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悪役令嬢は死にたくない。〜目指せ、完全無欠のハッピーエンド〜  作者: さびねこ。
第二章 悪役令嬢マリア(6)
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父とは時に未来を見ている

来週は日曜日に2話投稿しますー!

「はは……こいつぁ見事な切り口だなぁおい。ケルベロスって言やぁS級魔物の代名詞だぞ? ベテランBランクパーティでも運頼りの討伐を、いくらレグリオンの血筋だからってこんなガキが……」

「あっ、俺じゃないっすよ、それ」

「は?」

「それやったのはマリアっす。俺は何も出来なかったんで」

「…………はぁ!?」


  ギースの首がぐるりと回り、ユリウスから派遣されたシラタマと『隣人』のブランコで遊ぶマリアを捉えた。


「あんな子どもが、こんなデカい獲物を一閃でやったのか!?」

「正確に言えば三手っすね」


  遠い目をしたニコラスが詳細を説明していくと、ギルドマスターの顔がどんどん青くなっていった。それから苦笑を浮かべるオーウェンに詰め寄り、その胸ぐらを掴む。


「おいオーウェン! 自分のガキになんて教育してんだ! 一人でS級討伐ってAランク冒険者でも危ねぇんだぞ!!」

「それなんだけどね、僕、一度もマリアに剣を教えてないんだよ」


  えへ、と笑うオーウェンに、ギースは自分の耳と目を疑った。

  かつて騎士団の新人戦に紛れ込み、優勝したという逸話のあるオーウェンが教えたのなら分かる。それなのに、教えてないだと?


「んじゃあ魔法はどうなんだ! あの小娘か!?」

「フィーリアも教えてない」

「じゃあなんだ!? レグリオンのガキが教えたって言うのか!」

「いや、俺じゃマリアに敵わないっすよ。ケルベロスが現れた時、手も足も出ず終わりました」

「じゃああのガキはどこでこんな技術手に入れたってんだ!」

「「さあ……」」

「さあってなんだおい!」


  自分の娘・義妹のことなのに、この無関心さ。

  首を傾げる二人に愕然としていると、シラタマを抱えたマリアがててて、と傍に近寄ってきた。


「何話してるんですか?」

「んー? マリアはすごいねーって話だよ〜」

「お義兄様も?」

「まぁな! それよりマリア、帰ったら俺の修行に付き合えよ。おまえに負けねーくらい強くなってやっから!」

「ホントですか! やったぁ!」


  父と義兄に撫でられ喜ぶ姿は見た目通りだが、その内容はおよそ子供の……兄妹のものとは思えない。


「ほかの二人も誘ってあげてね。置いてかれたとき、すごい拗ねてたんだよ」

「あいつらマリア大好きだからなー」

「えへへ、照れちゃいます〜」

「……おい、査定終わったぞ」


  ほのぼのした空気に耐えられなくなり、深いため息を吐きながらオーウェンの肩を叩いた。


 *****


「それで、どのくらいの価値になるんだい?」

「低く見積もっても100万カロ……オークションにかければもっといだろうな」

「100万!?」


  高額買取に驚いて、マリアは思わず聞き返した。


  この世界の通貨、1カロは日本円の一円であり、価値はほぼ同等である。それで100万。魔物のレートどうなってんの。


「言っとくが、ケルベロスだけで100万だ。こんな良い状態のケルベロス、150万でも安いんだからな。ほかの魔獣を含めれば200万は堅い」

「200万……」


  予想以上の額になってしまった。ちらりとお父様の顔を見れば、いいことを思いついた、と言うようににんまりと口角が上がっている。


「ねぇギース。この魔物、ギルドで買い取りたいんじゃない?」

「あ? ……ああ、正直言うとな」

「え、どうしてですか?」

「ギルドはね、冒険者とあらゆる業者の仲介役を…請け負ってるんだよ。いわゆる卸売業かな。冒険者から魔物を買い取って、市場に降ろしたりオークショニアに売ったり、その他諸々に売り出すんだよ。その差額がギルドの収入になるんだ」


  お父様に次いで、ギルドマスターも説明をしてくれる。


「粗悪、並、上、特上で上位に行くほどギルドに入る金は上がる。だが持ち込まれるのはほとんどは粗悪か並、稀に上が入るくらいで、特上はレア中のレアだ。ほとんどは王都の方に流れちまうからな。こいつらの状態は全部上か特上だからギルドとしては買い取りたいんだよ」


  なるほど、確かに地方のギルドに特上を狩れるような冒険者は少ないだろうし、粗悪まで買い取ってたら赤字にだってなる。そりゃあ特上買いたくなるよね。


「それで、ギースに提案なんだけど」

「んだよ、ろくなもんじゃねーなら却下だぞ」

「これ全部、200万カロで君のところに売ろう」

「……いいのか」

「けどその代わり、この子たちの訓練に付き合ってやってほしい」

「はあ!?」


  ギルドマスターが声を上げるが、お父様は話を続ける。


「僕やフィーリアも積極的に鍛えていくつもりだけど、やっぱり仕事もあるからさ。身内以外の保護者が欲しいんだ」

「正気か!? こんなガキ二人面倒見れるか!」

「この子達だけじゃないよ! しっかり者の二人が一緒だから! 出ておいで、ルーク、ユリウス」


  お父様が手招きをすると、壁の向こうから二人がこちらを伺うように出てきた。ユリウスの姿を見つけたシラタマがマリアの腕から抜け出し、ぴょんぴょんと走っていく。


「すみません、マリアが心配だったので……」


  ルークがぺこりと頭を下げ、シラタマを抱えあげたユリウスもそれに習った。


「こいつらは」

「息子のユリウスと、マリアの婚約者のルークだよ」

「つーことはこいつらも貴族か……ちょっと待て、おまえまさか、こいつらの面倒を見ろって言うのか? 俺に?」

「そのまさかだよ?」


  心底不思議そうに首を傾げるお父様に、ギルドマスターが掴みかかった。


「アホか!? お貴族様のガキの面倒なんぞ見れるか! おまえギルドマスターの職務ナメてんのか!? んな暇あるわけねぇだろぉが!」

「やだなぁ、サブギルマスに経理ほっぽってるの知ってるんだよ? そのぶん空き時間があることも」

「ぐっ」


  仕事サボってるのかこの人……

  私たちの視線に気づいたギルドマスターが、盛大にため息を吐きながらお父様の胸ぐらから手を離した。


「わぁったよ……やりゃいんだろ! ただし、騎士みてぇな技術は教えらんねぇぞ」

「それは僕が教えるさ。君にはパーティ連携とか、冒険者に必要なことを教えて欲しいんだ」

「はあ? おまえ、こいつらを冒険者にする気か?」

「この子たちは好奇心が強いからね。僕が何もしなくったって、いずれ冒険者活動し始める。事前に分かってるんだから知識も技術も叩き込んでおけば心配いらないだろ?」


  さすがお父様、よく分かってらっしゃる。確かに私は異世界といえば冒険だと思ってるし、いずれはしてみたいな〜とか思ってたけど、ここまで見透かされてるとは……いつか転生者ってこともバレそう。


「というわけだから、この子たちの訓練頼んだよ!」


  とてもいい笑顔を浮かべ、お父様がサムズアップを決めました。あ、ウインクから星が飛んだ。


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