カルワは、咲宵とデートに行く 前編
「なぁなぁ!デートいかへん?」
「…突然どうしたんだ?」
数回瞬きした後、咲宵の目を見て聞き返す。
「忙しいん終わったやろ?あと婚約者ん中でデートしてへんのウチとアウちゃんだけやろ?
アウちゃんは今回譲ってくれるって言ってくれたから誘った限りであります!」
ビシッと綺麗な敬礼をする咲宵。
「分かった、準備をするから少し待っててくれ。待ち合わせ場所は…噴水でいいか?」
「了解であります!」
「…それ何?」
俺はさっきから咲宵がしている謎の言動について聞いてみる。
「いや…なんとなくやってるだけやから、ウチもようわからへんねん」
「…フッ、何だそれ?」
思わず笑みがこぼれた。
それにつられて咲宵も自然と笑顔になる。
こんな時間がずっと続けばいいのにな…
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着替えて噴水広場に行くと、咲宵が男どもに絡まれていた。
帝王の婚約者を知らない時点で帝都民ではない。
じゃあ、殺しても大丈夫だな。
「なぁなぁ嬢ちゃん可愛いねぇ、ゲヘへ」
「触らんといて、人待っとんねんウチは」
「ぅおい、てめえ!!黙って兄貴についてくりゃ良いんだよ!!!」
「あぁ、人ってどうせ不細工な彼氏だろ?そんな奴より俺と遊ぶ方が楽しいぜ?」
「ハッ!どっからそんな自信湧くねん。頭沸いとんちゃうか?」
「っのガキャァァアア!!言わせておけばいい気になりやがって!!!!
もう許さねぇ!!!今ここで服引きちぎってーー
「おい。俺の彼女に何をするつもりだ?」
「ああん!?どっからでてきたか知らねえが俺は今ひっじょーにムシャクシャしてんだよ…
っつーわけで死ね!!!!」
しかし男の拳はカルワの体を通過した。
「…あん?どうなって…?」
目の前で起こったあり得ない出来事に怒りも忘れて呆然とする男とその取り巻き。
カルワは感情のこもっていない虚ろな目で二人を見下す。
「…もういいか?下等生物」
そして男たちは跡形も無く消えた。
いや、その表現は的確ではない。
正確には体を魔素に分解され、精神は無限に死を経験する空間に幽閉され、
二度と転生できないように魂を食われた。
「うおい!」
ポカッという音が出そうな全く力のこもっていない手で殴られたカルワの目に光が戻る。
「ん…?またなってたか?」
「ばっちりなってたわ。まぁウチの事守る為やから別にええけどな」
カルワは聖精神を殺したことにより、ある種族に進化…いな、神化していた。
それは『半神』というもの。神力を自分で精製できないという点以外は神と同じ能力を持つ。
その副作用により、カルワの怒りが一定量を超えると精神構造が神のものとなり、3次元生物(人族)を宙を舞う埃と同等に感じるのだ。