唸れ私の厨二病!
一回消して、めっちゃ追記したのでもう一度読むことをお勧めします!!
「そーかー……呪いのこと、アラン本人から聞いたのかぁ……」
スライディングで部屋に飛び込んできた陛下は散々三兄弟をこねくり回したあと、マリアとルークをどこかの部屋へと連行した。
「アルとアレクを治してあげたんだってね。偉かったね二人とも」
「どちらもユリウスが治したんですよ。褒めるならあの子を褒めてくださいお父様」
その部屋ではお父様も待機しており、マリアとルークはこの短時間で起こったことを説明させられた。そう、実は一連の出来事、まだ三時間も経っていないのだ。
そして、全てを説明し終えたところで国王が発したのが冒頭のセリフだった。
「あの、全部試したんですか? その……特殊な職業をつける儀式を」
「ああ、まあな。ルークみたいにすぐ調べられるわけじゃねーから、古代から最近までの文献を片っ端から集めて、産まれたばかりの頃から儀式をした。まずは賢者をやったよ。次は剣聖。他にも色々試したけどな……全部、ダメだった」
その言葉に付け足して、お父様も困ったような顔でため息をついた。
「そもそも特殊な職業は数多く発見されていないんだ。ステータスを鑑定できる人は少数で、受けるには多額の金が必要。貴族や大商人の子供くらいしか受けられないからね」
「ルークやユリウスを殺さなかったのは俺らの倫理に反するからだ。俺は王として、人として、国の宝を殺したくない」
「陛下……」
真剣な目は、色は違えどアランと同じ光を宿していた。
「ま、おまえらには将来城で働いてもらうけどな!」
「「…………は?」」
「マリアもルークもユリウスもニコラスも! 全員怖いくらいに優秀だ! おまけにうちの王太子候補どもと歳が近い。拒否権はねーぜ!」
優秀な人材は早めに囲っとくのが大事だよなー、と満足気に頷く国王を、マリアは半目で見つめた。台無しである。
「ははは、兄さん。無理強いは良くないよ」
「んだよー、オーウェンは賛成じゃねーのか?」
「うーん。僕はそれよりもね……?」
にっこおおおお、と満面の笑みを浮かべたお父様が、ヘラヘラと笑う国王に掴みかかった。
「子供たちを隔離した理由について、詳しく教えてほしいかな?」
「ヒェ……」
笑顔の圧とはどうしてこうも怖いのか。
普段温厚な人が怒る時って大概笑顔だけど、めっちゃ怖い。お父様もルークも超怖い。ていうか兄とはいえ国王陛下を叱りつけるお父様強い。
そんな光景を見ていたマリアの頭に、突然ピンッとアイデアが浮かんだ。ルークにこっそりと確認してもらったら、〈賢者の書〉でも検索エラー。該当するものは存在しない。
そうだ、“ この世界にない職業 ”なら、誰かが持っているなんてことは無い。
口角が自然と上がる。悪戯っ子の笑みを浮かべるマリアを見て、ルークは愛おしげに破顔した。
「陛下、儀式には何が必要ですか?」
「え? えっと、一番大事なのはその職を象徴するものだな。魔術師なら杖とか、剣士なら剣とか」
お父様に叱られ縮こまっていた国王がマリアの声に答えを返す。
「わかりました。他には何かありますか?」
「膨大な魔力以外の材料なら城にあるけど」
「じゃあ用意しておいてください」
「は?」
戸惑う国王と父親にマリアは麗しい笑みで言い切った。
「私たちが、アランの職業を創ります!」
*****
ガリガリとペンを走らせる音が響く。周囲には積み重なった大量の鉄塊と様々なモンスターの素材。その中心で一心不乱に錬金を重ねるルークと、研究結果を記録し続けていたユリウスが同時に息を吐いた。
「さすがに疲れたね……少し休憩しようか」
「そうですね……姉上、一旦作業をやめてください」
「えっ? あ、あれ? どのくらい集中してた?」
「もう二時間になるぜー。おまえらワーカホリックかよ。そのうち死んじまうぞ?」
「うーん……確かに肩凝ったかも。それじゃあお茶にしましょうか」
「お嬢様、皆さん、準備できてますよ〜! ジャッジさんのジンジャークッキーです。紅茶はアールグレイにしてみました!」
マリアの専属メイド、ララちゃんが持ってきてくれたクッキーは、マリアが料理長であるジャッジに教えたものだ。ちなみに手作りクッキーマン型である。
「ありがとうララちゃん。いい香り〜」
「うん、クッキーもおいしい」
温かい紅茶をひとくち飲んでほっと息をつく。
「やっぱ付与って難しいね〜。慣れてないと疲れちゃって……」
「魔力は大丈夫だけど精神負荷が高いよね。気を抜くと魔力が飛び散っちゃうから」
「でもそろそろ結果が集まってきたので、最初の頃より大分進んだと思います」
「アレ、一気に持つと結構重いぞ。筋トレになる」
