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四次元ポケット、その名は〈ケース〉

「さて、皆が僕らの制止を振り切って城を飛び出して行ったあとの経緯と、マリアの肩にいる赤い鳥について教えてくれるかい?」

「ハイ……」


 にっこりと笑うお父様に、年少組を除いた五人は苦い顔で頷いた。


 *****


 大規模な誘拐事件が発覚してすぐ、会議室にお義兄様とアル兄様が飛び込んできた。


「あいつらが誘拐されたって本当か!?」

「お義兄様!」


 少し前にお父様と陛下が出ていったから、お母様たちも帰ってきたのだろう。お義兄様に引き摺られるように現れたアル兄様は死んだようにぐったりとしている。


「今ちょうど準備が終わったところです! これからシロちゃんの力を借りて皆を救出に行こうと思いまして」

「俺たちも行くぞ!」

「そう言うと思ってました! じゃあ二人ともこれを着てください。体温調節をしますから」


 そう言ってマリアは二人にローブを渡した。いずれ冒険者活動をする時に必要であろう装備の試作品なのだが、デザインはともかく機能性はバッチリだから使う分には問題ない。


「おい、アルとニコラスは……っておまえらなんだ、その格好は」

「マリア、何する気?」

「お父様、陛下! これから皆を助けに行ってきますね!」

「「はっ!?」」


 ルークとアラン、アル兄様に支援魔法をかけながら、駆け込んできた二人に言い放った。


「いやいやいやちょっと待ておまえら。ガキだけで凶悪犯が何人いるかわからない場所に行くってのか? 冗談だろ!」

「誘拐のタイムリミットは48時間です。監禁場所までどれくらいかかるか分からないのに馬や馬車を動かす暇はないです!」

「でもねマリア、向こうは子供を拐ったんだよ? 子供の君たちを行かせるわけにはいかない」

「ですが拐われたのは七歳の子供だけのはずです! 子供がたくさんいるならなおさら歳の近い私たちが行くほうがいいです!」

「だめだ、マリアじゃ話にならねぇ。アラン、おまえは常識人だよな? 騎士を連れて行った方がいいのはわかるよな」

「……お言葉ですが父上、マリアの言う通り誘拐事件は一刻を争います。こちらにはルークやニコラスなど戦闘力が高いメンバーがいますし、なにより治癒魔法が使えるのはマリアだけです。俺は防御には自信がありますし兄上は支援魔法に特化しています。布陣は完璧です」


