カルワは、神殺しを…
【許さない…か。それは我のセリフだ。低次元生物如きが我が腕を切るだと?
極めて不愉快だ。この罪は貴様の命をもって償わせるとしよう】
切断面から光の線が触手の様に伸び、絡まり、合わさり、新しい腕を形作る。
握り、開きを繰り返し腕の動きを確かめる。そして、おもむろに光の剣を作り出し構える。
切りかかる前に聖精神はカルワに尋ねる。
【何故攻撃してこない?隙はあった筈だが?】
「万全のお前を殺してこそ、この復讐に意味が宿る。俺と同じ様に、お前の心を圧し折ってから殺す」
【成る程。そう言う下らない事に行動を制限されるのが人の最も愚かしいところだな】
互いの殺気がぶつかり至る所で小規模な爆発が起こる。
先に動いたのはカルワ。暗黒を纏った剣を高速で振り鎌鼬を放つ。
一見すると無造作に振るわれたように見えるが、その実一切の隙を与えず完璧な斬撃の檻を作り出す。
一方の聖精神は先刻自らの再生を見て。自分は本当は光の線でどんな姿にでもなれる。と悟った。
その結果、聖精神は身体中から光線を生やしカルワの放った斬撃を1つ残らず捌き切った。
シルエットこそまだ人と呼べるが実際の姿を見て嫌悪感を覚えない者は余程の変人か変神だろう。
それ程悍ましく、疎ましい姿へと変わったのは果たして戦略的な利用だけなのだろうか…
因みにこの間、僅か数秒。
瞬きの間に繰り広げられる幾千幾万の攻防は全くの互角と言っていいだろう。
片やなり立てほやほやのひよっこ神。力の使い方すらろくに分かっていない発展途上。
片や恋人と母親を殺された恨みを糧にする只の人。神殺しや暗黒で何とか闘いの場まで引き上げられたとはいえ、神の戦いに付いていけるかと問われれば無理だと言わざるを得ない。
完全な均衡を保っていた両者の戦いは突として終わりを迎える。
【どうした、息が上がっているぞ?我を許さないのでは無かったのか?】
「だ…まれぇ!!」
カルワは暗黒を纏っている。そう纏っているのだ。
当然中のカルワは疲れも溜まるし動きも悪くなる。
神と人。この種族の地力の差は小細工では埋まらなかった。
そして気付けば戦況はカルワの防戦一方。
避け切れずに当たった光線や防ぎ切れずに喰らった聖光など、被弾を数えると限が無い。
聖精神は勝勢と見たか、攻撃の手を休める。
【満身創痍、と言ったところか?我を許さず万全の状態で殺す者よ】
語尾に(笑)とでも付きそうに煽る聖精神。
この性格の悪さが生まれついての物だとしたら自らの生みの親に楯突くのも理解できる。
カルワの纏っていた鎧は所々にその名残を残すだけに留まり、露出した肌に傷のついていない箇所は無い。HPはもう2割を切りMPに至ってはとっくの昔に尽きている。聖精神も確かに傷は負っているがまだまだ余力を残している。
しかし、そんな絶体絶命のピンチの中、カルワは不敵に笑っていた。
【何を企んでいるのか知らんが全て無駄だ。我の勝ちだ】
その時、聖精神の体に幾つもの風穴が空いた。聖精神は状況が飲めこめず呆然としている。
傷が全くふさがらず、神力が漏れ出る。
先程とは立場が逆転し、死にかけの聖精神をほぼ無傷のカルワが見下す。
【これは…な、にが…?】
「俺の固有スキルを知らないのか?」
その言葉を聞いて聖精神の顔が一気に青ざめる。
【絶対的な…敗北者…】
「正解だ。お前が勝利を宣言してくれたお陰で発動した。これなら必敗も要らなかったな」
このままでは死ぬ、殺されると予知した聖精神。
プライドも何もかもを投げ捨て、必死の形相で命乞いをする。
【も、申し訳ございませんでした。わ、我が全てを貴方様に捧げます。
ですので、どうか命だけは......】
「虫が良すぎると思わないのか?俺は例え何と言われようとお前を許しは【あの2人を生き返らせます!それで1つ手打ちという事に…】
伝え切る前に聖精神の核は真っ二つに切り裂かれた。
「今更そんな言葉信じられるか。それに、今の俺なら自分で出来る」
そう言ってカルワは獲得した神力を捧げ、2人を生き返らせた。
穏やかな寝息をたてる2人を見てカルワはそっと瞼を閉じた。
こうしてカルワはハッピーエンドを迎えた。
めでたしめでたし!
で終わるほど世界は甘くない。
〖低次元存在による高次元存在の殺害を確認。世界が異常進化の条件を満たしました〗
ブクマがまだ増える…だと!?
明日はちょっと厳しいけど出来たら投稿します!!