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悪役令嬢は死にたくない。〜目指せ、完全無欠のハッピーエンド〜  作者: さびねこ。
第一章 悪役令嬢マリア(5)
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悪役令嬢、初めてのお宅訪問

いつもブクマ、評価ありがとうございます!

誤字報告いつも助かっておりますー!皆さんに読んでもらえてとっても嬉しいです!更新頑張りますっ!

「さて、ユリウスが今後どこで暮らすかなんだけど……」

「ぼくはあねうえといっしょにいたいです! ぼくはあねうえとくらしたいです!」

「あわわ可愛いぃぃぃぃ!!!」

「マリア落ち着いて」


 ぎゅっと抱きついてくるユリウスに、私の中の可愛いは止まらない。あまりの可愛さにパニックを起こしかける私をルークは何度止めてくれているだろうか。


「そう言うと思って、ユリウスはこれから本邸に引っ越すよ。というか、もし病気が再発しても対処できるのはマリアだけだから元々そのつもりだったんだ」

「やったぁ! お父様大好き!」

「うれしいですちちうえ!」


 嬉しさのあまりハイテンションな私と既に歩けるようになったユリウスの突撃にもぐらつかず、お父様は軽々と私たちを持ち上げてくるくると回った。


「よーし、じゃあフィーリアはユリウスと先に帰っていてくれ。僕とマリアとルークはアラベスタ邸に行って挨拶をしてくる。一晩預かってしまったからね」

「わかりましたわ、オーウェン様。いってらっしゃいませ」

「うん、行ってくる」


 ちゅ、といってらっしゃいのキスをする二人は恋人同士みたいで、とても二人の子供がいるようには見えなかった。仲睦まじい二人に赤面しながらも、悲しそうな顔をするユリウスの頭を撫でる。


「またすぐ会えるんだから、そんな顔しないの」

「あねうえぇ……」

「もう、仕方ない子ね」


 情けない声を出すユリウスのおでこにキスをして、「いってらっしゃい」と送り出す。ユリウスは額を押さえながらも微かに手を振って、リンと共に屋敷を出ていった。


「…………」

「…………」

「……あの、ルーク? なあに? じっと見て……」

「いや、別に……」


 ちらりと隣を見ると、ずっと感じていた視線が逸らされてしまう。その表情にマリアは思わず吹き出してしまった。そのままくんっとルークの袖を引いてバランスを崩したその頬に口付けた。


「へっ?」

「んふふー、可愛い」


 頬を押さえて固まるルークが愛しくて、さっきユリウスにやったようにルークの黒髪を撫でる。くすくす笑いながら撫で続けていると、ルークの頬がぼっと赤くなった。


「な、なななっ、何してるのマリア!」

「えぇ? だってヤキモチ妬いてたんでしょ? 違うの?」

「え、ぁ、う……」


 大人ぶっていてもやっぱりルークも五歳の子供だ。もっと子供らしくして欲しいし甘えて欲しい。恥ずかしそうに俯く仕草を肯定と受け取り、手を再び動かし始めると、玄関の方からゴホンと咳払いが聞こえた。見ればお父様が苦笑いしながらこちらに向かって手招きしている。


「……そろそろいいかい? 出発するよ」

「はーいお父様」


 まだ耳を赤くして顔を伏せるルークの手を引いて、私は馬車へと乗り込んだ。


 *****


 アラベスタ侯爵家は、じき公爵家と呼ばれるほどの財力を持つ家である。貴族の中で黒髪を忌み嫌う家は意外と少ない。ほとんどはアラベスタ侯爵の真面目な性格を知らず、昔から優秀なアラベスタ侯爵家……というか外交で一財産を築き、侯爵にまで引き上げた現アラベスタ侯爵を妬むような家がほとんどだ。その中には美人なアラベスタ侯爵夫人と結婚したから、という理由でヘイトをかます人もいるらしい。


 そんなアラベスタ侯爵家は無駄に有力な古参貴族から邪魔をされ続け、理不尽な扱いにブチ切れた伯爵であった何代か前の当主が国政から外交へとシフトチェンジした。それから着々と人望を集めた結果が辺境伯をすっ飛ばした侯爵拝命だ。

 まぁ虐げていた貴族たちとしては、自分らが虐げていたから外交担当になったのにそれで功績を挙げられては気に入らないだろう。


 だが、この国でなければ黒い髪は大した差別対象ではない。その手腕が余すことなく発揮されるのは当たり前なのだ。今では着実に資産を増やし、商人の中ではアラベスタ家に楯突くと物資が手に入らなくなるなんて噂があったりする。どうにも本当のような気がしてならない。


「ようこそいらっしゃいました、セイントベール公爵」

「ああ、出迎えありがとうアラベスタ侯爵」


 屋敷につくとルークのお父様が玄関まで出てきてくれて、しっかりと挨拶をしてくれる。お屋敷の外観は普通の貴族と変わらないけど、植えてある花はやっぱり外国産が多い。


「マリア様もようこそ。ルークがお世話になっております」

「お久しぶりでございます、お義父様。ルークには私の方こそお世話になっておりますわ。ところで、マリア様だなんて呼ばないでくださいな。義理の娘と認めてくださるならマリアと呼んでください」

「いえ、それは……」

「アラベスタ侯爵、私からも頼む。ついでに僕のこともオーウェンと呼んでくれないか?敬語もなくて構わない」

「ええ!? そんな、滅相もない……!」

「じゃあ、プライベートの時だけそう呼んでくれ。もう僕らは親戚同然なのだから」


 にこやかに、かつ有無を言わさない圧をかけて言われた言葉に、お義父様は抗えないと悟ったようだった。お父様は元王子。権力と子供のような純粋さに勝てる人間などいる訳もなく、この笑顔を向けられれば頷く以外の選択肢はない。


 それにしてもこの距離の詰め方、既視感あるな……

 マリアが回想に思いを馳せていると、お義父様が諦めたようなため息をついた。


「……それでは失礼ながらオーウェンと呼ばせていただく。その代わり、私のこともダンと呼んでくれ」

「うん、よろしくダン」


 ぱあ! と花が咲いたように笑うお父様は可愛い。けど眩しい。ああ、ほらお義父様の目が細められてる! ルークまで!


「……ゴホン。ルークはマリアに屋敷を案内してあげなさい。私たちは少し話がある」

「はい、父上」


 さりげなく呼ばれたマリアに喜びながら、「行こう」と差し出された手に自分の手を重ねる。お友達が出来て嬉しそうなお父様に手を振って、ルークに手を引かれて歩を進めた。

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