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悪役令嬢は死にたくない。〜目指せ、完全無欠のハッピーエンド〜  作者: さびねこ。
第二章 悪役令嬢マリア(6)
29/67

その毒の名は?

少しグロテスクな表現があります。

ユリウスのステータスの不備を修正いたしました5/23

 

  ニコラスが家にやってきてから三日が経った。おやつのクッキー( マリア作 )を摘みながら、新しく作られた子供部屋で紅茶を飲んでいた。


「お嬢様、頼まれていたものをお持ちしました」

「はーい、ありがとう」


  メイドのララちゃんから受け取ったのは、お父様に頼んで集めてもらった事件の資料だった。思ったより分厚いそれを四人で囲み、ぱらぱらと捲っていく。


「二年も前の事件だから、曖昧な点が多いね」

「ニコラスが辿ってきた家の未遂事件も纏めてるからこんなに厚いのか」

「どれも死ぬほどの毒ではありませんね……それでもたくさんの医者は必要になったみたいですが」

「なあ……本当に俺ここにいていいのか? おまえらも死にかけるんじゃ……」

「お義兄様ぁ、何度言えばわかるんですか? 私に毒は効かないし、誰かがかかっても死ななければ治せるって言ってるじゃないですか」

「もうこれで五回目だよニコラス。君も毒は効かないってわかっただろ?」

「でもよ……」


  ニコラスがポリポリと頬をかく。そう、このセリフをニコラスは三日で五回も言っているのだ。

  初日、食事のあとに不安そうに言ったニコラスに、マリアは自分のステータスを見せた。驚きながらもマリアに毒が効かないと知ったニコラスは、自分にもそういうスキルがあるのではないかとマリアに詰め寄った。結果、見たステータスはこんなだった。



 ニコラス=セイントベール(7)

 種族:人間 性別:男


 職業:

 剣聖 Lv.18

 弓術士Lv.2


 スキル:

 回避スキル

 精肉スキル


 特殊魔法:

 身体強化魔法


 特殊スキル:

 〈野生の勘〉


 アビリティ:

 視覚・情報共有

 超聴力

 超嗅覚

 超視覚

 状態異常緩和


 称号:

 〈剣神に愛された者〉



  マリアやルークには見劣りするが、流石は剣豪の一族と言えるステータスだった。剣聖は努力次第で剣士のLv.MAXを遥かに超える強さとなることが可能な職業だ。称号からしても剣でマリアを超えるだろう。


  状態異常緩和はマリアのアビリティである状態異常無効の下位スキルではあるが、これのお陰で生き残れたと断言できる。


「そうですよ、兄上。僕も助力ですが、治癒できますから」


  そう言って、ユリウスがにこりと笑う。

  実はニコラスのステータスを確認したとき、ユリウスのステータスも見てみたのだ。



 ユリウス=セイントベール(5)

 種族:人間 性別:男


 職業:

 治癒師Lv.3

 薬草鑑定士Lv.7

 調合師Lv.1


 スキル:

 調合スキル


 特殊魔法:

 治癒魔法〈ヒール〉


 特殊スキル:

 〈レントゲン〉

 〈診断書〉

 〈妖精の愛し子〉


 アビリティ:

 治癒効果上昇

 高速治癒

 速読・速記・暗算

 推理

 完全記憶

 情報高速処理

 調合時効果増大


 称号:

 〈痛みを知る者〉


  こんな感じである。

  すごくない? 私の弟半端なくない? なんかもうスキルから頭良さそうな感じがバッンバン出てるよ。しかもこの子、チートな私と同じ〈ヒール〉持ちだよ? 奇跡だよ。本人は若干ルークと被ってるとこあって微妙そうな顔してたけど。


  ていうかスキル〈レントゲン〉と〈診断書〉で思ったんだけど、この世界の神様、地球の神様と同じじゃないんだろうか。この世界、診断書はあるけどレントゲンはない。


  ちなみに〈診断書〉は触れた人の身体・精神状況を表示できるスキルだった。試しに屋敷に長く務める、いつも片足を引きずっていた執事さんを診断したら、どこがどう悪いのかをこと細かく表示した。患部の位置を〈レントゲン〉で正しく掴み、ユリウスが〈ヒール〉で治癒したら綺麗に治り、涙を流しながら父の元へと走っていった。結果、ユリウスだけでなくニコラスのステータスもバレたのだが……父と母から聞けた言葉は「流石僕( 私 )たちの息子!」だった。


  とにかく、医療に特化した自分のステータスを見たユリウスはセイントベール領を医療が進んだ街にしたいと意気込んでいた。しっかりした弟を持っておねーちゃんは嬉しいです。



  話を元に戻すが、ララちゃんに資料を作ってもらったのは毒が何かを突き止めるためである。

  毒殺で有名なのはダンジョンの奥にいるガラゴロスネークというモンスターやタラントラという蜘蛛型のモンスターなどの唾液だったり、トットリカブトという植物から作られる毒だが、それらは死に方に特徴がある。

