悪役令嬢、パーティーの準備をする
今日は3回投稿しようと思っています。
「パーティー……ですか?」
「ああ。長く床に臥せっていたマリアが回復したから、その報告会のようなものだ。他の貴族達に元気な姿を見せる必要があるんだ」
「はぁ……」
父の言うことがわからなくは無いが、正直パーティーって面倒くさい。かと言って断る術がある訳もなく、大人しくキラキラした笑顔でドレスを選ぶお母様たちに従う。
「こちらはいかがでしょう?」
「まぁ可愛い! 黄色もいいわね!」
「奥様、こちらの赤も素敵です」
「そっちもいいわ! マリアちゃん、着てきて!」
商人とお母様、ララちゃんに囲まれて、数時間ほどこの調子だ。既に数十着もの試着を終えている。自分で作ってもよかったのだが、生憎と材料も道具も時間もない。今回は潔く諦め、彼女たちの着せ替え人形と化していた。
鏡に映る自分を眺めれば、お母様譲りとひと目でわかる白金色のふわふわロングが照明に反射してキラキラと輝き、お父様譲りの深紅の瞳が煌めく。
この容姿、どんなドレスも似合うから選ぶのに時間がかかって仕方ない。さすがに疲れてきたのでさっさと決めてほしい所存である。
「いつ終わるのかしら……ん?」
いくつもあるドレスたちの隅っこに、ちらりと見える青色。そっと広げてみると、深海のようなブルーのドレスだった。濃いめのシースルーの袖にクラゲのように膨らむパニエたっぷりのスカート。全体に散りばめられたパールがアクセントになり、魚のヒレのように揺れるリボンが腰を飾る。月をモデルにした髪飾りとエナメル質の靴が全体を可愛さとエレガントさのバランスを取っている。
「お母様……私、これがいいです」
「あら、どれかしら? ……まぁまぁまぁ! とっても素敵ね! さすが私の娘、見る目があるわ! さぁ着て見せてちょうだいな。髪型もセットしましょう。ララ、お願い」
「はい、奥様」
そのまま試着室に放られ、あれよあれよという間にドレスを着せられ髪を整えられる。髪を梳きながらララちゃんが言った。
「このドレス、本当に素敵ですね。お嬢様の髪や瞳の色ととても合っています」
「本当? それなら嬉しいわ。私、この青がとても好きなの」
「そうなんですか? 初めて知りました……今まではショッキングピンクを好んで着ていらしたので」
「ショッキングピンクはもう着ないわ! あの派手さは私に合わないもの。もっと静かで穏やかな色が好きになったの。緑や紫も好きだけど、その中でもこの青が一番好きなのよ」
そう。全てを包み込むような深い深い海のような青が好きなのだ。
フロスピで最推しだった彼の瞳の色が……
「できました」
それこそ思考の海に落ちそうになったところで、ララちゃんから声がかけられる。ハッとして鏡に映る自分を見た。
長い髪の毛はハーフアップになっており、ドレスと同色のリボンが編み込まれている。ブルームーンのマジェステが白金色を飾っていた。マジェステに付いた二つの鈴がチリンと鳴る。
ララちゃんは満足そうに頷き、私を促してお母様の元へと連れていった。
「奥様、完成です」
「あらあらまあまあ! 可愛いわマリアちゃん! これなら婚約者も殺到しちゃうわね!」
「えっ、婚約者?」
抱きつき癖のあるお母様に抱きしめられながら、聞こえた言葉に疑問を返す。
婚約者ってなんだ、いつそんな話になったんだ。
「今回のパーティーはマリアちゃんの快気祝いって名目だけど、あなたの婚約者を決めるためのパーティーって言っても過言じゃないわ。公爵家の一人娘なんて、6歳になればたくさんの申し出が来るんですもの。だったら先に決めちゃった方が楽でいいわぁ」
私の時も大変だったのよ。と言ってため息をつくお母様。確かにお母様美人だもんね。でも今私の婚約者を決めるのは二人が面倒くさいからだよね、絶対。既に楽だとか言っちゃってるしね。
「マリアちゃんは誰を選んでもいいのよ。私達も恋愛結婚ですもの。嫁いでもお婿さんを貰っても結婚しなくても、好きにしていいの。私はあなたの選択を信じるわ」
ふわりと微笑むお母様はとても可愛い。見た目も若くて行動的でテンションが高くて、前世で言えば元気な女子高生みたいな人だ。けど、今みたいに穏やかに微笑むことがある。こんなとき、この人はちゃんと大人なんだなと認識する。
安心感と包容力に溢れた笑みをたたえたまま、お母様は私の手を引いた。
「さっ、せっかくだからお父様にも見せに行きましょう! 可愛い娘のお披露目会ですもの。今頃癒しを欲しているはずよ。元気づけてあげましょ!」
「きゃ! お母様!?」
「あわわわわ……!」
私と手を繋いだまま突然駆け出すお母様。引きずられないよう慌てて足を動かす私。それを、パニックになったララちゃんが慣れない様子で必死に追いかける。
「は、速い…!」
大人? 前言撤回である。
この人本当に公爵夫人か!? 実は冒険者とかやってたんじゃないの!?
「奥様!? 廊下は走らないでくださいませ!!」
ドレスの裾をたくし上げながら私を引っ張って猛スピードで走るお母様にメイド長からのお叱りが飛ぶが、お母様は勢いを落とすことなく、むしろ加速し、結局一分後、お父様の執務室には息ひとつ乱さない私達親子とフラフラになったララちゃんがなだれ込むこととなった。
前回初めて活動報告にコメントをいただきました。本当に、本当に嬉しかったです。頑張って書き続けたいと思います。よろしくお願いします。




