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悪役令嬢は死にたくない。〜目指せ、完全無欠のハッピーエンド〜  作者: さびねこ。
第二章 悪役令嬢マリア(6)
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何やら問題が発生しました。

  ニコラスの事件が解決し、一ヶ月が経った。今日はユリウスが療養していた別荘を訪れる予定である。と言ってもマリアの〈テレポート〉で行く。子供たちだけのピクニックだが。


「妖精さんへのお菓子よし、お弁当よし、必要そうなものは〈ケース〉に入ってるし、準備万端!」

「ポーション入れました? 昨日作ってた分」

「ばっちり!」


  ユリウスの言葉ににっこりと微笑んだマリアは、ニコラス、ユリウスと共にルークの到着を待っていた。

  今日の目的はユリウスに果物を届けてくれた妖精さんへのお礼だった。リン曰く、妖精は魔力の篭ったポーションが好物だというので、錬金術師Lv.MAXを有効活用してみた結果、最上級ポーションが出来上がってしまった。緑の手で育てた薬草と魔法で出した水の相性は抜群でした。リンからも「は!? なにこれ! ぼくが教えたのと違う!!」というお言葉も貰えました。初めて作ったときは浴びるように飲んでた。ストレスかな。


「あれ、みんな早いねー」

「ルーク! おはよう」


  指輪に仕込んだ〈テレポート〉で、目の前にルークが現れる。いつもよりラフな格好だ。いや、私がデザインしたんだけど!!


  お義母様と、お父様たちの協力を得て設立したファッションブランド《ネバーランド》は、現在人気ブランドへの階段を駆け上がっている。

  この世界にはないデザインと公爵家・侯爵家の箔、さらに正体不明のデザイナー『ウェンディ』という話題性( もちろん、ウェンディ=マリアである )が加わり、流行に敏感な貴族には既にお得意様までいるのだ。結構な収入があるものの、お父様からは稼いだお金は自分で管理しなさいと言われているので、欲しいものがあればここから出すつもりである。


  そんな服を真っ先に着るのは兄弟であるニコラス、ユリウス、そして婚約者のルークだった。なるべく上品に、かつ動きやすいデザインも考えているので、こういう外出の時にはぴったりなのである。


「それじゃ、行こっか。みんな手を繋いでねー」


  浮遊感を感じ、パチリと目を開けて、固まる。


「マリア!?」

「えっ、お父様!?」


  仕事中と思われるお父様が、マリアたちの前に立っていた。その手からは驚きのあまり、書類がバサバサと落ちている。


「ちょ、なんでここにマリアたちがいるんだい?」

「あ、森の妖精さんたちに会いに……リンに会いませんでしたか?」

「あー……昨日いたな。それでかぁ……」

「何かあったんですか?」

「……うん。あのね、ここがセイントベールの領地なのは知ってるよね? それで僕の管轄なんだけど、最近魔物が増えてきているらしいんだ」

「魔物が?」


  魔物とは、大地に溜まった悪い物質ーーいわゆる“膿”が、水によって浄化され、押し出された結果産まれたものである。人を襲うこともあれば、自力で繁殖したりもするので大変厄介な生き物だ。

  魔物からドロップしたものは通常より質がよかったり、特別な効果を持っていることもあるため資材や素材、食材と、どの分野でも取引されている。


「スタンピードではないのですか?」


  ユリウスが首をかしげる。スタンピードとはダンジョンで起こる魔物が大量発生することだ。ダンジョンから溢れだした魔物が街へ出てくるようなら討伐隊がでなければいけない。だが、この領地にはダンジョンはなかったはずである。


「いや、例年より多く繁殖してしまったようでね。でも危険なことに変わりはないから、魔物がまだ森の中で留まっているうちにリンを連れて帰りなさい」

「は、はい」


  リンに念話を送り、帰ってくるようにと声をかける。なのに、一向に反応が返ってこない。呼びかければすぐに現れるはずなのに、気配すらない。マリアの鼓動がだんだんと早くなっていく。


