はじめてのもふもふ
本日2話目です!
「二人とも、そこに座ってくれる?」
「「ハイ……」」
はい、正座してるのは誰でしょーか!
「あのね? マリアが暴走した結果っていうのは僕も納得できるよ? でもさぁ、その暴走を止めるのが君たちの役目なんじゃないの? ねぇ? 義兄上と契約妖精さん?」
「「はい……仰る通りです……」」
ピンポーン! お義兄様とリンです!
……なんでクイズやってるかって? 現実逃避してるからだよ。
怒ったルーク、超怖い。ルークが椅子に座って床にお義兄様とリンが正座させられてるんだけど、本っ当に怖い。顔は凄くにこやかなのに、後ろに般若背負ってる。絶対6歳じゃないよこの子。小さくなっちゃった名探偵もビックリだよ。
「特にニコラス? 君、僕に約束したよね?マリアを守るって言ったよね? うん、言った。確かにマリアには怪我一つないよ? まぁあっても治しちゃうんだろうけど。でもさぁ、雷だよ? 雷、わかる?ここまで雷鳴が聞こえてくるレベルの。地面が揺れた時の僕とユリウスの気持ち、わかる?」
「はい……すみませんでした……」
名前の出たユリウスは、今私の胴にしがみついている。
〈テレポート〉で別荘に戻った私はすぐにユリウスから治癒魔法をかけられ、一緒に戻ったお義兄様とリンはルークに捕まった。
「あねうえぇ」
「心配かけてごめんね、ユリウス」
大人びた喋り方をするものの、やっぱりまだ五歳の子供。随分心配をかけてしまったようで、私に怪我がないことを確認したユリウスはへなへなとへたりこみ、赤ちゃん返りのようにわんわんと泣き出してしまったのだ。
今はソファーに座り、ぐすぐすと鼻を鳴らすユリウスの頭を撫でながら、ルークに叱られる二人をぼんやりと眺めていた。
「ん? なにこれ……」
ユリウスの頭の上に、白い玉がふよふよと浮かんでいた。まるでぐずるユリウスを慰めるようにくるくる飛び回る白球に、マリアはハッとしてリンを呼んだ。
「リン! ちょっと来て!」
「マリア待って、今は説教中だから」
「リンみたいな子がいるのっ!」
ルークの声を遮って言うと、リンが躊躇いがちにこちらへと飛んできた。それからユリウスの頭上を見ると、「ああ」と呟いた。
「ついてきちゃったんだね。ユリウスも〈妖精の愛し子〉って前に言ったでしょ? 契約したいんだよ」
「あれ? でもリンって契約する前から喋ってなかった?」
「僕は特別なの!」
「あ、そう」
「冷たいっ!」
本当なのにぃ〜! と地団駄を踏むリンを放置し、腰にしがみついたままのユリウスを揺らす。
「ユリウス、起きて。あなたと契約したい妖精さんが来てるわ」
「妖精……?」
「契約してあげてもいいなら名前をつけてあげて」
「名前……」
じぃっと見つめられた白い玉は、恥ずかしそうにふわふわと浮かぶ。ぼうっと眺めていると、ずっと考え込んでいたユリウスがぽつりと呟いた。
「シラタマ」
「「「「え゛っ」」」」
ぎょっとユリウスの方を振り向くも、もう遅い。光は弾けて収束し、ユリウスの手元に一つの塊が乗っかった。
「……うさぎ?」
もふもふ真っ白、ふわふわの大きなうさぎさんが、器用にも深々とお辞儀をして言った。
「……っは、はじめ、まして……っ、このたびっ、ユリウスさまの、契約妖精に、なりました……っ、シラタマと、申します……っ! よ、よろしく、お願い、いたします……っ」
「か、可愛い……っ」
はわはわと必死に挨拶をするもふもふ、めっちゃ可愛い。ゆっくりと手を伸ばすと、遠慮がちにも近寄ってきてくれる。
「抱きしめてもいーい?」
「はっ、はいっ! どうぞ、です」
こくりと頷いたから、ゆっくりと抱き上げて優しく抱きしめる。
ふわぁ……もふもふ……
「君は何ができるんですか?」
ようやく身を起こしたユリウスが、いつもの調子で小首を傾げる。マリアの腕にいたうさぎ……シラタマは、ぴすぴすと鼻を動かしながら答えた。
「わたしは、薬草の妖精、です……っ。薬草を見つけたり、見分けたり、育てたり、調合したり、できますっ」
「ユリウスにぴったりな子だね」
もふもふを堪能しながら〈ケース〉から取り出したリンゴをあげると、もきゅもきゅと食べてくれる。一心不乱に食べるその姿はめちゃくちゃキュートだ。
「でもなんでうさぎなんだ? 妖精はみんなリンみたいに人型じゃねーのか?」
「僕は特別だって何回言えばわかんの!? ほんとこの兄弟話聞かないな!!」
「へーへーわかったわかった。んで、シラタマ……言いにくいな」
「シラタマちゃん。シロって呼んでいい?それともタマがいいかな?」
「ユ、ユリウスさまのお許しが、いただければ、いかようにも……っ」
「じゃあシロがいいです。呼びやすいですし」
離れ難いもふもふ……もといシロをユリウスへと渡す。うさぎと銀髪美少年、絵になるわ。
「いいなぁ、もふもふ。私ももふもふした子欲しい……リン、もふもふになれない?」
「無茶言わないでよ! 無理だよ!」
「ちぇっ」
いやほんと、一度は味わいたいよね、異世界もふもふパラダイス。
「ところで、ニコラス、リン? まだ話は終わってないよ?」
「「ひっ」」
爽やかな笑みを浮かべたルークがお義兄様の肩に手を置き、リンの服をつまんだ。二人はびくりと肩を揺らして固まってしまう。
「あの、ルーク。そのへんにしてあげてもいいんじゃないかなーって……」
「その分マリアへのお説教が長くなるけど、いいの?」
「たっぷり叱ってやってください!」
ニコラスとリンを生贄に、マリアはそそくさと修羅場を離脱したのだった。




