精神安定には慣れが必要
アリスちゃんの容姿決定してるのにまだ話しの中で出てないんですよね…そのうち絶対出します
「みんなー! そろそろ行くよー!」
〈テレポート〉でマリア専用キッチンに移動すると、ちょうどお菓子を包み終わったらしいユリウス、ニコラス、ルークの三人が同時にこちらを向いた。
「……マリア、その子がアリスか?」
「はいお義兄様! 見てくださいよぅこの服! かっわいいでしょー?」
「あー、おう。可愛いぞ。でもそうじゃなくてな?」
ニコラスが視線を向けたのは、ぐったりと両膝をつくアリスだった。ぐるぐると目を回す少女を介抱するため、ルークとユリウスが駆け寄る。
「だ、大丈夫アリス?」
「うぅ……気持ち悪いですわ……気持ち悪いですわ……!」
「すみません、姉がとんだ迷惑を」
「ちょっ、ユリウス!? おねーちゃんは迷惑なんてかけてませんよ!?」
「〈テレポート〉は慣れてなければ疲れるんですよ。彼女を見てください、馬車酔いしたルークみたいでしょう」
「ちょっとユリウス」
「ルークは酔わないから平気だと思ったんだけど……」
今日は酔ってなかったから、指輪にかけておいた治癒魔法がちゃんと効いたみたいだった。
ユリウスがかけた治癒魔法で顔色がよくなったアリスが、恨みがましい目でマリアを見つめた。
「やっぱり、こんな野蛮人にお兄様を渡せませんわ……!」
「君もそう思いますか。僕も姉上の婚約者にルークは不足かと考えていたところです」
「「何言ってるの!?」」
そんなツッコミはフル無視で、アリスとユリウスはかたい握手を交わした。
「貴方とは気が合いそうですわね。わたくし、アリス=メグアリクと申しますわ。アリスとお呼びくださいませ」
「僕はユリウス=セイントベール。ユリウスで結構です。よろしくアリス」
どうやら年下同盟が出来てしまったらしい。そんな二人に、お兄様が気まずそうに近づいていった。
「あー、いいとこ悪い。俺も自己紹介していいか?」
「アリス、僕の義兄のニコラスです」
「おまえがするのか!?」
「失礼いたしました。アリスとお呼びくださいませ、ニコラス様」
「……ああ、よろしくアリス……」
ニコラスは諦めたようにため息をついた。ルークと哀れみのこもった視線を送ると、少し涙目のニコラスからキッと睨まれる。
「そ、それじゃあ自己紹介も終わったことだし、さっそく行きましょうか! お義兄様、バスケット持ってください」
「おう……」
お菓子を詰めたバスケットを抱えてもらい、全員で手を繋ぐ。
「ほら、アリスも!」
「嫌ですわ、嫌ですわ! さっきのもう一回やるんですのね!?」
「大丈夫だよ。気持ち悪くなったらユリウスが治してくれるよ」
「お兄様までぇ……」
ううう、と半泣きになるアリスを引っ張って、ユリウスとルークが間にいれる。その手が離れないうちに、マリアは〈テレポート〉を発動させた。
「……ってここ、王宮じゃありませんの!?」
またもや酔い、ぜぇぜぇと息をしながらアリスが見上げたのは王宮。マリアが転移したのは王宮の門のすぐそばの木陰だった。人目につかないこの場所は、マリアたちの転移場所になっている。
「おっ、お兄様! これはいったいどういうことですの!?」
「うーん。ざっくり言うと王子と友達ってことかな」
「説明になっておりませんわ!」
パニック状態になっているアリスを引きずりながら門の方へ行くと、顔なじみの門番さんが帽子を上げて挨拶してくれる。
「やあ姫さん。今日は一人多いね、お友達かい?」
「こんにちは! ええそうなの。可愛いでしょう?」
「べっぴんさんだ。んじゃ、行っておいでな」
「ありがとう。あ、これお裾分け!」
「おっ、ありがとな姫さん! 姫さんの菓子は美味いんだよ」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」
そんな会話を聞いていたアリスが信じられないというように目を見開いた。
「なに……何が起こってるんですの……!? この和やかな感じはなんなんですのお兄様……!」
「そのうちわかるから落ち着いてって」
