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悪役令嬢は死にたくない。〜目指せ、完全無欠のハッピーエンド〜  作者: さびねこ。
第二章 悪役令嬢マリア(6)
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アビリティ:推理の性分

令和ですねっ!まだまだ未熟者ですが令和もよろしくお願いします((*_ _)


 

「カンタレラ?」


  マリアの呟きを拾ったルークが聞き返してくる。マリアは神妙に頷きながら話を続けた。


「逆さ吊りにして撲殺した豚の肝臓をすり潰して、亜砒酸を加えたものを乾燥させた毒のことよ。だから料理に混ぜても怪しまれなかった……砂糖として扱ったから。毒耐性持ちが舐めて甘いと言ったのは砂糖ではなくカンタレラだわ!」


  考えてみれば、前世の本で読んだグロテスクな症状とそっくりだ。白くて味の良い粉末。


「じゃあそのカンタレラってのだと仮定して、どうしてドロガーデ伯爵一家は同じ食事をしていないのに死んだんだ?」

「それこそがカンタレラの特徴だからです、お義兄様。カンタレラは調合次第で服用した者の死亡時期を調整できるのです。やろうと思えば一ヶ月、半年、一年と」

「つまり……伯爵一家はどこかで同じものを食べて、それが時を経て同じ日に死んだということ?」

「うん。助かる方法は生きたラバのお腹を裂いて、そこに潜り込んで、熱い血や内臓に身を浸すって古来の解毒法だけ」


  ニコラスの顔がうげぇ、と歪む。ずっと黙っていたユリウスが「姉上」と声をかけてきた。


「そんな毒なら、闇市場に流通しているのでは?犯人の特定は不可能かと……」

「大丈夫、この毒は多分、一家秘伝の毒だから。その家の人以外は製法だって知らないと思う」

「でもマリアは知ってたよな? なんでだ?」

「…………け、賢者の書が……」

「えっ?」


  ルークが驚いた声を上げる。自分の知らないうちにスキルが発動していたんだからびっくりしただろう。慌てて自分の指輪に問いかける。


「カンタレラのこと、知ってたら教えて」


  その声に答えるように、ルークの指輪から一冊の本が出てくる。勝手にぱらぱらとページが捲られそれが止まるとルークの手のひらに収まった。

  よかったー! もし賢者の書が知らなかったらどうしようかと思った!! ありがとう賢者の書!


「……本当だ。マリアが言ったのと同じことが書いてある。元々は先人が作った生贄用の毒だったみたい。それで、その毒の製法を受け継いでいるのは…………」


  ぱらりと一ページ捲られ、ある一文が浮かび上がった。


「犯人は、ポーロジア家だ」


  アビリティ推理持ちの二対の瞳が爛々と輝いた気がした。


 *****


「ポーロジア伯爵家の当主?」

「はい、お父様! どんな方何ですか?」

「うーん……僕より二歳年上だったかなぁ。でもあまりいい噂はなかったと思うよ。愛人が何人もいたり、政治でも結構小狡い真似してくることが多いかな。昔の王が愛人に産ませた子供の子孫らしくて、黒い噂はあっても決定的な証拠がないからなかなか兄さん……陛下も手が出せないんだよね」

「そうなんですか……」

「でもどうしたの? いきなりポーロジアなんて、セイントベールとなんの関係もないとこの話……」

「実はですね、お父様」

「あっ、待ってマリア。ここからは僕らが説明するよ」


  すっとマリアの後ろから出てきたルークとユリウスが、マリアを椅子へ座らせる。ぽかんとしたまま事情の説明を始める二人を見つめていると、いつの間にか隣に立ったニコラスが苦笑を浮かべていた。


「二人とも、探偵みたいなことがしたかったみたいだ。俺より大人っぽいアイツらだけどそーゆーとこは子供なんだな」


  安心したぜ、と笑うニコラスにマリアも「そうですね」と微笑む。

  身振り手振りで先程までの話を続けていた二人だったが、数分後には説明を終えたのかお父様がカタンと立ち上がった。


「話はわかったよ。僕の方でも少し調査してみる。あとは物証だけど……」

「あ、それでしたらお父様。私に考えがあるんです」

「ん、何かな? 言ってごらん」



「ポーロジア家の当主を、うちの晩餐会に招くというのはいかがでしょう」

 


