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絞首台はすぐそこに

本日二話目です!

「騙された。私はなんて馬鹿だったの」

「あ、姉上落ち着いて……」

「最初に気づくべきだったんだわ。行き先も告げずに馬車に乗せられた時点でおかしいと思わなくちゃいけなかったのよ。そもそも、お母様はいないのにルークもユリウスもお義兄様も一緒にお出かけって……どうして察せなかった。私って、ほんと馬鹿」

「おい、いつまで沈んでんだよ。いい加減腹くくれ」

「そうだよマリア。僕らくらいしか適合者がいなかったんだから、仕方ないよ」

「だって、ルーク! だって……っ!」



「王子様の遊び相手とか、聞いてない!!」



  王都の中央にそびえ立つ城の一室に、マリアの叫び声が轟いた。


 ***


  時は一時間前に遡る。父であるオーウェンの指示で、マリア、ルーク、ユリウス、ニコラスの四人はオーウェンと共に馬車に揺られていた。


「お父様、どこ行くんですか?」

「んー、着いてからのお楽しみ、かな」

「あの……父上。暗幕が貼られていて、外の様子が見えないんですが……」

「うん、そうだねー」

「父さん、ルークがめちゃくちゃ馬車酔いしてんだけど……」

「みんなに任せたよ」

「ルーク大丈夫? ほら、ミントキャンディ持ってきてあるから……」

「ボタン開けるぞ。そのままだと苦しいだろ」

「回復魔法かけますよ。ゆっくり息を吸ってー……」

「うぅ……ごめん……」


  ぐったりとマリアの膝に頭を載せ、顔を青くするルークを三人で介抱する。何でもできるスーパーチート賢者様は、どうやら三半規管が弱いらしい。馬車に乗って五分も経っていないうちに気持ち悪そうにし始め、慌てて〈診断書〉を表示したら案の定馬車酔い。治癒しても治癒しても五分後には酔うのでその度に回復をさせている。


「あ、馬車止まったかな?」

「着いたみたいだな」


  御者に扉を開けてもらい、ルークを支えながらゆっくりと降りる。そこで視線を上げたマリアたちはピシリと石のように固まった。


「な、な、な……っ!?」

「お、お……王城じゃねーかっ!?」


  引きつった顔のニコラスが叫ぶ。

  それも当然、マリアたちの目前にかまえるのは、この国の中枢である王城だったのだから。


「お、おおおお父様!? これはどういうことなのですか!?」

「えー。だって、マリアってば王子たちと関わるの嫌がるだろう? でも兄上にどうしても連れてこいって頼まれてしまってね? もうこれは黙って連れていくしかないな、と……」


  絶句である。呆然と立ち尽くしているうちに、ニコラスに引きずられ城の中へと足を踏み入れてしまう。暴れようとすれば、途端に四肢が動かなくなった。見えないロープで縛られているような感覚に、マリアは涙目で隣にいる少年を見た。


「……ルーク?」

「ごめんねマリア。さすがにここで暴れられたら反逆者認定されかねないから」

「俺が担いでってやるから大人しくしてろよ」


  身体強化を使ったニコラスに担がれ、マリアは為す術も運ばれる。

  周りからの視線が痛い。公爵令嬢が兄に担がれて登城ってどうなのよ。ていうかお義兄様、切り替えめっちゃ早いな。


  そうこうしているあいだに、辿りついたのは王の間だった。拘束魔法をかけられたまま、その場に落とすようにして下ろされる。文句を言おうと口を開けば、今度は口まで塞がれた。


「よくぞ参った、我が弟とその子らよ」


  威厳のある声が響いた。ばっと顔をあげれば、王座に青みがかった銀髪と、薄い赤目の男性が座っていた。椅子に手を置き、満足そうに腰をかけている姿はこれぞ王様! という雰囲気だ。


「その方達は下がれ。我が呼ぶまでここには来るな」

「はっ!」


  側近と思われる男性の声を皮切りに、あっという間にその場から従者の人達はいなくなる。十秒後の王の間は王様とマリア達のみとなった。


「やっほー、久々だなオーウェン!」


  威厳も欠けらも無い、フランクな口調で喋り出した王様に、マリアはぽかんと口を開けた。


「久しぶり、兄上」

「おまえ全ッ然城に来てくれねーからさぁ、退屈ったらねーぜ?」

「ごめんって。ニコラスの実家のこととかで忙しかったんだよ」

「つれねーの! まあいいや、初めましてだな、おまえら。知ってると思うがこの国の国王、アガディアス=エディダ=カラトリックだ!あ、そこのかぼちゃカラーがニコラスだな?よかったなぁ、ガリガリの骨みたいなのから脱却できて」

「えっ、えっ!?」

「で、そこで縛られてんのがレグリオン一家暗殺事件を解決したっていうおまえの娘だな?」


  すっと目が細められ、品定めするような視線を感じた。咄嗟に軽く威圧を放つと、細められた目が大きく開かれる。それからにやぁ、と悪戯っ子のような笑みを浮かべた王が、玉座から下りてきてお父様の背中をバシバシと叩いた。


