派手な魔法が使いたくなる
遅れたので今日は二部投稿します!
またお昼に投稿したいと思います!
「フッ」
短い呼吸のあと、マリアがふわりと宙へ浮かぶ。突進してくるケルベロスの背を踏み台に跳躍を重ね、着地した瞬間にケルベロスの後ろ脚を切りつける。腱を切られたのか、バランスを崩したケルベロスが大きな咆哮をあげたが、マリアはそれに臆することなく、その大きな体の下へと身を滑り込ませ先ほどと同様に前脚を切り裂いた。
【グォオオ!!】
二度目の咆哮が空気を揺らす。両脚を切られて立てないケルベロスの首に、マリアは躊躇いなく剣を振り下ろした。
【ガアアアアアアアア!!!】
絶叫が轟き、切断された首がゴトリと落ちた。
「まずひとつ」
過敏になった聴覚が、マリアのそんな言葉を拾う。ニコラスは信じられないという目で義妹を見つめていた。
首をひとつ落とされたケルベロスは涎と血を撒き散らしながら、脅威となったマリアの元へと走ってくる。大きく開いた口から覗く、鋭い牙がマリアを噛み砕こうとその小さい体に迫っていった。
ガッ
「…………え?」
間抜けな声が口から飛び出た。だが、それも仕方ないことだとニコラスは思う。
なぜならマリアが、ケロベロスの頭をひとつ、下から思いっきり蹴り上げたのだから。
【グキャ……ッ】
勢いのあまり、ケルベロスはその舌を自分の歯で噛みちぎる。普通の犬とは違うギザギザと尖った歯が仇となった。舌を失くした頭は口からぼたぼたと血を垂れ流しながら、力なく項垂れる。
呆然とするニコラスをそのままに、マリアとケルベロスの戦闘は続く。
最後に残った真ん中の頭が、大きく口を開けるた。本能的に嫌な予感がし、その直後辺りの魔力が急激に集まり出す。
「っ、まさか!」
魔法を使う気なのか!?
ニコラスの背筋がゾッと粟立つ。慌ててマリアの方を見れば、至極落ち着いた様子で魔法を放っていた。
【ゴガッ!?】
大きな氷の塊が、ケルベロスの口に突っ込まれる。ドフッという破裂音がしたと思えば、ケルベロスの大きな体躯がぐらりと傾いた。
そのまま地面に崩れるように倒れ、その衝撃が地面を激しく揺らす。巻き上がる砂埃の中、マリアだけが悠然とその場に立っていた。
「さて、リン捜索を続けましょう」
俺の義妹、マジすげぇ。
*****
「大きな魔力反応はケルベロスだったみたいです。リンの気配は索敵魔法じゃ分からないですね……」
マリアの言葉にニコラスも腕を組んで唸る。
「索敵は害意に引っかかんだろ?探知はどうなんだ?」
「探知は捜し物はできるんですけど、魔法がかかってると難しいんですよ……」
害意じゃ反応しない。でも探知にかからないから魔法が使われている。
……それじゃあ、害意の逆なら?
「複合魔法〈コネクト〉《結界感知》」
かかった!
聖魔法と探知を組み合わせた魔法が、強い反応を捉える。
「お義兄様、行きますよ!」
「あっ、ちょ、おい!?」
再び身体強化を起動し、森の中を走り抜ける。そう遠くない場所にその魔法は発動していた。
森の中の開けた場所に魔道具と思われる装置が四隅に置かれ、四角い箱のような結界があった。半透明の結界の中にはふよふよと舞う白い玉と、その中心にいるリンがいる。
「リン!」
『マリア!?』
マリアに気づいたリンがこちらへ飛んでくる。マリアとリンは結界越しに手を重ねた。
「よかったぁ……! 無事だった……!」
『ごめん、心配かけた』
「怪我がないならいいよ。それで、リン。私はどうするべき?」
『闇魔法でその機械ぶっ壊して、結界解いて』
「わかった」
天に手を突き上げ、頭の中でイメージする。魔力を練って闇属性へと変換していく。
「お、おい……マリア? おまえ何しようとしてんだ……?」
『マリア? あの、お願いだから、ぼくに被害がないようにしてくれない?』
ニコラスの戸惑う声もリンの嘆願もフル無視し、ひたすら魔力を練る。次第に辺りが暗くなり、マリアの頭上に暗雲が立ち込めだした。
いける。
そう確信したマリアの口角がゆっくりと上がる。
「落ちろー!」
マリアが手を振り下ろした瞬間、四本の雷が装置へと直撃した。
「うおおっ!?」
『わぁああ!?』
ズドォォンッッ!! という轟音のあと、先程のケルベロスなんか目じゃない位に地面が揺れた。咄嗟に持っていた剣を放り出し、耳を塞いで目を閉じる。
「……あの、もう目を開けていいですよ?」
数十秒の沈黙のあと、そんなマリアの声が聞こえてニコラスは恐る恐る目を開けた。
「うっわ……んだよこれ」
目の前には、四つの大きく空いた穴。結界は完全に消滅し、ニコラスと同じく耳を塞いで蹲るリンとそのそばに落ちている変な形の装置だけが残されていた。
「ぼく、ここまでやれなんて言ってない」
「えへへ、やりすぎちゃった」
「笑い事じゃねぇだろ……」
「って、こんな会話してる場合じゃないよ! これ! これ早く〈ケース〉にしまって!」
「なにこれ……?」
「早く!」
「う、うん!」
変な形の装置を急かされるまま〈ケース〉に放り込む。
「今の機械なんなんだ?」
「大地の膿を強制的に引き出して、無理矢理魔物を発生させる装置だよ」
「え!?」
マリアの伸ばした手に止まったリンが、難しげな顔で語る。
「元々は汚染された土地を浄化するために人間が開発した装置だったんだ。だけど必要以上に魔物が発生したり、稀に人が太刀打ちできないくらい強い希少種が現れたりしたから、国が管理することになったはずなんだけど」
こんな所にあるなんておかしい、とリンは訝しげな顔で呟いた。だけどそれも一瞬で、不安げなマリアとニコラスに向き直る。
「ただ、僕も植物からしか情報を得られないから。詳細は賢者の書で調べるか、オーウェンに聞いた方がいい」
「どうして〈ケース〉に仕舞わせたんだ?」
「マリアの〈ケース〉は外界から完全に遮断された亜空間だから。取り出しても魔力さえ流さなければそれは発動しないんだ」
「よかった……じゃあもう異常発生はしないのね」
マリアの問いに、リンが笑顔で頷いた。
「それじゃ、帰ろっか。ルークも心配してるだろうし」
「うっわ。ぜってぇさっきの雷怒られんじゃん……そん時はリンも巻き添えな」
「うぇ!? なんで僕まで!? やだよルークこわいじゃん!」
「止められなかったおまえが悪ぃ」
「いやだあああー!!!」
いつもブクマ、評価ありがとうございます!
一話〜三十四話まで少し修正いたしました。少しは読みやすくなっているかと思います!
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