「幼少期から筋肉つけると背が伸びないって言いますよ、お義兄様」
「マジか」
「マジです」
糖分を欲する脳にクッキーの甘さを染み込ませながらそんな会話を展開していく。マリアたちの背後には大量の鉄塊が積み重なっていた。
直線を描く峰、シンプルな丸い鍔、そして冷たく光る細身の刃。
そう、マリアたちが生み出していたのはかつて日本男性の力の象徴であった“ 刀 ”である。
マリアがデザインした刀をルークが錬金し、それに二人で様々な効果を付与していくという流れをここ三日ほど続けていた。それをニコラスが使い、ユリウスが記録することでハイスピードで膨大な研究をすることが可能となった。多分そこらの研究会に出せばあっという間に出資者がつくだろう。
「ユリウス、まとめたの見せて」
「はい、姉上」
クッキーを頬張るユリウスから渡されたレポートに目を通す。
「その刀っつーの? めちゃくちゃ攻撃しにくいな。普通の剣と打ち合うと力負けしそうだ」
「やっぱりそうですよね……クレイモアやサーベルと比べて細身だし、片刃なので剣に慣れた人は扱いにくいと思います」
「そうだね……王族は前線で戦う事が少ないから攻撃は最低限でいいかもしれない」
「えっと、アル兄様が音を使った支援魔法でアレクが従魔師だったよね? 被らないようにしなきゃなー」
あの後帰りの挨拶で三兄弟のもとに行った時、アレクがマリアのことを「リア姉!」と呼んだことから、強制的にアル兄様と呼ばされることとなった。ルークやユリウスは難なく躱したものの、アレクはニコラスのことをニコ兄と呼ぶことを厳命されていた。まったくもって偶然の産物だが、あらぬ所から矢が飛んできそうである。
「アラン様は特に魔力が低い訳では無いようです。平均よりは多いですが、如何せん職業がないので上手く使えないとの報告が」
「うーん……刀、刀かぁ……」
前世で刀といえば人斬り死神擬人化だ。あんまり動かないで、かつ攻撃をいなせるような防御……
「……!」
そこまで考えて、マリアは勢いよくテーブルを叩いた。
*****
「おい、何なんだ。突然押しかけて王子の俺を縛り上げるなんてどういう了見だ」
城にある一室で、アランは椅子に縛り付けられ中心に置かれていた。その前には巫女服を纏ったマリアがおり、魔法陣を描きながらその質問に答えた。
「だってこうでもしないと暴れるじゃん」
「ちゃんと説明されれば逃げん」
「めんどくさい」
「嘘だろ!? というかなんで誰も止めないんだ、俺がおかしいのか!?」
「もー、落ち着いてよ。両陛下の許可は取ってるから安心していいんだよ?」
「そういう問題じゃないだろ!?」
「んんー、じゃ、ヒントね」
我儘な子供を宥めるように、マリアは自分の唇に手を当てて小首を傾げた。
「アランに職業をあげるため」
「…………は……?」
「始めるよ」
神官の祭服に身を包んだルークが、カツンと錫杖を鳴らした。次の瞬間、マリアが描いていた魔法陣が金色に輝いた。
「なっ……!?」
驚きの声を上げるアランを無視して、ルークが唱える。
「『色を持たない少年よ。今、その身に色を宿らせよ。我、ルークが導く。汝に』……」
シャン……とマリアの神楽鈴が鳴る。
「『魔刀士の祝福を』」
魔法陣が収縮し、弾ける。ロープが解け、マリアが掲げていた一本の刀が呆然とするアランの手元へと舞い降りた。
すぐさまマリアがステータスを表示する。扉のそばで見ていた王妃様の瞳から、ひとすじの涙が流れ落ちた。アランのステータスに表示される、その三文字。
「あ、あ……っ、あああああ!」
ボロボロと涙を零して泣き崩れる王妃様を支えた陛下が、心底ホッとした様子で微笑んだ。
「マリア、ルーク……ありがとう。おまえたちのおかげだ。本当に、ありがとう……ッ!」
そう言って、少し目頭を抑えた国王は未だ泣きじゃくる王妃様を連れて部屋を出ていった。
室内には子供だけが残される。
「ルーク、大丈夫?」
「うん。でもこれ、結構魔力使うなぁ……今までで一番使ったかも」
「すごい軽く言ってますけど、この魔法、神殿でも一部の人しか使えない高位魔法ですよ。数人でやったって一回やれば一週間は寝込むレベルの」
「マリアのお菓子食べればすぐ回復すると思うよ」
「それはその程度しか魔力が減らないおまえにつっこめばいいのか? マリアの菓子につっこめばいいのか?」
そんな会話をしていると、ずっと固まっていたアランが不安げな声を上げた。
「ど、どういう……ことなんだ? いったいなにが……」
状況理解の追いつかないアランにマリアたちはゆっくりと説明していった。
「今、私たちが作った剣……刀って言うんだけど、それを媒体にしてアランに魔刀士って職業をあげたんだよ。その刀、ミスリルだから。ゆっくり魔力通してみて」
