
……ふーん。情報の整理は済んだ。
よし、決めた。
「お前の家族を救うメリットが一切見当たらない為、この件は受けない事にする」
「…………そ、んな……」
「考えてもみろ。俺は大陸を征服する事を既に宣言しているし、その為の行動も起こしている。当然、王国もその中に入っている。
わざわざ、お前の領地だけ貰ったところで…どうせ国ごと奪うんだから、早いか遅いかの違いしかないだろ?
と、言うわけで交渉は決裂。
じゃあな、俺はイブとデートをしている最中なんだ」
そう言って、イブの手を握りその場から立ち去ろうとすると
「ま、待ってくださいませ!!」
「…ハァ、物のわからねぇ奴だな。
交渉は終わりだとさっき言った筈だが?」
若干の苛立ちも含めて言葉を放つ。
これで懲りてくれねぇかなぁ。
「も、もっとメリットがあれば受けて頂けるんですか?」
「そりゃそうだろ。だが、お前が出せるメリットなんて…
無いと言い切る前に
「わ、私を差し出しますわ!!!」
…………ハァ?これは……モテ期到来か。とか、馬鹿な事言って無いでこいつが何を言わんとしているのか考えろ。メリットとして自分を差し出す?…そう言う意味だとしたらとんだ自惚れだな…
「たしかに私はイブよりも内政の手腕的にも劣っていますし、ケシャナには武力で負けています」
え?何で俺がケシャナとそう言う関係なの知ってるんだ?誰から聞いたんだ?…後で聞くか。
「ですが、私には2人を上回っている部分が1つだけあります!」
「…何だ?」
「私は…魔道具、特に生活を豊かにするような魔道具を作るのが得意です。勿論、戦闘用のものもある程度は作れます。メリットとしては十分だと思いますわ」
あぁ…それは、確かに必要だな。イブに確認を取るが事実らしい。…何で英雄学校来たんだ?
「…それならいいだろう。お前の家族は俺が、帝国が救ってやろう」
「あ、ありがとうございます!!
ありがとうございます!!!」
よし、ならば急いで元の世界に帰ろう。と、思った矢先。
(学生諸君!帰還の時間じゃぞ?5分後にパピルス村の広場に集合じゃ。時間厳守じゃぞ?)
…念話か、流石は賢者だな。ってかタイミング良すぎね?監視されてるのか?
そんな事を思いながら俺は2人の女子を連れて広場に転移した。