  例えばガラゴロスネークは体が麻痺してから呼吸困難で、タラントラは発熱の後に体が腫れ上がって、トットリカブトは嘔吐下痢症からの呼吸虚脱で死亡する。

  しかし、レグリオン家はもっと酷かった。そうなると毒の少ないこの世界、のはずなのに絞られるはずの凶器は全くと言っていいほど姿を現していない。


「いいですか、お義兄様? その恐怖を無くすためにはまず、凶器を見つけないといけないんです。手分けして探さないといけないんですから、女々しい考えはゴミ箱に破り捨ててください」

「おま……男に向かって女々しいって」

「手を動かす!!」

「おうっ!?」


  そんな言い合いをしているあいだにも、速読アビリティのある二人は早くも分割した資料に目を通していた。子供が何やってんだって話だけど、最年少のユリウスがルークレベルに大人びてるからそういうのは割愛だ。チートで何が悪い。


「……姉上、これなんですが」


  黙々と資料を読んでいたユリウスが、一枚の紙をマリアに見せてきた。随分古い紙だ。


「これ、三十年近く前の暗殺事件の資料なんですが……兄上の事件と遺体の状況が似ています」

「えぇと、『ドロガーデ伯爵暗殺事件』?」

「ちょっと見せて」


  ユリウスから受け取った資料の内容をルークが簡略化して教えてくれる。


「うーん……ニコラスのと同じ様に、肌は荒れて目はくぼみ、髪が白くなって歯が抜け落ちていたらしい。調理場に微かに残っていたのは白い粉だけだったみたいだ。同日同様に死んだのに、その日は別々に食事をとったようだし……」

「でも三十年近く前だし、同一人物じゃないよね? 政治からは身を引いてる可能性が高いし、レグリオン伯爵を殺してもメリットがないわ」

「たまたま同じ手口になるっていうのも有り得なくはないけど……まあ考えにくいよね」


  みんなで首をひねっていると、ふとマリアはニコラスに声をかけた。


「……あのー、今更ですがお義兄様、これ聞いて大丈夫なんですか?」

「あ?」

「気分悪くなったりとか……そういうのないんですか?」

「いや、ねぇな……こう言っちゃなんだが俺は家族の記憶がほとんどねーんだ。親が死んだのは俺が五歳の時だったし、その前はほとんど顔合わせたこともなかったからな。その事件の日が物心ついてから初めて会ったときだ。正直、飯が食えなくなったのは家族が死んだショックっつーよりも俺が殺されそうになった恐怖ってのがでかい」

「ええ……」

「次の家でも同じ症状で苦しんだから、大人たちには人が作ったもんは食えねーって言っといたけどな。そのほうが説明も楽だったし、融通もきいたんだ」


  ニコラス、スーパードラァァイ。衝撃の事実に呆然としていると、我に返ったユリウスがこてんと首を傾げる。


「じゃあ、今まで何食べてたんですか?」

「果物とか木の実とか、生卵とかだな。あとはその辺の牛とか豚とか鳥とかを絞めて捌いて焼いて食った」


  ニコラスのステータスにあった精肉スキルって、それかよ。貴族にありえないスキルだと思ったんだよ!


「……その動物ってどんなのだった?」

「あー、なんか唸ってたな。それで突進してきたから首を落とした。凶暴だったから肉なんて食えるのはまぐれに近かったけどな」

「ひぇ……」


  それは動物ではなく魔獣ですお義兄様!!

  ちらりと横を見ると、顔をひきつらせたルークとユリウスが信じられないものを見る目でニコラスを凝視していた。わかる。多分私も同じ顔してる。


「なんだよ、仕方ねーだろ。俺料理出来ねーんだよ。ちゃんと調理しようとするとなにやっても絶対焦がすんだ」

「それは料理云々以前の問題では……」


  なんだろう。今、何があってもこの人に料理させちゃダメだって思った。


「一番倒すのが難しかったのは豚だなぁ。アレすごい勢いで突進してくんだよ。あの牙は凶器だったな」

「……ルーク」

「なに、ユリウス」

「その豚、絶対ジャンボイノシシですよね」

「そうだねー。少なくとも子供が狩るものじゃないねー」


  ははは、と乾いた笑いを浮かべる二人を放置し、マリアはぐるぐると思考を巡らせていた。


  急に、ニコラスが言った豚という単語が、遺体の状態と結びつく。

  前世で読んだことがある毒薬だ。中世ヨーロッパで使われ、白雪のようだと言われた……


「……カンタレラ」


  かつて皇帝をも殺したという、ボルジア家の秘薬である。

マリア、ルーク、ニコラス、ユリウスのステータスはまた変更するかもしれません((*_ _)


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