ミスリルとは魔力を通す珍しい金属である。これもマリアの〈ケース〉にインゴットで入っていたやつで、在庫過多で市場におろせないのなら使ってしまえ、ミスリル銀。というわけだ。
「み、ミスリル?」
「いいから早く。刀抜いて」
「あ、ああ」
理解の追いつかないまま、アランはマリアの指示に従って抜刀し、持ち手に魔力を込める。
すると、アランの瞳と同じ水色のドームが出現した。
「はっ? な、なんだこれ」
「そのまま魔力込めててね」
笑顔でそう言い放ったマリアが右手を前に突き出す。魔力を集め、水色のドームに五つの火球を打ち込んだ。
「うわっ!? …………って、え?」
アランが目を瞬かせる。それはそうだ。
今マリアが打った火球は全て、ドームに当たった瞬間消えたのだから。
「どうなって……」
「私の魔力を吸収したのよ」
「そのドームに当たった魔法はほとんど全部無効化されるんだ。魔力はドームに吸収されてバリアを強化するし、そのドーム内なら任意で魔力が供給される。物理攻撃も余程力押しされなければ通らない」
ルークの説明にアランの瞳がどんどん見開かれていく。
「どう? お気に召したかしら」
「な、なんで……」
その言葉に、マリアは不敵に笑う。
「だってあなたが言ったんじゃない。『守られるんじゃなくて、守りたい』んでしょ?」
波のように煌めく丸いドームが溶け切るように霧散した。
*****
そんなすったもんだがあった、一ヶ月後。マリアたちはアランたっての希望で、戦闘訓練に励んでいた。
「おいマリア! 何回壊せば気が済むんだ!」
「アランのキャパが小さいのよ! 私の魔力くらい耐えなさいよ!」
「量が多過ぎるんだ! それとニコラス! 一箇所を集中攻撃するな割れる!」
「まだ身体強化してねぇぞ! 耐えろ!!」
「アラン!ドームが小さくなってる!」
「くっそ……! 何なんだおまえら兄妹は! ああもう、『蝉時雨』!」
カカカッと何本もの小刀がドームの端へと刺さり、その収縮にブレーキをかける。
「割るぞ!」
「っ、『花吹雪』!」
お義兄様の声と同時に響く、パリンと何かが欠ける音。それに次いだアランの声にどこからか現れた大量の花びらがドーム内に舞い散り、アランの姿を視覚で捉えられなくなる。
「そこだぁ!」
「うわ!」
キィン! と金属の打ち合う音がする。どうやら野生の勘で生きるお義兄様に目眩しは通用しなかったらしい。改良の余地を考えながら、マリアはひと足早くドームを出た。すぐに穴が修正されないところを見ると、そろそろ決着がつきそうだ。
サービスでドームを直していると、笑顔のルークがやってきた。
「お疲れさま」
「ルーク! 勉強は終わったの?」
ルークはその頭の良さから、勉強が苦手なアレクのなんちゃって家庭教師をしている。アレクに縋られたユリウスが巻き込まれ、一対二の勉強をしていたはずなのだが。
「うん、アレクが限界でさっき休憩に入ったとこ。そっちは?」
「ひとまず『蝉時雨』と『花吹雪』は使えるみたい。詠唱は必要だけど燃費もよさそう。ただ問題点を上げるなら……」
「ぐっ!」
「まだまだだな」
「……本人の戦闘能力、かな」
声のした方を見ると、ニコラスに剣を突きつけられたアランが膝をつき、その側には弾き飛ばされたらしい刀が地面に突き刺さっていた。魔力の供給元を失ったドームはどんどん小さくなり、シャボン玉が弾けるように消える。
「やっぱり打ち合いには負けるか……」
「元々防御特化したものだからねー……バリエーション増やす?」
「マリアが平気ならやってみよっか。アラン、刀貸して」
「何するんだ?」
「攻撃魔法を仕込むよ。とりあえず火と氷、風かな」
〈ケース〉から取り出した赤と緑の魔石を並べて、刀に魔力を込める。これは古代魔法剣士の魔法の使い方らしく、賢者の書が割り出してくれた方法だ。相変わらず優秀なことこの上ない。
「妖の灯よ、獣の炎よ、呼応せよ。燃え上がれ、『狐火』!」
マリアが唱えると、刀の周りに炎が渦巻き刀に吸い込まれるように消えていく。持ち手についた水晶が赤く光った。
「次行くよ! 冷徹なる戦の主よ、全てを凍てつかせよ。凍り咲け、『冬将軍』!」
周囲の気温がぐっと下がり、水晶が微かに白くなった。
「うっおさっみぃ!! ちょ、ルーク!」
「はいはい……」
ルークの灯した火で暖を取る兄を横目に、マリアは最後の術を仕込むため、魔力を溜め始めた。
これにて三章はおしまいです!それに伴いタイトルを一部変更いたしました。来週には新章が始まります!
まだまだ続くマリアたちの物語、最後まで見届けていただけたら幸いです!




