カルワは、咲宵とデートに行く 後編
「お、お待たせ致しました......」
店員が持ってきたのは純白のウエディングドレスと漆黒のスーツだった。
仮装とは思えないほどに洗練されたデザインは、大胆さと繊細さを兼ね備えている。
また、対となる色合いがお互いをより一層輝かせる。
「こ、更衣室はこちらです......」
着替えが終わり、出てきた二人は正に新郎と新婦。
式場の幻影が浮かんでくる程に、
2人の仮装はさまになっていた。
「ぁ、あかんて......めっちゃハズイって......
ぇ?これで外歩くん?」
「おお、素晴らしい......眼福眼福!
やはり貴方にお願いして正解だったようだ。感謝する」
顔を真っ赤にして縮こまっている咲宵とは対照的に、
カルワは堂々たる言動で店員に礼を述べる。
「い、いえいえいえいえそんな......滅相もございません!」
顔をブンブンと振り否定するも、
その顔には歓喜の感情が見て取れる。
代金を払い店から出ると同時、辺りの雰囲気が一変する。
楽しく談笑していた女性も、
企画の出来に満足そうにうなずいていた関係者も、
お菓子をねだっていた子供達も、
皆一様に黙り込み一点を見つめる。
その目線の全てが仮装したカルワと咲宵に集中している。
「くっ.....いっそのこと殺せ.....!」
「そんなに気にするか?
十分似合っているぞ?」
「似合ってるかどうかは関係ないねん!
見られるんが恥ずかしい言うとん!
......ってか、あ、あんまほめんといてや。そっちのがはずいやん......」
「いや、美しいものを美しいと言わないのは美しいものに失礼だ。
......だから俺は咲宵の事をほめ続けるよ」
(((((その格好で式場に突っ込んでいただけません?)))))
その光景を見ていた全員の心が一致した。
一方の咲宵は、
嬉しさと気恥ずかしさを誤魔化す為に声を張り上げる。
「フ、フン!もう慣れたわ!!
アホなこと言ってんとはよ店行くで!!」
「何の店?」
「パンケーキ!」
「ふーん......食べ物?」
「そうそう、フワフワでじゅわってしててめっちゃうまいで!
しかも今だけカボチャ味のんもあんねん!」
「まぁ行こうか」
「せやな!」
こうしてカルワ達はパンケーキ専門店に向かうことになった。