敗北者は、自分の力を知る
眼が覚めると周りには夥しい数の黒い影がひしめいていた。だが、俺を中心に2メートル程の円の中には何もおらず。そこだけ白く切り取られた様だった。
ここについての考察をしていると、1つの人影が近づいて来た。俺は警戒し剣を抜くも、その影はなおも穏やかな足取りで近づいてくる。そして、これまた穏やかな口調で話しかけて来た。
「お目覚めですかな、我らが王よ」
…王?…そういえば気を失う前に敗者の王が発動したとか言ってたような…それと何か関係があるのか?
「…2.3質問したい。いいか?」
「なんなりと」
「此処は何処だ?お前達は何だ?
そして、王とはどういう意味だ?」
焦って早口になってしまった。ふと気づくと影の輪郭がくっきりして来ていた。影は初老の男で、腰に剣を差していた。
影は少し考えてから、口を開いた。
「此処は、 敗者の間 この世界で負けた事があるモノが集まる場所です。
私達は、敗者の魂。残留思念の様なモノです。
王とは、言葉通りで敗者を纏め、支配する者と言う意味です」
「そうか、ここにいるやつらは全員が…敗者か。まぁ、それでも俺は誰にも勝てないんだろうけどなぁ」
と言うと、影は何度か瞬きをした後眉間に皺を寄せ理解出来ない物を見るような目で見てきた。
「えっ…と、斬新な冗談ですね。すいません、古い人間ですので最新のギャグセンスは直ぐには分かりませんでした」
「?何が冗談なんだ?俺は今までの人生で一度も勝った事がないぞ?」
「…必敗をONにしているからでは?」
「必敗?いやいや、 絶対的な敗北者 の所為だろう?絶対に負ける者って言う意味の」
「…敗北を糧に絶対的な力を持つ者では?」
「「…え?」」
そんなまさか、ないないと思いながら自分を鑑定し、更に 絶対的な敗北者 を鑑定する。
絶対的な敗北者
敗北する事を糧に絶対的な力を得る者
複合スキル
必敗 状態ON
勝負に必ず負けるようになる。
勝利に繋がる行動も禁止される。
ON OFFの切り替えが出来る。
敗北者の特権
敗北した時、相手のステータスの1×スキルレベル%を上乗せし、相手のスキル1つ毎につき1×スキルレベル%の確率で獲得する。
同じ相手に対して何度でも使用可能。
敗者の王
敗北させた相手を服従出来る。服従した者は、王の命令には絶対に逆らえない。また、服従した者を自分と纏める事によりその相手の記憶やスキルにならない技術も獲得出来る。
本当だ…これ、必敗OFFにしたら誰にも負けないだろ…
これから無双です