敗北者は、幼馴染とデートする 前編
〈翌日〉
俺は今日、イブとデートをする。[昨日は、ケシャナとデートしただろ!こんの二股野郎が!ブチ殺すぞ⁉︎]という意見も、もちろんあるだろうが、少し待って欲しい。
…え?無い?……まぁ、あるとしよう。だが、このデートは俺が計画したんじゃ無い。昨日、イブとケシャナは、話し合ったらしく結婚できる歳(17歳)になるまでは、休戦して協力体制をとるらしい。
それで、ケシャナはデートをしたけどイブはしてないのは不公平だと言うことで、今日は、イブとデートをする事になった。
と言うのを起きた瞬間に言われ、急いで支度をして待ち合わせ場所に向かった。3分程すると
「お待たせー!!」
イブがこちらに駆け寄ってきた。その姿を見て、ケシャナとは違った意味で衝撃を受けた。天から雷が落ちてきたかと思った程だ。
「…美の女神か……?…これは……現実…?」
化粧やファッションについてそんなに詳しい筈も無く、何がどうされているか何て分かる訳も無いけど、とにかく昨日とは比較にもならない程、イブは美しかった。いや、美しいという言葉さえこの姿の前には意味を成さないだろう。そんじょそこらの美術品なんてこの美しさの前にはカスみたいなものだ…
「旦那…様?どうかした?」
!?近い近い近い近い!!
「だ、大丈夫だ。ちょっとイブの美しさに目がやられただけで全く問題ない」
「ッ!?…そ、そう言う事をサラッと言えちゃうのが旦那様の良い所でもあり、悪い所でもあるわね」
とその時、正にチンピラと言った風貌の男達がこちらに向かって来た。
「グヘヘへ、おいおい嬢ちゃん。えれぇ別嬪さんじゃねぇの。そんなガキと遊んでねぇで、俺たちと良い事しようぜ?グヘヘへ」
「ウケケケ、兄貴に誘われるなんて[幸運]滅多にないんだぜ?兄貴は、そりゃあもう凄くてなぁ。始めは渋ってた女も5分も経たずに嬌声をあげはじめる。さながら、夜の[帝王]だ!ウケケケ」
「「「「そーだそーだ!!!」」」」
「旦那様、今日は何処に行くの?」
「うーん、イブが行きたい所を優先したいから…イブは、何処に行きたい?考えておいてくれ」
「テメェら…何無視してくれてんだぁ!?アアン!?」
「…チッ、五月蝿えな。おい、お前ら。最後通告だ。
俺のイブをその腐った目で見るな、潰すぞ」
「俺のだなんてそんな…」
イブは、体をくねらせて喜んでいる。
ちょっとキザかとも思ったが杞憂だったようだ。
舐められていると気付いたチンピラ供は、各々武器を持ち攻撃してくる。
「…こ、のガキがぁああ!!調子ぶっこいてんじやねぇぞ!!骨も残らねぇと思え!!」
夜の帝王(笑)がダガーで切りかかってきた。はい、正当防衛成立。お疲れ様。まぁ、こんなの待たなくてもさっさと殺って、見てた奴ら全員口止めしても良かったんだけど、そっちの方が面倒くさいからなぁ。
「帝王の重圧 発動」
周りに被害が出ると、後々面倒な事になるから、チンピラ供だけに範囲を絞って重圧を与える。本来は精神的なものでしか無いが、俺が使うと、物理的な[重さ]も発生する。
「グッ!な、なんだこれは…クソ、こ、こんなものでぇぇええ!!えぇぇ…」
プチッ
と小気味よい音を出して、チンピラ供は潰れて死んだ。
魔法で死体や血を綺麗にした後、イブに向き直る。
「夜の帝王が朝っぱらから出歩いてんじゃねぇよ。清潔
さてと、何処に行きたいか決まった?」
「うん!私、このドリンクが飲みたい!」
イブはこの村のパンフレットの、あるページを指していた。ええっと、なになに?
[ドキドキ!!カップルドリンク(ハート)]?…あぁ、よく本に出てくるストローがハートになってて、2人で飲むやつね。……マジで?
「え、これを飲むの?」
「うん!……ケシャナとは一緒の肉を齧ったのに私と一緒には飲めないの?」
うっ、そんなに目を潤ませられたら、嫌だなんて言えない…
しかも、ケシャナへの対抗心が薄っすらと感じられる…昨日、休戦したんだよね?
「もちろん飲めるよ!」
俺って…尻に敷かれやすいのかなぁ。
しょんぼりした俺とは対照的に、イブは上機嫌だ。
…眼福だなぁ。
…まぁ、そんなに悲観することでも無い、か。周りからバカップルと思われるだけだしな。
俺は、気を取り直してイブと一緒にカップルドリンクのある店に向かって歩いた。