  ぎょっと目を向いたニコラスが慌てたようにマリアに食ってかかる。


「何言ってんだマリア!」

「いや……いい案だよ」

「ルークまで!」

「マリアがいる限りセイントベール家の人間は死なない。それならさっさとおびき寄せて、現行犯で捉えた方が早いよ」

「そうだね、僕もルークに賛成だ。でもどんな理由で招こう……ああ、いいのがある」


  これはどう? と言ってお父様が見せてきたのは一枚の便箋だった。その封蝋は、王族のもの。


「これは兄さんから届いた手紙。王子たちの婚約者にマリアをー……って話だったんだけど」

「え!?」

「あっ、安心していいよ。マリアから王子とは結婚したくないって聞いてたからね。すぐ断ったんだ。二回目の打診が来る前にルークとの婚約が決まったし」


  これは建前だよ、とお父様が朗らかに笑う。


「兄さんの即位前、城には僕を王にって人もいたんだよ。そのうちの一つがポーロジア家なんだ」


  お父様の説明を聞き、私達はその作戦に同意した。簡潔にまとめるとこうだ。

  私と王子が婚約したという話でポーロジア伯爵を呼び出す。そして、他の王子に婚約者が出来る前に国王様を暗殺し、お父様が王座につくという計画を伝え、国王を殺す手段を問うというものだ。私が王子と婚約することによって一度は退いたお父様が王子の代理として政治を牛耳ることが可能となる。日本史でいう摂関政治だ。


「そういうわけだから、あとは僕がやっておくよ。君たちはいつも通りに過ごしてくれて構わないんだけど、ただ一つお願いがあるかな」

「何でしょうか?」

「ルークは今日からうちに来るとき、絶対にその指輪で来るようにして。婚約者がいるのに他の家の男児が出入りするのはちょっとね」

「それでは、その日まで僕は来ない方がいいですか?」

「えっ」

「うーん……それだとマリアが元気なくなっちゃうから却下するかなぁ」


  悲壮感溢れる顔を浮かべたマリアを見て苦笑しながら答えるお父様に、ルークがなるほどと頷く。それからそっとマリアの手を取ってにっこりと笑った。


「ふふ、大丈夫だよマリア。ちゃんと遊びに来るから」

「本当? 私、ルークがいなかったら死んじゃうよ」

「僕もだよ? マリアがいなかったら死んじゃう」

「あのー、俺らの前でイチャつくのやめてくれねーか?」

「ああ……確実に母上と父上の血を引いている。僕も将来こうなるのかな……」

「敬語が取れてるぜユリウス。帰ってこい」

「じゃあ僕仕事あるから、ニコラスとユリウスはその二人を部屋まで連れてってね〜」




  カラカラと笑いながらバカップルを兄弟にぶん投げて、オーウェンはバタンと扉を閉めた。それから、ララの集めた資料と子供たちがまとめた書類をパラパラと捲る。


「……これはマリア……ルーク、こっちはユリウスか。ニコラスの字はないけどあの子は勉強苦手って言ってたし……大人が関与せずにこれだけ調べあげた上で考察も論理的だ。予想以上の頭脳だな」


  ルークは子供ながらに学者のような思考回路をしている。脳が柔らかいうちに刻み込んだ膨大な知識と偉大な研究者達の考え方。そのすべてが彼のアビリティと混ぜ合わさり、そこらの大人より遥かに聡明だ。そして特殊スキルである賢者の書が彼の能力を底上げしている。


  そしてユリウス。五歳にして薬と医療について学び始め、ルークの賢者の書を使って古代の知識まで掘り起こしている。薬草などはアビリティの完全記憶で見分け方や調合の仕方まで覚えているし、近頃は本物の薬草が見たいだの薬を作りたいだのと言うことも増えた。なんでも、薬草がある場所にはリンが案内してくれるらしい。


  なによりも、マリアだ。恐ろしく回転の早い頭と、突飛な発想力。一族で行われる政治的な暗殺行為など前代未聞。自分のものでは無い特殊スキルを使いこなし、誰よりも早くそれに気づく。そして資料の作り方だ。マリアの資料は今までこの世界になかった形式だったが、とてもわかりやすい。城の政務にも取り入れたいと思うほどだ。


「年端も行かない子供がここまでやるのか……十年後が恐ろしいな」


  そう呟きながらも、オーウェンの口元は弧を描いていた。彼女らの成長を特等席で見守れることが、何よりも嬉しい。


  穏やかな笑みを浮かべながら、オーウェンは一枚、上等な便箋を手に取った。


いつもブクマ、評価、感想をありがとうございますヽ(*´∀`)ノこれからも頑張ります!

続きが気になる!もっと!という方は応援してくださると励みになりますっ!

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