表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/67

閑話 ペルソナ=レゾナンス

初めての閑話です!

 

 その日、ギルドスタッフにとって黙示録のラッパという名のベルが、その音を響かせた。



 カラン、と鳴った戸口のベルに、ギルド受付嬢エルミナはその視線を扉と向けた。


「えっ?」


 ドアを開けて入ってきたのは、奇妙な仮面を付け、見たこともない服を纏った子供たち。


 数えてみると、計八人。

 背が高く狐っぽい面の少年二人、それより背が低く猫のような面を付けた少年二人と少女一人、そして彼らより小さく兎の面の少年二人と少女一人。


 その異様な格好にギルドにいた冒険者たちの視線が集中する。そんな様子に気付いてないのか、猫面の少女が狐と猫面の少年を一人ずつ伴ってカウンターへとやってきた。


「き、君たち、なんの用かな?ここは冒険者の人達が依頼を受ける場所なんだけど……」


 営業スマイルでそう言うと、少女が一枚の紙を差し出してきた。


「『ギルドマスターをお願いします』……?えっと、ごめんね、ギルドマスターは気軽に会えない人なんだ。だから」

「変な奴らが来たって本当か!?」


 階段から転げるようにギルドマスターのギースさんが降りてきた。どうやら職員の誰かが伝達したらしい。そういえば今週は報連相徹底期間だったなぁと思う。


「やっぱおまえらか。来るときゃ連絡しろっつったろ」


 少女の頭をギルドマスターがくしゃくしゃと撫でた。どうやら知り合いらしい。


「あー、おい!エルミナ、こいつらを冒険者登録させてやれ」

「はい!?」


 なんてことを言うのだ。まだこの子供たちは十にいくかいかないかの子供だ。そんな幼子を日々命懸けの冒険者にしようとはどういう了見なんだ。


「待ってくださいギルドマスター!この子達はまだ子供ですよ!?すぐ死んでしまいます!」


 エルミナと同じ意見を抱いたらしい職員が叫ぶ。それにギルドマスターはぽりぽりと頭をかいて苦笑気味に言った。


「あー、えっとなぁ。こいつら、こう見てもその辺の冒険者より強いっつーか……」

『はあ!?』


 ギルドにいた冒険者たちの声が揃った。そりゃあこんな年端もいかない、自分の半分ほどの身長しかない子供より弱いと言われたも同然なのだから、驚く……というより殺気立つのも仕方ない。


「オイ、ギルドマスター!俺らがそのガキ共より弱ぇっつーのか?あ?」


 ガタンッと立ち上がったのは、つい先日まで傷害事件を起こして冒険者活動が停止されていたザッコローニさんだ。その腕っ節でCランクにまでのし上がった人である。ちなみにギルドランクはFからSまであり、ほとんどの人はCからB止まりだ。Aまでいけばギルドマスターにもなれる実力の持ち主と言われる。


「お前は……ザッコローニだったか?確かCだったよな」

「おうよ。魔物を討伐しまくる様はまるで獄炎のようだってなァ!人呼んで獄炎のザッコローニだ!」


 そのままじゃん、と思うと同じ、ブフッという吹き出すような音がした。驚いてみると、少年が狐面を抑えていた。どうやら彼が笑ったらしく、シーと指を立てる少年少女も微かに肩を震わせている。それが気に触ったらしいザッコローニさんがぴくぴくとこめかみを引くつかせて子供たちにち近づいた。


「おいてめぇ、なにがおかしいんだ言ってみろォ!」


 ツボにハマったらしい狐面の子を後ろに隠し、猫面とウサギ面の少女がぶんぶんと首を振った。それに煽られたのか、ザッコローニさんが少女達の首元に両手を伸ばす。持ち上げようというのだろうか。流石に止めなければ。


 バシンッ!


