敗北者は、謎の娘に出会う
村から2.30分ほど歩くと、巨大な建物が見えてきた。が、それからしばらく歩いても全貌を把握出来ず。突如として迷宮がその姿を見せた。それは、世界の口の様で、底が見えないほど深く暗い穴だった。
「驚いたべか?あの建物みでぇなのは唯の幻影だぁ。さ、入るべ入るべ」
と言われ穴に突き落とされた。いや、これ死んだなと思ったその時には足が地面を捉えていた。この感じは…空間魔術か?
一瞬後に音もなく現れたカダラを見て確信した。その顔には勝ち誇ったかのような笑みを浮かべていた。
「な?ビックリしたべ?ビックリしたべ?」
…こんな奴だったか?鬱陶しい事この上ないが…まあ、この状態でいられるのも嫌だから適当に返事しておくか。
「…あぁ、すごいな」
それでもやっぱりウザかったが、モンスターと遭遇した時にはしっかり気を引き締めて挑んでいた。
この迷宮は階層ごとに分かれていて、1階層で1匹のモンスターと戦うのがルールらしい。
30階層まで進むとモンスターと戦っている人影が見えた。目を凝らすと、学校で俺をいじめていた奴の1人。緑髪の黄色の目をした気の強そうな女子だ。…何故この世界に?俺はこの合宿は、それぞれが別の世界に行くものだと考えていたんだが…
その女子(確かケシャナ。だったか?)は、少し消耗している様子だったが、危なげなく勝利していた。そしてこちら…厳密には俺に気付いた瞬間に、俺の目の前に転移して斬りかかってきた。
俺はすんでのところで身を躱し、今の低いMPでも打てる魔法を牽制として出す。無駄の無い身のこなしで避けられる。口を見るとパクパクと動いていた。
耳を澄ましてみると、
「父と…母の仇…必ずここで……殺す!」
と言っていた。……仇?俺が殺した相手なんてガズール供の筈だが…まさかサラーマとどっちかがデキてたのか?
復讐の連鎖か…これもまた、運命なのかな?と、何かの小説で読んだ様なセリフを思い出しながら、奴を倒す算段を練る。





