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敗北者は、努力者とデートをする 後編


いやぁ美味かった。元の世界に持って帰ってこの肉…養殖できないかな?と考えているとさっきのうるさい店員が来て、


「この度は試すような真似をしてすいませんでした。あの大声も、あの肉もどちらもあなた方の信頼を試す為の行動だったのです」


と謝罪してきた。まだ肉の余韻に浸ってポワワーンとしているケシャナの目の前で手を叩き、現実に戻す。


「…説明してもらおうか」


「まず大声を出した件について…

アレは、愛の確認です」


「…ハァ?」


「まぁ、最後までお聞きください。普通のカップルなら片方が危険を察したとしても自分の身を守るのです、好きな異性よりも…

その事をお互いが批難しあい喧嘩になって別れる事がほとんど…

ですが、貴方は違った!自らの破滅を顧みず、貴方は彼女を救った!!

そして極め付けは、あの肉です!メニューに書いてあった伝承は、全て嘘です。あの肉の真に特殊な部分は男女の相性が良ければ良いほど肉の味が高まるところです!!」


もう既にこの時点でケシャナは耳まで真っ赤っ赤だが追い打ちをかけるように、


「…じゃあ、俺とケシャナは…?」


「相性抜群と言う事です!いやぁ、いつ以来でしょうか、こんなに美味くなったのは…千…万年程前でしたかね?」


そろそろコイツを黙らせないと、ケシャナがヤバイな…うん?


「お前…何故味がわかった?それに、万年だと?一体…何者だ?」


その店員はわざとらしく口を抑えて、


「おっと、失言。…まぁ、私の正体などどうでも良いではありませんか。それよりも、おめでとうございます。正に天に選ばれたベストカップルですね!」


「…あぁ、もうそこらへんにしてくれないか?ケシャナが気絶してしまいそうだ」


「これは、申し訳ない!お詫びにあの肉が取れるモンスターのつがいをあなた方の世界に送らせていただきます」


…コイツ、本当に何者なんだ?…鑑定。


【上位者への鑑定は実行出来ません】


「では、これにてお暇させていただきます」


その言葉と共に、その店員が、見えている景色全てが、ボヤけて霧のように消えていった…


再び目を開けると、10階建てのとても大きい本屋の前だった。…夢?いや、あの肉の味はしっかり覚えている。…上位者…神?そういえば暗黒神の見えざる布切れに神力耐性と言うのがあったな。帰ってからでいいと思っていたが、もう装備しておくか。


「うーん、あれ?…本屋さん…?……本屋さん!!カルワ君!早く行こう!!」


一足遅く、ケシャナも目を覚ました。が、本屋に来れた嬉しさから一気にテンションが上がり、俺の手を引いて急いで本屋に入っていった。


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