 ちらり、とアランがマリアを見て、マリアはそれにこくりと頷く。すすす……と全員が一箇所に集まり出す。にっこりと笑ったルークが口を開いた。


「魔力の方向は北北西ですので、騎士をそちらに向かわせてください。見つけ次第僕のテレパシーで伝達します。と、いうわけで」


 気づいた時にはもう遅い。


『行ってきます!!』


 次の瞬間、マリアたちの姿は消え去った。





「あー、もうどうするんだこれ。帰ったら絶対怒られるぞ」

「なによー、あんな啖呵切っといて今更それ言う?」

「これ暖かいね〜。人間じゃ無理な速度で走ってるけど寒くないよ」

「空気抵抗もねぇな! 走りやすい!」

「ねぇ、ニコラス身体強化かけた? えっ、かけたよね? かけてなくてこの速度とか人間じゃないもんね?」


 そんな会話をしながら全速力で走る。走るのが苦手な三人には常時疲労回復とちょっとした加速をかけたから、疲れを感じずに走れている。はず。


「ふえぇぇ主様ぁ〜!」

「シロちゃん前見て前! 道あってる!?」

「あってますぅ〜!」


 ぴゃーぴゃーと泣くシラタマを抱え、マリアたちはひた走った。整備された道から、獣道へ、そして森へと入る。それでも足を止めることは無い。

 時折出てくる魔物をマリアとニコラスで張り倒し、森を突き抜けた先は、大きな平地だった。


「何もねーな……っていってぇ!?」

「お義兄様!?」


 お義兄様が一歩踏み出した瞬間、バチン! と弾かれた。


「んだよこれ……」

「多分隠蔽効果のある結界なんだ。アラン、ちょっとドーム作って」

「あ、ああ」


 アランが刀に魔力を込めると、水色のドームがマリアたちを覆う。


「そのまま突っ込んで」

「はあ?」

「結界は魔力の膜だから。このまま行けばちゃんと通れるよ」


 マリアたちが作ったアランの刀はミスリルでできている。だから魔力を通すし、そうしてできたドームは外内部からの魔力を吸収するのだ。

 ドームに入ったまま近づけば、先程のようには弾かれずすんなりと中に入れる。結界を完全に通り抜ければ、目の前にはごく普通の一軒家があった。


「ここがアジトかよ……?」

「僕の予想だともっと倉庫っぽい感じだったんだけどね〜」

「兄上、同感ですけど耐えてください」

「うーん、地下にいっぱい人がいるみたいだ」

「地下、地下かぁ……家の中は何があるかわかんないし……」


 しばらく考えて、マリアはポンッと手を叩いた。


「よし、掘ろう!」

「はっ!?」

「なんかアイテムあったかな〜」


 〈ケース〉を探すと、鋼鉄ドリルハンマーというのがあった。取り出してみると、工事現場でよくあるアレだった。オーパーツじゃん……

 地面に突き立てて魔力を流すと、ドドドドドという音と共にものすごい勢いで地面が掘り下げられていく。


「なにこれ楽しー!」

「うわっぷ! マリア! 砂埃やべぇって!」

「マリア無理しないでね!? 危なくなったら代わるからね!?」

「大丈夫だよ〜!」


 昔やったゲームボーイにこういうのあったなぁ……なんてぼんやりと思いながらしばらく掘っていると、突然底が抜けて落ちた。とっさに受け身を取り、無事に着地する。


「つきましたー! 降りてきてください!」

「いやおまえ深すぎんだろ!? 俺はともかくこいつらには無理だぞ!」

「えー、じゃあクッション敷きますよぅ」


 またまた〈ケース〉を探ると自殺防止クッションなるものがあった。前世の兄はどこでこれを入手したんだろうか。てかなんてもんをアイテム化してるんだこの会社。これの使いどころはどこなんだ。


 そんな疑問を思い浮かべながらもクッションを設置すると、ボスンとお義兄様が落ちてきた。次いでルーク、アラン、そして最後にアル兄様が落下してくる。


「ここは何階だ?」

「そうだね……地上の音がとても小さいから、普通の建物なら地下四階くらいかな?」


 反響音も大きいしね、とアル兄様がコツコツと床を叩く。耳のいいお兄様は空間認識が得意だ。「僕の特技は目を瞑ってても城を周回出来ることだよ!」と自慢げに言っていたのは伊達じゃないらしい。


「掘りすぎちゃった……あれ、ルークどうしたの?」

「んー……なんか変な気配がする。これは人間じゃない、けど……マリア、ちょっと見れる?」

「やってみるね」


 索敵を発動させると、何やら大きな魔力の塊が少し奥の方にあった。それをルークに伝えると、行ってみよう、と言う。


「えっ、行くの? 子供たちの救出を優先した方が……」

「いや……ここは地上と比べて以上に気温が低い。地下ってだけじゃ説明出来ないくらいだ。原因を確かめてどうにかしないと、子供たちが危ない。その為には手がかりを追うしかない」

「それに、ここの結界はおかしい。地上に魔力源も結界の装置もなかったのに、あの強度の結界なんて作れるわけがない。膨大な魔力の供給元が必要だよ。それを絶たないとさっき呼んだ応援が来てもここを見つけられないし、突入できない」

「そうだねぇ……これより下の階はないようだから、そんな大事なものを置くとなると、この階だね」


 アラン、ルーク、アル兄様の意見が一致して、魔力の塊の元へ向かうことになった。ちなみにお義兄様は何も理解してないのに、「とりあえず俺先頭行くな!」と言ってくれるのは頼もしすぎる。


「やっぱりアル兄様も頭良いんですね」

「ん〜、そうかい? まあ仮にも王族だからある程度の賢さは必要だしね。マリアたち年下にも頼られたいし」


 そう言ってアル兄様がパチンッとウインクをしてきた。さすが攻略対象、顔がいい。

 いつもにこにこほわほわな優しいお兄さんって感じだから、たまにこういう面を見るとちょっとびっくりする。もしかして腹黒だったりもするのか?


「マリア……」

「ん?」

「やっぱり年上の方が頼りがいがあるかな」

「えっ」


 警戒して歩きながら進んでいると、いつの間にか隣にいたルークがそんなことを呟いた。一瞬ポカンとして、ぷはっと吹き出す。


「なぁにルーク、やきもち妬いてるの?」

「いや、その、やきもちっていうか……」


 目をそらしながら拗ねたような苦い顔をするルークに、マリアはニヤける口元が抑えられない。私の婚約者がこんなにも可愛い。


「えへへ、ルークってば可愛い! そんな心配しなくても私が一番好きなのはルークだよ! もう三年も大好きって言ってるのにまだ信じてくれないの?」


 きゅっとルークの手を両手で包んで、上目遣いでこてんと小首を傾げてみた。途端にルークの頬がぽっと赤く染まる。そこ、あざといとか言わない!


「し、信じてるよ! ……僕もマリアが大好き」

「ふぇっ」


 思わぬカウンターに今度はこっちが赤くなる番である。その顔はずるい、かっこよすぎる。

 あわあわと視線をさまよわせて、最終的には俯いた。多分耳まで真っ赤になってる。それでも、お互いに握った手は離さない。


「……おい、ニコラス。こいつらは昔からこうか?」

「昔のが恥じらいがないぶん酷かったんじゃねぇかな。前はもっと『ルーク大好き!』『僕も大好き!』って感じだったからな」

「今と変わらなくないか?」

「あはは、可愛いね〜」


 ため息混じりの三人の会話など耳に入ってこず、ただただ二人早足に歩く。

 温かい手が確かめるように強く握られたから、それに応えるようにふんわりと握り返した。



「……主様ぁ……」


 ニコラスに抱えられたシラタマだけが、不安そうにナンテンのような瞳を潤ませた。


いつもブクマ評価ありがとうございます!これからも応援よろしくお願いします!

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