敗北者は、努力者とデートをする 終編
本屋の中に入るとそこには桃源郷が広がっていた。奥が見えない程広く、なんと10階建ての吹き抜けであった。そして、全ての棚に本がギッシリと詰まっており、見たところカバーがかかっている本もない。ただの村にこんなにデカイ本屋が?と一瞬疑問に思ったが、無数の本を見たことによりそんな些事はどうでも良くなった。
目に付いた本をパラパラとめくってみる。メニューと同じで俺たちの世界と同じ言語だ。…異世界なのに?…まぁ、どうでも良いか。
店内にはそこそこの数の客がいたが本をめくる音と少しの布擦れの音が聞こえるだけだった。ケシャナもあんなにはしゃいでいたが、今では静かに、そして真剣な表情で一冊一冊本を吟味してる。
この本屋は、階層ごとに売っている本の種類が分けられていて、
一階は、子供向けの本と文房具類。
二階は、フィクション系。
三階は、ファッション系。
四階は、健康や肉体系。
五階は、経済系。
六階は、モンスター系。
七階は、ノンフィクション系。
八階は、学問系。
九階は、薬、毒系。
十階は…まぁ、ここでは言及しないでおこう。…強いて言うなら…ベッドの下に隠す系…かな。あ、俺は持ってないぞ!って誰に言い訳してんだか。
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俺が二階でラノベを買い漁っていると、
「キャアアァァァ!」
ドタドタドタドタァ…
ケシャナの悲鳴と大量の本が落ちる音が聞こえた。声が聞こえたのは一階だったので吹き抜けの部分から急いで飛び降りる。
そこには、数え切れないほどの本に埋もれてわずかに腕だけが見えているケシャナの姿が!!
そう思い慌てて本を空間魔術でどかすが、現れたのは黒ロングのケシャナではない女子だった。あれ?なんか見覚えが…と思っていると壁を隔てた向こう側から《助けて〜》と聞こえて来た。
急いで駆け寄ると、先ほどの女子を遥かに超える量の本に埋もれたケシャナがいた。腕だけが見えている状態だった。先程よりも急いで本をどかす。…そういえばケシャナの幸運って0だったような…
ケシャナは立ち上がって、
「ありがとうございます!手を伸ばして本を取ろうとしたらバランスを崩してしまい…後ろの棚に当たったと思ったら本が落ちてきて…アハハ」
それからケシャナは、少し暗い表情になり俯きながら過去を話し出した…
「…私、昔からドジなんですよ…すぐ転ぶし物や人にはよく当たるし。でも、カルワ君と居たらそういう事起きなくって…嬉しくて…
あ、いや別にそういう事が起きないからカルワ君と居たんじゃなくて!…そのなんていうか、一緒にいると楽しくて食いしん坊な私もすんなり受け入れてくれてずっと一緒に居たいなぁと思うようになって…今日本屋さんに誘ったのもカルワ君と一緒に居たかったからで…」
そして、ケシャナは何かを決したかの様な顔を見せて
「カルワ君、私、男の人にこんな気持ち持った事無くて、本で読んだ事しか無いから確証も無いけど…これだけははっきりと言える!私は…貴方の事が!「まぁ待ちいさ、とりあえずここで一旦止めにしよかぁ」
そこに割って入ってきたのはさっき本に埋まってた黒髪の…黒目………あ、思い出した!コイツは俺をイジメていた奴の1人、確か名前は、咲宵……





