敗北者は、修羅場(恋愛)に終止符を打つ
「旦那様、結局どっちを選ぶの?」
「カルワ君、結局どっちを選ぶんですか?」
「…俺は……俺はどちらも選ぶ!!!」
「…本気、なんですか?」
「…あぁ。これはきっと、イブも、ケシャナも1番求めていない答えだろう。
でも、これが俺の正直な気持ちなんだ。…優柔不断だと罵ってくれたって構わない。それだけの事を言っていると自覚もしているし、俺が最低のクズ野郎だとも理解している。だけど…これだけは言わせて欲しい。
俺は、イブもケシャナもどっちも…ぁ……あ
愛してる!」
…どれほどの時間が経ったのだろう。恐る恐る顔を上げると、2人は……笑っていた。それも、満面の笑みで。
「…フフ。
まぁ、旦那様ならそう言うと思ったわ」
「ですねぇ」
怒って…ないのか?こんな…人生の大事な事すら決められない俺を…?許してくれるのか?
「何、不思議そうな顔してるんですか?そんなの、2人とも選ばれた方が良いに決まってるじゃないですか」
「そりゃあ、旦那様を独り占め出来ないのは…途っっっ轍もなく嫌だけど…
旦那様程、素晴らしい男を独占できるとも思えないし…
それくらいの分別はつけるわ」
「それに、カルワ君は帝王ですし…ほら、あのぉ……お、お世継ぎとかの為に沢山の人と結婚する事も不自然では無いですし…出来ればもう増やさないでほしいですけど…」
世継ぎ…話しておくべきだろうな。
子供の件だけじゃなくて、他の事も。
「…ああ、世継ぎの件なんだが
…俺には子供が出来ないんだ」
「…えっ、カルワ君って…種無モガッ!?「馬鹿!そんなにハッキリ言う馬鹿が何処にいるのよ!?だ、大丈夫よ、旦那様!心配しなくても私良いお医者さん知ってるから!」
「いや、これは決められている事なんだ。医者でもこれは変えられない。これも、全て俺の我慢が足りなかったのが問題だ…
あと、そろそろケシャナの口から手を離してやってくれ。落ちそうだ」
そして俺は、全一様に言われた事を包み隠さず全て話した。
「そんなの…そんなの、旦那様のせいじゃないじゃないの!たった2日でも延ばしたのには変わらないじゃない!」
「ゲホッゲホッ…あぁ、死ぬかと思った……
ですね。…全一さんの言っている事には、矛盾が生じていると思います。それに…なんと言うか、自分の思い通りにカルワ君や私たちを動かしたいと言ったような意図を感じます」
…本当にそうなのか?あの方なら、そんな事をわざわざ言いに来る必要は無い筈だ…
…いや待てよ?あれが全て、幻だとしたら?実際、全一様には大した力は無く、幻を見せる事に特化したスキル群を持っているだけ…初めに会った時に感じた悪寒も、そう思わさせられただけ…
筋は通っているし、全ての頂点に君臨している何て言うのよりは遥かに現実的だ。じゃあ…子供も出来るという事か?
俺は今考えた事を伝えると、納得したようだ。瞳には希望の光がギラギラしている。…ギラギラ?
「話は変わるけど、私が旦那様の正妻よね?」
…野望の光だった。
「…何馬鹿な事言ってるんですか?
私に決まってるでしょう?」
あぁ、バチバチしてるなぁ。
さっきまでの仲良しはどこへ行ったのやら……
「…先に子供が生まれた方でいいんじゃない?」
「「賛成!!」」
…問題を先延ばしにしただけの気がするが…
気にしたら負けだ!
ゴーーーンゴーーーン
あ、夜ご飯の時間だ。
「じゃあ、今日は解散で…」
「えっ!?旦那様は[愛してる]と言った女性と共にディナーを食べないと仰るのですか!?」
「信じられません!あの熱い告白は嘘だったのですか…?」
うっ!視線が痛い…
…まあ、お金はあるか……
いや、でもここで負けるとこれから………
あぁ、でも確かに告白したのに、ほっぽり出すって言うのも……
「…どこに行きたい?」
「「やった!」」
早速尻に敷かれてる…前途多難だな……
ちなみに、夜ご飯は牛系モンスターの焼肉でした。イブもケシャナも喜んでくれました。…ケシャナ、昼も肉だったよね……?はい、気にしたら負けです。焼肉は、大変美味しゅうございました。