「落ち着けるわけないですわ!」
混乱しながらもルークに詰め寄るアリスに、さらなる追い打ちがかけられる。
「あら! マリアちゃん! 会いたかったわ〜!」
「王妃様! ご機嫌麗しゅうございます!」
「ええ、ごきげんよう。ところでマリアちゃん、そこの可愛いご令嬢は誰かしら?」
ちらりと視線を向けられたアリスがピシリと固まった。ルークに促され、顔を赤く染めたままおずおずとカーテシーをする。
「お、お、お初にお目にかかります……っ、メグアリク辺境伯が娘っ、アリスと申します……!」
「アリスちゃんね。そのワンピースとっても似合ってるわ」
「はひっ、あ、ありがとう、ございますぅ……!」
緊張でガッチガチである。プルプル震えるアリスが気の毒で、マリアはそっと助け舟を出した。
「こちら、《ネバーランド》の新作なのです。また今度レディースの新作もお持ちしますね!」
「楽しみにしてるわ! ゆっくりしていってね」
「はい! これお裾分けです!」
「まあ、ありがとう。それじゃあまた」
クッキーを受け取った王妃様はふわりと微笑んで、カツカツとヒールを鳴らしてその場を去っていった。その背中を見送っていたマリアたちに次の声がかかる。
「あれ? マリアじゃん!」
「ご機嫌麗しゅう国王陛下……ではなく伯父様」
「おう正解だ。悪ぃが今急いでんだ! 今日もよろしくなー!」
「伯父様せめてこれを!!」
スタスタとものすごい早足で歩き去っていく陛下に籠からクッキーを取り出して思いっきりぶん投げる。マリアの怪力で投擲されたそれは吸い込まれるように陛下のもとへ。
「公務の合間にでも召し上がってくださいー!」
「さんきゅーマリア!」
見事キャッチした陛下は笑顔で大きく手を振って、あっという間に見えなくなっていった。
「……お兄様、わたくしは今夢を見ているんですのね。たった今王妃様と国王陛下が目の前をお通りになりましたの」
「残念ながら夢ではないよアリス」
「あらそうなんですの。ではあの人が陛下にクッキーを投げたのが夢ですのね」
「それも現実なんだよアリス」
「……思考の放棄をしても?」
諦めたような溜息をつき遠い目をすアリスに、マリア以外の面々は同情の目を向けた。初対面のアリスがマリアの奇行についていけるとは思っていない。むしろ初日にここまで振り回されて哀れに思う。
哀れみの視線を向けられているとも気づかず、アリスは必死に今の状況を整理しようと頭をフル回転させていた。
*****
いつもの部屋につくと、三人の子供がマリアたちの到着を待ち構えていた、
「遅いぞおまえたち」
「ごめんごめん」
ふん、と鼻を鳴らすアランにルークが苦笑しながら言葉を返す。
その隣ではお義兄様が人懐こい笑顔で片手をあげていた。その先には穏やかに微笑むアル兄様がいる。
「よっ、アル!」
「やぁニコラス。マリアには勝てたかい?」
「いや、また負けた。罰ゲームに菓子作り手伝わされたぜ」
「お菓子!? ユリウス、今日のお菓子は何!?」
お菓子という言葉に反応したアレクが、ユリウスが持つかごを覗きに行った。ユリウスは被せていた布をとってアレクが見やすいようにしてあげている。
「今日はクッキーですよアレク。チョコレートとプレーンです」
「やった! ……ところでリア姉、その子は誰?」
目ざといなぁアレク。マリアは呆然とその場に立ち尽くすアリスの手を引いて、王子三人に見えるようにした。
「アリス=メグアリク、ルークの従妹だよ! 将来は私の妹!」
「マリア……おまえアレクだけじゃ飽き足らず妹まで……」
頭を抱えるアランを無視して、初めて見る自分と同じくらいの女の子に目をキラキラさせたアレクを手招く。
「アリスはあなたたちと同い年だから仲良くしてあげてね、アレク」
「うん! よろしくね、アリス!」
「アリス、この人たちは王族だけど、両陛下から許可はいただいてるから、フランクに接してね。……アリス?」
「……きゅう」
キャパオーバーを迎えたアリスはその場にばったりと倒れてしまった。
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