敗北者は、帝王としての責務を全うする
「…その、家族を救うって、元の世界だよな?」
「はい!どうかよろしくお願いしますわ!」
「…いや、先ずは状況の説明とか、そうなった経緯とかを話して、それから考えるべきだろ?
いきなりやってきて、「助けて」「よろしく」って…
虫が良過ぎるだろ」
「えっ……た、助けて頂けないんですか?」
目を潤ませ、上目遣いで俺を見る。
「むしろ、今のお願いだけでいけると思ったのか?」
「ちょ、ちょっと旦那様!そんな言い方…「イブ。今の俺は帝王としてここに立っている。少し、黙っていてくれ」
そう言うと、イブは言いたい事は多々あっただろうに口を真一文字に結び、グッと堪えてくれた。
「いいか、カミラ。お前にとっては唯の同級生に対するお願いかもしれない。だがな、俺にとってこれは帝王としての初めての仕事だ。それが、『同じ学校に通ってるから』なんて理由でメリットもデメリットも分からずに面倒事を背負い込んで、結局、『メリットはありませんでしたぁ』って言って帝王が務まると思うか?それに、『あそこの帝王、戦闘では強いけど、政治ではチョロいらしいよ?』何て噂が流れて、俺個人だけでなく帝国も舐めてかかられたら、どう責任を取る?何より、そんな奴が国のトップで国民が安心して生活出来ると思うか?」
俺は、早口で捲したてる。
…少し後悔してから、冷静になろうと深呼吸をする。
「あ、あの……わ、私そんなつもりは……ご、ごめ、な……ヒッ…ご、ごめんなさい…」
クッ…泣かせてしまったという罪悪感がドッと胸に押し寄せてくる…が、俺は帝王だ。外交でいちいち泣き落としなんかに引っかかってたら、帝王失格だ。
「泣いたら、話し合いが有利に進むとでも思ったか?生憎そんな事に心を揺さぶられる程、俺の覚悟は甘くない。
…いいか?お前が俺に説明しなければならない事は3つだ。
1つ目は、家を救わなければならない程の窮地に陥った理由と、現状。
2つ目は、何故他の国では無く帝国に救いを求めたのか。
3つ目は、お前の家を救った事により帝国にどんなメリットがあるか。そして、予想され得るどんなデメリットがあるか。
1つ目については5W1Hに基づき分かりやすく説明しろ」
しばらく、カミラは過呼吸で喋れる様子では無かったが、泣いている場合では無いと悟ったのだろう。目尻に沢山の涙を溜めながらも、決意を宿した瞳でこちらを見つめる。
「…はい、カルワさんの言う事はごもっともです。しっかりと説明させて頂きますわ。
先ず、1つ目ですが……」
そうして、カミラは先程迄とは打って変わって、冷静且つ丁寧に説明を始めた。





