カルワには、大切な人を守れない
少しグロ注意?
光が収まり、聖精神がいた場所には別のナニカが存在した。
シルエットは成人男性と言ったところだろうか。あくまでシルエットは。その実態は異形、よくよく見れば体を構成するものが形を持った光の線だと分かる。それに360度何処から見ても自分の正面にいる。そして、この認識さえも正しいとは限らない。
そして、神となった聖精神はゆっくりと瞼を開く。全身が神々しく光輝いている中でその瞳だけは黒。
圧倒的な存在感を放つ瞳に一度見つめられれば、魅入られてしまうのも無理は無い。
眼球さえ動かさずに周囲の状況を確認した聖精神は空気を震わせずとも意思を伝える。
〖これが…神…全てが違いすぎるな…慣れるのには暫くかかりそうだな〗
カルワの…いや、カルワだけではない。此処に居る全ての人は感じた。埋まるはずも無い生物としての格の違いを。冷や汗がとめどなく流れる。心臓が早鐘の様に打ち、呼吸も浅く短くなる。
〖…ん?ああ、まだ居たのか〗
自分たちに意識が向けられただけで感じる重圧。カルワが放つものとは比べ物にもならない。そもそも比べる事が烏滸がましいとさえ思う。思わされる。
だが聖精神からすれば重圧をかけているつもりなどさらさら無く只認識しただけである。逆を言うと聖精神にとってカルワ達は視界に写っていても認識する必要の無い存在だという事だ。
〖もう何処へなりとも行くが良い…と言いたいが、貴様は先程我に敵対的な行動をとったな。
女を消すと言ったが…やはり貴様自身を消すとしよう〗
突如として現れた光の砲台。その狙いは真っ直ぐカルワに向いており、どんどん光が溜まっていく。
そして、
光が放たれた。その光は『聖光(せいこう』と呼ぶべき物で、光に聖の『消し去る』能力が混ざった物だ。本来ならば避けられたであろうその光も神の苛立ちをぶつけられたカルワに成す術は無く、只々向かってくる光を…死を座して待つだけだった。
誰かの影が飛び出す迄は
その影に突き飛ばされたカルワには聖光は当たらなかった…
しかしながら、突き飛ばしたその影に聖光が当たるのは自明の理。
胸から下が跡形も無く消し飛ばされた影の正体は............
イブであった......
「..............................え?」
カルワはその言葉を絞り出して、動かなくなった。
〖ム…女に当たったか。それにしても下らん、たった数秒生き延びて何になる。
やはり人族の思考は理解できんな〗
その意思がカルワに届くことは無く、カルワは過去に囚われていた。
一緒に隠れん坊をするカルワとイブ。学校で再会したカルワとイブ。
告白したカルワ、それに応えたイブ。一緒に水族館に行ったカルワとイブ。
様々な思い出が脳内を駆け巡る。しかし、目を開けて現実を見ると…
下半身の無いイブ。
カルワの心は、イブとともに壊れた。
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明日も投稿します!