「……マリア?」


  マリアの様子を怪訝に思ったルークが、眉をひそめてマリアの肩に手を置いた。


「リンの、応答がないの! いつもならすぐに返事が返ってくるのに……! 壁があるみたいに、ぼんやりとしかリンを感じない……まさか、何かあったんじゃ……っ!」


  呼吸が浅くなっていくマリアの背中をニコラスが撫で、ユリウスが治癒魔法をかける。ルークが言い聞かせるように言葉を紡いだ。


「マリア、ゆっくり息吸って、吐いて……妖精は、人間なんかよりずっと丈夫だよ。魔物にやられることなんてほとんどないんだ。だから落ち着いてどうするべきか考えよう?」

「るーく……」

「義父上、今回討伐隊は出ますか?」

「うん、一応ギルドには依頼したから。僕も参加しようとは思うけど、早くて明日か明後日くらいになるだろうね」

「そんな、それじゃ遅すぎるわ!」


  冗談じゃない。安否もわからないまま二日も過ごせと言うのか。


「ごめんね。僕も昨日到着してすぐ手配したんだけど、ちょうど力のある冒険者がいないんだ」

「……わかり、ました……」



  待つより、探した方が早い!



「マリア!?」


  咄嗟に反応出来なかったルークを振り払い、マリアは〈テレポート〉を起動した。


 *****



「いってぇ!」

「え!?」


  ドサッという音と共にそんな声が聞こえて、マリアは驚いて振り向いた。


「お、お義兄様!? な、なんで……」

「おまえがあんな大人しく引き下がるわけねーだろうが。まあルークよりは鍛えてっからな! 反射神経の勝利だぜ」

「あ、危ないですよ!? 早く戻ってください!」

「ああ、危ねぇよな。ならおまえも戻るべきじゃねーのか?」


  ニコラスの言葉に、マリアはぐっと押し黙った。


「んな危ねぇとこに妹を一人で放り込めっかよ」


  ポンポンと頭を撫でられる。ルークに撫でられるのとは違う、どちらかと言うとお父様に似た感覚に、マリアは落ち着きを取り戻し始めていた。


「んで、なんでルークは来ねぇんだ? おまえの指輪で来れるんじゃねーの?」

「私が指輪に魔力を通してないとこちらには来れません。先程からめちゃくちゃテレパシー送られてきてますが」

「出てやれよ……」


  呆れ顔で言うニコラスに、少し躊躇いながらも通話をオンにする。「マリア!?」という焦った声が耳を刺した。


『マリア!! なんでニコラスは連れてくのに僕を置いていくの!? 早く魔力流して! 今すぐ行くから!』

「う、ごめんねルーク、お義兄様が来たのは事故で……でも、魔力は流さない。ルークは来ちゃダメだよ」

『なんで!?』

「危ないから。お義兄様は魔物と戦ったことあるけど、ルークはないでしょ。攻撃魔法も使ったことないはずだよ」


  ルークはたぶん、練習しなくたって使えるはずだけど。実践の有無は物凄く重要だ。今回は討伐じゃなくてリンの捜索で、体力が必要になってくる。魔術師であるルークが身体強化持ちのマリアやニコラスについてこれるとは思えない。


『マリアだってないだろ! 僕が、君が危険な目に遭うのを黙って見過ごせると思ってるの!?』

「思ってないよ! 思ってないけど……っ」

「ルーク、聞き分けろ。暗くなる前にリンを見つけて帰るようにすっから」

『ニコラス!!』

「 “ 今回は ” 、俺がマリアを守る。いいな?」


  有無を言わさぬニコラスの口調に、先程のマリアと同じくルークが口を噤む。そしてたっぷりの沈黙のあと、


『……マリアに何かあったら、いくら君でも許さない』

「肝に銘じといてやるよ」


  ……ルークの舌打ちが聞こえた気がしたんだけど、気のせいだよね?


いつもブクマ、評価、感想ありがとうございます!だんだん読んでくださる人も増えてきて、恐悦至極にございます!これからもよろしくお願いしますー!

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