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突然の訪問者

あけましておめでとうございます!

昨年はお世話になりました。

今年もよろしくお願い致します!

「やっちゃったあぁぁぁ……」


 一日を終えて、夕飯前のブレイクタイム。

 マリアはダイニングテーブルで頭を抱え、大きなため息を吐いていた。


「いや、あれはなぁ……煽ったこっちも悪ぃけど、そっちも大人気なかったっつーか……」

「キレたマリアが悪いだろう。全面的には」

「楽しかったしいいんじゃないかい?」

「そういう問題じゃないんですよっ!!」


 同じくテーブルに座って紅茶を飲むお義兄様、アラン、アル兄様の言葉に、マリアはタンッとカップを置いた。


「これじゃあお友達できないじゃないですかぁ! みんな怖がって遠巻きに見てくるんですよきっと!」

「自業自得だろう。ルークだっておまえを止めないどころか乗り気だったんだから、文句はそっちに言え」

「だってあんな喧嘩売られたら腹立つじゃない!? お義姉様は私より強いじゃなきゃやだよ!?」

「おまえは俺を結婚させないつもりか?」

「僕はマリアが入ればいいからね。友達ならアランとエレノア嬢がいるんだから充分じゃない?」

「いや、うん、寮に入れるほど仲良くなる人とかじゃなくて、一般的なクラスメートの距離でいいっていうか」


 複雑だ。ぶっちゃけマリアも箱庭主義だから下手に人が増えるのも囲まれるのも苦手だし嫌だけど、だからと言って嫌われたりまともに会話できないのはキツい。幼少期に茶会に出席してなかったのもあって顔見知りさえいないのだ。


「でもですねー、皆さんあまり引いてはなかったみたいですよー?」

「えっ……?」

「そもそもー、うちの学年に騎士団長の息子さんがいるみたいなんですー。昔から子供の大会で優勝したりしてた子らしくてー、私たちくらいの歳では有名なんですよねー。なのに入学テストでその人じゃなくてマリアがトップ取っちゃったのでー、その時点で一目置かれていたみたいですよー」

「そ、それほんと!?」

「はいー。まさか剣聖のニコラス様に勝っちゃうとは思ってなかったのでー、そこだけは驚いてましたけどー」


 エレノアの言葉にマリアの曇った瞳が輝きを取り戻す。


「まだ挽回の余地はあるってことね! せめて会話できるくらいの距離でありたい!」

「願いがささやかすぎるだろ……まぁいずれはその規格外っぷりがバレると思うんだけどな……」

「そもそも躊躇いなく首を刎ねたり義兄の背中を袈裟懸けにしたりしてる時点で異常だと思われてるだろうけどねぇ」

「え? だって勝負に躊躇いも手加減もなくないないですか? むしろ相手に失礼じゃありません?」

「そういうところだバーサーカー。お里が知れるな」

「この国で一番の令嬢捕まえて何を言うのよ。ていうかほぼ一緒に育ったようなもんでしょ」

「令嬢うんぬんはさておきー、タフで強い面ではある意味誰より騎士向きですよねー」

「エリーまでぇぇ! うわあぁぁんっ! ルークぅぅぅ!!!」

「よしよし、僕だけはマリアの味方だからね〜」

「またこの流れか……」


 そんないつも通りの会話をしていると突然、ピンポーンと間抜けな音が鳴った。


 実はこの学園、扉室というものがある。

 そこの名簿に名前と時刻を書いて訪ねたい寮名を唱えるとインターホンが鳴り、寮生の同意が得られると寮に入れる仕組みになっている。今鳴ったのはそれだ。


「えっ、こんな時間に……? お義兄様たちのお友達ですか?」

「いや、僕は何の予定も無いはずだよ。ニコラスじゃないかい?」

「俺もない。つーがよっぽどのことじゃねーと誰も来ねぇよ。去年、学年の女子は全員出禁止にしたからな」


 ちょっと見てくるわ、と言ってお義兄様がスタスタとダイニングを出ていった。


「なんで出禁にしたんですか?」

「寮に入れてくれって女の子が毎日たくさん詰め掛けてね……休日なんかは終日ピンポンピンポン……さすがの僕らも疲れちゃって……」


 げんなりとした顔で言うアル兄様に、なるほどと頷いた。確かに男子二人だけの寮、しかも王子と公爵子息。寮に入って逆ハーレムや玉の輿を狙うなら最上級のシチュエーションだ。


