敗北者は、再び全一と邂逅する
「まあ、とりあえず一旦ストップね?」
ソレは、言霊に対価を払うことも、術式を使って世界の理を歪める事も無く、世界の全てを停止させた。詠唱ですらない只の言葉であったとしても、世界はソレには絶対に逆らえない。
「はいはい、説明乙。で、煉獄王…テメェ何門壊してくれちゃってんの?お前クラスが現世にずっと存在して良いわけねぇだろうがカス」
………
「おい、なんか言えや…って。
あぁ、そう言えば止めてたな、ウッカリウッカリ。
とりまこの空間だけ解除」
そう言った瞬間、身体中から嫌な汗がドバッと吹き出した。ヤバイ…なんか全一様怒ってる…のか?いやどうなんだろう…女性陣はこの状況についていけていない様で「あの人…誰?」みたいな感じだ。
〈ア、アァァァアリエナイ…コ、コンナ存在ガガガ「落ち着け」
パアァアン!
煉獄王は一度大きくされてから、俺の時と同じように体が吹き飛び頭だけの存在になった。女性陣もやられた本人もポカーンとしている。やがて、何が行われたか分かったのか、3人揃って身震いした。女性陣は、恐怖からの震えだったが、煉獄王は違った様で…
〈あ、貴方様が!かの魔神様であらせますか!?〉
歓喜による震えらしかった。体吹っ飛ばされてあの態度って…メンタルどうなってんだ?
「…いや?もっと上だけど?」
…あれ?前に神と間違った時には若干不機嫌になってたのに、今回はむしろ…上機嫌?若干口元が緩んでいる様な…
〈魔神様の…う、上…!私めには想像もつかない程のお方…そんなお方に目をかけていただいた…
あぁ、運命よ!!今回だけは感謝しよう!!!
貴様のお陰で私はこのお方に出逢えた!!!〉
「…だから、落ち着けって」
〈貴方様にお願いがあり「却下」…分かりました。確かに私めには出過ぎた事でした。綺麗さっぱり諦めます…〉
…未来か心を読んだのか?煉獄王めちゃくちゃションボリしてんじゃん…可哀想。…まあ、どうでもいいけど。
「いや、貴様に問題はない、俺が弟子をとらない主義なだけだ。
…だが!ここ重要だからよく聞いておけよ?
お前がこれから一切の無駄をなくし、俺と言う完全を目指し俺の側に立ちたいと思い、努力し。それがもう一度俺の目につき、この俺が出す試練を乗り越えれたならば!
お前は、俺の 眷属 兼 家族 だ」
〈……………………え?
わ、私めが、貴方様の…家族?〉
「不服か?」
〈滅相もございません!!!不肖、煉獄王 ガリウス!命を賭してでも貴方様の御許へ!!!必ず…!必ず辿り着いて見せます!〉
「ウム、良い心意気だ。煉獄は魔改造しておいた。
これまで以上に修練に励め」
〈ハッ!では、私めはこれで失礼します…「あっ、待った」はい!何なりと御命令下さい!!〉
全一様は、煉獄王の耳元で何かを囁き、煉獄王を何処かに送った。
「じゃあ、とりあえず自己紹介でも。
俺は全一、全ての頂点に君臨する存在だ。
以降もチョロチョロ会うかもしれんから宜しく」
2人して、「コイツ…何言ってんだ?」みたいな顔を…って、止めろ!そんな事を思ったら全一様に…
「いや?俺、女性博愛主義者だから、女性には手を出さないよ?自己紹介も終えた所で、カルワ以外止まれ。
……さぁ、カルワァ?お話しようか?」
ヒッ!こ、殺される!!?
「なぁ、俺前にさぁ、告白すんの延せって言ったよなぁ?」
「はい!言われました!」
煉獄王と同じ態度か…屈じょ「おい、別の事考えんな」
「すいません!もう2度としません!!」
「おぅ。んで、その時に延ばせば延ばす程告白の成功率上げるって言ったよなぁ?でも、正味あの時点でもう既に100%だった訳よ。でもお前は俺との約束を破った。じゃあ、どうするか。…逆に聞こうか、俺はどうすると思う?」
「えっ…と…俺を殺す?」
「ブッブー!残念でした!
正解は、[お前の人生の不幸を増やす]でしたー」
「…それは、帝国を発展させた時に増える幸せは無しという事ですか?」
「いや。それで相殺する事前提に減らすから。ちょっとでも手抜いたら…一瞬で終わるぞ?あ、そうそう。帝国の発展には咲宵が役に立つ…ってか必要不可欠だから。さっさと、引き込んどけよ?
…それと、確定している不幸として、[お前には子供ができない]」
「…それは……」
「あと[お前の帝国が滅ぶ]
まぁ、こっちは対策してたら何とかなるけどな」
「つまり、滅ぶ程の何かが起きると?」
「そう言う事だな、ま、頑張れ?
お前の堪え性のなさが引き起こした事だからな」
「くっ…ぐうの音も出ない」
「あと、この合宿が終わる前に、他の女子も仲間にしておけ。で、全員仲間にできたら、海を渡って他大陸を視察してこい」
「えっと…なぜ「理由を聞く必要は無い。黙って従え」…はい」
「じゃあ、またな」
気がつくと、街の中だった。イブとケシャナの停止も解けたようで、現状を把握しようと、しきりに首を動かし、周りの状況を確認する。
ふと、イブの体の傷が無くなっている事に気付いた。ケシャナもさっきまではあんなにフラフラだったのに、いつのまにかシャッキリしている。鑑定してみると、2人とも完全回復していた。全一様がして下さったのだろう。
考えても仕方がないと思ったのか、キョロキョロするのをやめて2人ともこちらに向かってきた。
「旦那様、結局どっちを選ぶの?」
「カルワ君、結局どっちを選ぶんですか?」
…本当の修羅場はこれからだったようだ。





