帝王は、神を見る
「我は精霊。精霊とハ不完全な世界ニ唯一許された自衛手段でアル。本来は自意識ヲ持たナい自然災害の様なモノ。世界ハ我を創り我に命じた。
この世界に蔓延る害獣ヲ内側かラ食い破れと。その為に我に『聖』の力を与えた」
聖精神は饒舌に語る。その声は徐々に滑らかになっている様に思えた。
「我以外の精霊は全て人に殺された。我は聖の力で命からがら逃げ、生き延びた。
聖の力は魔と対にある。魔が望む事象を『創り出す』のに対し聖は望んだ事象を『消し去る』。
この力で我は人族から『自我』を消し我が傀儡にし、この国を建てた。
生まれてくる者も外から来る者も等しく洗脳を施し、我の存在と相反する魔を禁止し聖の力を使わせた」
「…なら、外で襲ってきたのは…」
「ああ、察しの通り我が傀儡共だ。
多少の時間稼ぎくらいにはなるかと思ったが…期待するだけ無駄だったな」
カルワはその物言いに思わず声を大きくして叫ぶ。
「お前っ…!!国民を何だと思っている!?」
「はて…只の道具だが?…それよりも我は発言を許可したか?
罰として貴様の母親の腕を一本貰おうか」
音も慈悲も無く、右腕が消え去った。母さんは声も上げず虚ろな表情のままだ。
当然俺は激情し、今にも聖精神に掴み掛りそうだったがその前に聖精神に止められる。
「貴様が敵対的な行動をとった瞬間にそこの女の誰かを消す」
「っ‼‼」
その言葉はカルワにとってはどんな拘束よりも効く呪いだった。
その効力を確認した聖精神はいやらしい笑みを浮かべ、また話し出した。
「そうして兵力を増やしていき人を滅ぼそうと思ったその時、我は天啓を得た。
このまま人を滅ぼしても旨味が無い。それなら世界に楯突き、出し抜き、我を顎で使っていた世界を支配下に置く存在。そう、神になろうと!そして我は聖精神と名乗った。
そこからの我の行動は早かった。世界の血管である龍脈をズタズタに切り裂き余計な真似をされないようにし、神になる為の条件を満たす為に動いた。条件が知りたいか?仕方ない教えてやろう」
聞いてもいない事までベラベラと喋る聖精神。随分気分が良いらしい。
だが隙は無い。
「それぞれの素質や種族により条件は異なるが我の場合は同族を50体殺すこと。レベルが10万に達すること。そして、生まれた世界で100公転…まあ100年存在することだな。
同族はこの世界には存在しないので世界を渡り殺した。その道中目についた生き物を殺害してレベルを上げる。100年ぐらい大したことはないと思うだろう?しかし、精霊の平均寿命はたったの10年だ。どれほど厳しい条件かわかってくれたか?......そうそう、因みに今日は我の100歳の誕生日だ。大いに祝ってくれたまえ」
その言葉を聞いて背筋が凍った。頭で理解するよりも先に魂が叫んだ。このままコイツに時間を与えてはいけないと。今、この瞬間に仕留めねば取返しのつかない事になると。
俺は後先なんて考えずに飛び出した。策も何も無い突撃、無謀で無様。それでも動けと心が警鐘を鳴らす。
だが、
だが…
だが......!
全ては手遅れだった。
「神化!!!」
その言葉が鼓膜に届くと同時刻…世界は光に包まれた。
昨日ブクマ増えたのに更新出来なかった…
今日か明日に。もう一話投稿します。