「おっまえ、すげーの産んだな! こいつは大物になるぜ!」

「僕は産んでないよ」


  ケラケラと笑う王様にドン引きが隠せない。目尻に浮かんだ涙を拭った王は、マリアの後ろに隠れていたユリウスを見咎めた。


「おまえがユリウスだな! ちっせー頃のオーウェンそっくりだ!」


  そういってワシワシとユリウスの頭を撫でると、今度はマリアの隣に立っていたルークへと視線を向けた。


「んで、おまえがルークか。まだガキなのに賢者の書を手に入れてるんだってな! 優秀なガキは大歓迎だぜ! よろしくなー!」

「は、はあ……光栄です、陛下」


  引きつった笑みを浮かべたルークの頭を乱雑に撫で王はにっと笑って言った。


「これならうちのひきこもりたちを任せられるなっ!」



「………はい?」




  そして、冒頭に戻る。


「うう、嫌だぁ、王子の相手なんて……責任重大だよ!」

「うんうん、そうだね。でも僕も一緒だよ?」

「そうだぞ。俺とユリウスなんか一対一だぜ?ルークがいるだけ気が楽だろうが」

「そうですよ姉上。今日は顔合わせだけなんですから行きましょう? ね?」


  マリアを宥めすかしながら、おのおの落ち着かない様子で待機する。なんでも、ニコラスを第一王子に、ユリウスを第三王子に、そしてマリアとルークを第二王子に会わせたいそうだ。ひきこもりのリハビリ感がすごいよ……

  温かな紅茶を飲みながら、マリアは頭の中の情報を整理を始めた。


  この国の王子は三人。

  まずは第一王子、アルヴァンス=エディダ=カラトリック。マリアの一歳年上でニコラスと同い年。

  ゲームではマリアの婚約者で、穏やかなお兄さんキャラ。音楽が好きでディズニープリンセスよろしく鳥と歌っていたヒロインと仲良くなる。

  が、王太子の婚約者である悪役令嬢マリアの台頭だ。ヒロインを虐め、人間とは思えない所業を積み重ねた結果断罪されて死ぬのである。

  ちなみにおっとりマイペースなアルヴァンスは、前世のマリアの好みではない。ルート制覇によるスチル解放のためだけにクリアしたようなものなので、アルヴァンスの婚約者になる気はさらさらなかった。ていうか彼の闇も覚えてないわ……なんだっけ。


「失礼致します。ニコラス様、ご用意ができましたので、どうぞこちらへ」

「は、はい」


  お義兄様が呼ばれてしまった。「頑張れよ」と言い残して去っていくお義兄様をすがる思いで見つめる。


「ユリウス様もこちらへ。ご案内いたします」

「はい……」


  ユリウスまで呼ばれてしまい、扉が静かにパタンと閉じた。


  ユリウスが会うのは第三王子、アレクセイ=エディダ=カラトリック。一つ下でユリウスと同い年。末っ子らしい甘え上手な性格で、お姉様から幼女までありとあらゆる女性達を虜にするプレイボーイだ。

  このキャラは他の攻略対象の好感度がある程度上がってから登場する。人気者である自分に靡かなかったヒロインに興味を持ちどうにか手に入れようとするも、本命に対する不器用なツンデレが発生。鈍感主人公とどんどんすれ違い始めるので好きにさせるのは簡単なのに両想いになるのが大変面倒なキャラである。彼の闇も幼少期が原因としか知らない。

  ちなみにエンディングのマリアは、自身の取り巻きでアレクセイのファンの令嬢が過激ないじめをしたため、その責任を押し付けられて処刑death。



  自分たちはいつ呼ばれてしまうのかと、マリアは隣で手を握るルークに頭を預けた。


「はあ……まるで死刑宣告を待つ囚人の気分だわ」

「大袈裟だなぁ……マリアはどうしてそんなに王子と会うのが嫌なの?」

「どうしてって……」


  死亡フラグになるからです! とは言えない。

  誤魔化すつもりで握られた手を遊んでいれば、ルークが次の言葉を放つ前に扉がノックされた。


「マリア様、ルーク様。準備が整いましたので、ご案内いたします」

「わかりました。マリア、行こう」

「うん……」


  ゆっくりと席を立ち、ルークと共に部屋を出る。


  マリアたちが会うのは第二王子、アランジール=エディダ=カラトリック。マリアたちと同い年。

  彼は生活魔法以外の魔法が使えず、剣も剣士の職を持つ者よりは劣るが、とても頭がいい。特に戦術などの政に関することが得意で、どのルートでもその手腕を発揮していた。

  そんな彼のコンプレックスは、特別な力を持つ兄や弟と比べられること。城にいても聞こえてくる、自分を無能と呼ぶ声に完全に自信を喪失したところからスタートだ。外面はクールで俺様だが、中身は自己肯定感がマイナスに振り切られネガティブ思考の泣き虫で、ヒロインはアランジールに自信を持たせ、兄弟との確執を解消しないといけない。マリアはアランジールの策略で市井に放り出され、盗賊に襲われて死ぬ。安定のデッドエンド。



  逃げることは許されない状況に、マリアは深いため息を吐きながら、ルークに引かれるようにそのあとをついて行った。

 

 

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@sabineko_280


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