「じゃあ誰だろうね。今日の演習でルークを好きになっちゃった女の子だったりして」

「それを言ったらマリアの剣技に惚れた男かもよ?」

「それだったらルークが追い払ってくれるんでしょ?」

「もちろん」


 くすくすと笑い合っていると、ガチャッと扉が開いてお義兄様が見えた。それに促されて一人の男子が部屋に入ってくる。

 すっとルークとアランがマリアの前に出た。エレノアの前にはアル兄様が立っている。


「俺はカラトリック王国騎士団長、ザッハーク=バルデンが息子、ブランドン=バルデンだ! マリア=セイントベール、俺と勝負しろ!」

「お引き取り下さい」


 オールバックの少年が言い放つと同時にルークが被せるように言った。そこから流れるような動作で結界を張る。


「ねぇニコラス? なんで彼を入れたの? どう考えても入れるべき人じゃないよね?」

「いや……なんか引き下がりそうに無かったし、強ぇやつと戦いたいって気持ちはわかるし……」

「この脳筋が……! ほら見てよ。どう考えても入れたの間違いでしょこれ」


 ダンダンと結界を叩いてくるブランドンという少年に、ルークが呆れた目を向けた。雷でも落とすかな、なんて物騒なことを呟いている。


「だからってこのままにはしておけないよねぇ。お腹も空いたし。どうにか帰ってもらおう」

「はぁ……」


 アル兄様の視線を受けたルークが結界をそのままに、自分だけさっと外に出た。

 それと同時にブランドン少年の声も聞こえるようになる。


「お帰りください」

「なぜ締め出す! 戦わせろ!」

「いやだから帰れってば。君にマリアを合わせるつもりは無いよ」

「そこにいるだろう! 一戦やらせろ!」

「言葉が通じないの? 君はマリアに近づけない。帰って」

「なんでだ! そうだ、剣聖ニコラス! 妹と戦わせてくれ!」

「いやそいつの許可がねぇと無理だわ。俺の意見は意味がない」

「そういうことだから。帰れ」

「というかお前はいったい誰なんだ!? なんでそう俺とセイントベールの間を邪魔をするんだ!?」

「僕が間男みたいな言い方やめてくれる? もう帰れってば! 僕たちこれから夕飯なんだから!」

「じゃあ夕飯が出来るまでの間! その間だけセイントベールと戦わせろ!」

「その夕飯作るのが僕とマリアなんだよ!」

「じゃあ夕飯を食べてからでいい! ついでに俺にも作ってくれ!」

「図々しすぎない君!? 騎士団長って候爵だろ!?」


 ぎゃあぎゃあと言い合いを始めてしまった二人に、アランとマリアは頭を押さえて大きくため息をついた。


「おいどうにかしろマリア。おまえの婚約者とファンだろう」

「そうは言っても王子に目もくれない人の相手なんて出来ないわよ……あーいうタイプは人の話なんて聞かないの」

「彼、結構プライド高いみたいですよー。入学テストでマリアに負けたの凄く悔しかったらしくてー、再戦の機会を狙ってたみたいですー。……というかマリアは彼を負かしたこと覚えてますー?」

「まったく?」

「あらー……」

「ニコラスも面倒くさそうなのを入れたねぇ」


 アル兄様も苦笑せざるをえないらしい。そんな会話をしていると、ついにルークがブランドンくんの背を押し始めた。


「いいから帰って! これ以上ここにいるなら出禁にするから!」

「くっ……まあいい、また来るからな!」


 どうやら決着がついたらしい。

 覚悟しておけ! と吐き捨てて、ブランドンくんは寮を出ていった。


「アラン、出禁の手続きをしておいて」

「わかった」

「えっ? でもさっき……」

「ここに居座るなら出禁にするとは言ったけど、出ていったからって出禁にしないとは言ってない」


 むすっとした様子のルークが言うので、マリアは確かにと頷いてしまった。言葉の綾というか方便というか。でもまあこれで彼はここに来れないだろう。アランの仕事はものすごく早い。


「えへへー、ありがとうねルーク。かっこよかったよ〜」

「……気をつけてねマリア。僕も出来るだけ守るようにするけど、物理方面はどうしても弱くなるから」

「わかってるよ。だいじょーぶ」


 いつになく不機嫌なルークをぎゅうっと抱きしめてから、マリアはいつものエプロンを手に取り夕食の支度を始めた。


 *****


「…………」


 本棚と机、ベッドのみが置かれたシンプルな自室にて、ルークは机の上に置いた二つのリングを見つめていた。


「やっぱり物理防御が優先か……殺気を感知した瞬間結界を張るようにしよう」


 サラサラと紙にペンを走らせ、同時に顕現した賢者の書を捲る。目の前のリングはマリアとルークのものだ。明日には返すと言って夕食後に預かってきたそれの上には今、ルークが組み込んだ魔法式が浮かんでいる。ルークが賢者の指輪にかけたマリアを守るための魔法だ。


「物理防御、衝撃反射、瞬間結界……少し容量が足りないけど、一応魔法吸収もかけておこう」


 マリアには必要のないものだとわかっていても、何らかの理由で発動する可能性がある。マリアは攻撃面では群を抜くけど守りはほぼ自分の基礎能力頼りだ。ルークが何十にも囲って厳重かつ鉄壁にせねばならない。


 集中して魔力を込めると、指輪の魔方陣が空中で書き換えられていく。羽ペンで描くように書き込まれたそれは馴染むように指輪に吸収され、光が消えると同時に賢者の書もルークへと戻った。


「ふぅ……」


 指輪を魔力を通すことで開く鍵箱に入れ、ノートを仕舞ってベッドに入る。

 あのブランドンという男はそのプライド故にマリアに執着するだろう。きっと勝つまでしつこく迫ってくるし、マリアは優しいからその挑戦を受けてしまうかもしれない。マリアに自分たち以外の男が近づくのは耐えられない。全力でマリアとの接触を絶とうと決めて、ルークはそっと目を閉じた。

先週二話投稿するつもりでしたが年末年始のドタバタでパソコンを殺しました。死。

というわけで更新は来週です!

今年もぐだぐたなさびねこ。とマリアたちの冒険をよろしくお願いします!

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