敗北者は、裏切られる
あれから暫くした後、公爵領にいる10歳未満の子ども達およそ30人程が公爵様のお屋敷の大広間に集められた。
平民の子たちの中には、(公爵様のお屋敷なんて…)と緊張し過ぎて漏らしてしまった子もいた。それも、結構な数...
そして、ガズール様達が現れた
「みんな、よく集まってくれた!何故、我々がここに来たのか知らない者もいると思うので、説明しよう。…我々は、次代を担う英雄を探している」
「うむ。もう少し簡単に言うと、才能がある子供を探しているという事だ」
「それで、私が鑑定していって才能のある子供がいたら、この国の王都に連れて行って私たちが直々に鍛えます!」
まず、ガズール様が今回の訪問の要件をおっしゃり、それをサピール様と、サラーマ様が詳しく説明して下さった。
「はい、じゃあ順番に並んでね!いや〜、みんなはラッキーだよ。何たってこの私に鑑定してもらえるんだからね‼︎」
そして、僕達は一列に並んだ。3つ隣がイブちゃんだった。手を振ったら、振り返してくれた。
「君は〜農家の息子? 植物成長促進 って言うスキルがあるから、とっても向いてるよ!君は〜大工の息子? 怪力 スキル持ちだから傭兵とかも向いてるかも
君は〜」
そして、イブちゃんの番。
「君は〜公爵様の娘さん?
な、何このスキルは?
勝利と幸運の女神の恩寵!?
しかも、ステータスも高い!
凄いよ、君!私たちと一緒に王都に行こうね!」
「えっ...でも、私は...」
イブちゃんはチラッとこっちを見た。
なにかを決心したような顔になり、はっきりとした声で
「嫌です!」
と言った。そのあと、少し場は騒然としたが、公爵様が泣きながらイブちゃんを説得して、行く事になった。それでも、イブちゃんは最後まで嫌がっていた。
そして、遂に僕の番が来た。
「君は〜司書の息子?...アレ?リラックスしてね〜」
「は、はい!すいません!」
(ムムム、何なのよこの子全然鑑定出来ないじゃないの!くっ、屈辱だわ。こうなったら、最大出力!)
パキンッ
と音がして、現れたステータスは...
名称 カルワ・フォン・エリザード
年齢 6
種族 人族 王種
種族レベル 1
職業 司書見習い
職業レベル 5
【称号】
世界に定められし敗北者
敗者の?
【ステータス】
HP:2467
MP:1685
物理攻撃力:249
物理防御力:187
魔素攻撃力:135
魔素防御力:146
素早さ:348
幸運:38
【スキル】
『パッシブ』
速読術:レベル24
上流動作:レベル14
『アクティブ』
剣術:レベル19
『ユニーク』
『固有』
絶対的な敗北者:レベル5
??の加護?(隠蔽中)
(家名持ち?たかが、司書の息子で?
...王種!?一体何処の国の?
…称号持ち?わずか6歳にして?
...この子もステータス高いわね。
けれど、王種だしあのイブって子ほど驚く事ではないわ。
上流動作?平民なのに?
...な、何かしらこの固有スキルは。まあ、でも字面からして弱そうね。放置で良いわ。
…いえ、でもここでこの子を貶めたら、あのイブって子もこうはなりたくないと、素直についてくるかしら?...そうねそうしましょう)
「 絶対的な敗北者 だって?アハハウケるわ〜 …みんなもそう思うわよね?」
と、サラーマは子供たちに同意を求める。相手は、英雄。只の子供たちが逆らえる筈もなく。
「うん、そうだよね」
「ダッサ!もう、私アイツとしゃべらない!」
「あ、それ良い!僕も」
「俺も」
「「私も」」
となるのは当然の流れだった。そして、それは公爵の娘とて例外ではなく...
「イブちゃん...」
僕は、イブちゃんに助けてと言う思いを込めながら見つめるも、少しした後フイッと目線を逸らされた。僕は、イブちゃんに嫌われたと言うショックと、英雄様が酷い人だと言う二重のショックで意識が飛び、その後の記憶が一切無い。
気付いたら、僕は公爵様の屋敷の修練場で英雄達に囲まれていた。
加護 祝福 恩寵 寵愛 とあり、寵愛が一番強いです