 二重奏のそれに、ギルドが一気に静まった。


 猫面と兎面の少年が、二人の少女に手が届く前にザッコローニさんの手を払った音だった。次の瞬間、ギルド内の気温がぐっと下がる。


「……ぐっ!?」


 ザッコローニさんが唸り声を上げた。見ると、氷がザッコローニさんの足元を覆っていた。それはパキンパキンと鳴りながら上へ上へと生き物のように這い上がっていく。


「やめさせろ」


 呆れた声でギルドマスターが言うと、猫面の少女がこくりと頷いて先程手を払った猫面の少年に抱きついた。すると、顔の近くまで張っていた厚い氷が薄氷のように砕け散る。


「ってわけだから、実力は問題ねぇ。あっても責任はこいつらと俺がとる。さっさと登録してやれ。お姫さんたちはいいが、騎士共がギルドの破壊を始めるぞ」


 ちら、と視線を向けた先の猫面の少女は、少年と手を繋いでこてんと可愛らしく首を傾げていた。


 *****


「ギルドカードゲットー!」


 転移でアトリエまで帰り、マリアはぴょんぴょんと飛び跳ねた。ほかの面々も自分のカードを感慨深げに見ている。


「ルークがキレたときはどうすっかと思ったけど、登録できてよかったな」

「ギースさんがいて助かったねぇ」


 アル兄様が視線を向けた先では、ルークとアレクが腰に手を当てたアランとアリスに怒られていた。


「おまえたち、どういうつもりだ?あそこで騒動を起こしたら誰に迷惑かかると思ってるんだ!」

「いや、だって……あっちが先に手出してきたんじゃん」

「先に手を出したのはこちらですわ!仮に正当防衛としてもあれはやりすぎですわ!お兄様に言ってるんですのよ!?聞いてますの!?」

「き、聞いてるよアリス〜。ちょっとカッとなっちゃっただけだって」

「ちょっとで凍死体出してたらこの世は死体だらけだろうが!」


 そんな会話を横目に、マリアのそばに寄ってきたユリウスが服の袖を引いた。


「姉上、この服って……」

「もちろん私が作ったやつよ。防御、温度調節、軽量、伝達までバッチリなんだから!」


 ふふん、と胸を張るマリアが着ているのは、着物のデザインを主軸にした和風戦闘ロリータである。巫女服のイメージをベースにフリルスカートにパニエをたっぷり入れ、足元は編み上げブーツ。腰元を太めの帯でコルセットのように止め、後ろでリボン結び。髪にはシャラシャラと揺れる簪が刺さっている。これも魔法具だからいくら暴れても取れない。首元には賢者の贈り物を勾玉のチョーカーにして付けている。


 アリスとは着物が色違いでほぼ同じデザインのものを着ている。巻物が腰についていて、中には収納魔法で大量の銃火器を入れている。太ももにガーターで付けてあるし、手袋にも仕込んであるからとっさな時でも大丈夫。襷も渡してあるから銃を撃つ時にも邪魔にならない。作った私天才。


 そして男子組もスポーツマンのような黒いロングTシャツとレギンス、陰陽師をイメージしたトップスとハーフパンツでお揃いだ。ただ役職が違うから少しずつデザインが違う。


 ユリウスは長めのローブを纏い、腰や首元についた勾玉にはいざという時の魔道具が仕込まれている。衣装の世界観を壊さずどこまで趣味に走れるか試した結果生まれたアクセサリーという名の兵器だ。


 アレクは従魔のリクとカイとお揃いのマントだ。髪と同じ少しくすんだ金の糸で狼をイメージした刺繍は一人と二匹のお気に入りだ。下の狩衣にはポケットがついており、二匹が中に入れる大きさで魔法で軽くなるようにしてるから重くない。


 アル兄様はほとんどユリウスと同じようなデザインだけど、ところどころ音符を模した刺繍が入ったローブの裏には大量のポケットが付いている。その中には楽器を圧縮したものが入っていて、魔力を込めればどんな楽器も取り出せる。


 お義兄様は「これがねぇと落ち着かねぇ!」と言って愛用の剣を背負っている。ちなみにこれはマリアの〈ケース〉に入っていたSSRアイテムで、名前は『勇者の剣 : カラドボルグ』──丘を三つ削り取るほどのリーチと切れ味のある、伸縮するケルト神話の魔剣だ。長い袖が邪魔だと言うので襷を上げたら気に入ってずっと結んでいる。他より袖は短いし振りも減らしたんだけどなぁ……


 アランもお義兄様と似た形状だが、将校のようなマントを羽織って腰には帯刀をしている。マントには銀獅子をイメージした刺繍を入れてあり、同じ色のボタンで前を止めている。いざという時の保険として、服の鳩尾辺りから一本刀が出るようになっている。ちなみにこれも完全なる趣味だ。魔法って何でもありでいいよね。


 最後、ルークのはもうめちゃくちゃかっこいい。ただひたすらにかっこいい。男子組のベースとなる陰陽師らしい上下に、手元まで覆う袖、マリアとお揃いの勾玉チョーカーが首を飾り、手にはレザー手袋をはめている。全体的に黒と青でまとまっていて、そのシンプルな様が半端なくかっこいい。


「この仮面もいいな。着けてても視界が狭まらねぇし、この組紐っつーのも全然取れる気配がねぇ」

「おまけに通信機能も付いてるしね〜。名前呼んじゃったら大変だし」

「身バレを防ぐのは大事ですよね」


 そしてこれこそ自信作。リンに頼んで固く魔力を通しやすい木を探してきてもらい、錬金でイメージ通りの面を作った。年長組は狐、年中組は猫、年少組は兎の形に彫り、それぞれに模様を着色した。視界を狭めないよう魔法をかけたし、ルークに伝達魔法をかけてもらったから仮面を着けながら喋った内容は仮面を着けた者にしか聞こえない。


 これらの衣装をお父様と陛下もとい伯父様に提出し、冒険者として活動する許可をもぎ取った。


「で、最初はどんな依頼だ?」

「ギースさんが用意してくれてたこの依頼です」


 ジジャーンッ! と見せたのは一枚の依頼書。

 そこには、郊外の森に魔物が大量発生しており、それの一掃討伐と書かれていた。魔物相手なら、遺憾無く皆のチートを発揮できる。


「まだ午前中ですし、今から行きますか?」

「そうねー、うん、行っちゃおうか?」

「おいおまえらー、そのへんで終わりにしてとっとと依頼行くぞ!」

「お姫様がお待ちだよ〜」


 未だ言い合いを続ける四人を呼んで、森に一番近い場所まで〈テレポート〉する。



 こうして、後に第二の勇者一行と言われる伝説のパーティ、『ペルソナ=レゾナンス』が誕生した。

いつもブクマ評価ありがとうございます!

感想とっても嬉しいです!その一言に救われています!

次回から新章です。よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