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悪役令嬢は死にたくない。〜目指せ、完全無欠のハッピーエンド〜  作者: さびねこ。
第一章 悪役令嬢マリア(5)
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悪役令嬢、語彙をなくす

連日投稿しなかった私を叱ってください…

誤字脱字報告ありがとうございます!助かります!

 

「……」


 熱を持っていた頬からすぅっと血の気が引く。

 マリアは毛布を握りしめながら、必死に頭を回した。


 どうしよう。どうすればいい? 前世なんて言ったって五歳そこらじゃ理解できない。いやルークなら理解できるかもしれないけど、信じられないだろう。荒唐無稽で意味不明、子供の嘘の方がまだマシだ。いや子供だけどさ。


 もう自分でも何を考えてるのかわからなくなって、マリアの頭は遂にショートした。


「……その時が来たら、話すから。ルークにはちゃんと、全部話す」


 私は、ルークに嘘をつきたくなかった。

 いい回答が思いつかなかったのもあるけど、未来視とか言ったってゲームのシナリオしかわからないし、予知夢なんて言ったらきっと気味悪がられる。マリアはルークを縋るような目で見つめた。


「これからも多分こういうことあると思うけど……私のこと、信じてくれる?」


 じぃっとその目を見つめるとルークが柔らかく微笑んだ。


「信じるよ。マリアがそう言うなら、僕はマリアが話したくなるまで待ってるよ」

「……ありがとう」

「こちらこそ、ありがとう」


 朗らかな笑顔を向けてくれるルークが、握られた手があったかくて、少し目の前が潤んでしまう。口の中で小さく呟いた「ごめんね」は、あっ! と声を上げたルークの声で、部屋に響くことは無かった。


「マリア、僕、〈知恵の樹の実〉が実ったよ」


 ルークが持っていた林檎のような実をマリアに手渡した。


「これが〈知恵の樹の実〉?」

「うん。さっき実ったばっかり」

「本当!? すごいルーク、こんなに早く実るなんて! おめでとう!」


 マリアは満面の笑みでルークに拍手を贈る。

 いくらなんでも五歳で実らせるなんて、この世界の常識をよく知らないマリアでもすごいと思う。もしかして最年少じゃないだろうか。


「ありがとう。それでね、この実をマリアに食べて欲しいんだ」

「た、食べていいの? ルークが言うなら遠慮なくいただくけど……」

「うん、いいよ。……それを食べると、僕以外と結婚できなくなるけど」

「え、そうなの?」

「だからマリアの未来を僕に縛りつけちゃうかもって思って、渡そうか迷ってたんだけど……さっきの言葉を聞いたら、迷うのも馬鹿馬鹿しくなっちゃって」


 さっきの言葉というのはマリアが言った「シワシワになっても一緒にいたい」というセリフだろう。ハナからマリアはルーク以外と結婚する気などさらさらないのだ。



「願ったり叶ったりだよ。ルークこそ逃げられないと思ってね? 私の愛はめちゃくちゃ重いよ」

「マリアこそ覚悟してね?絶対離さないから」



 子供離れしたお互いの言葉を受け止めながら、マリアとルークはせーので〈知恵の樹の実〉にかぶりついた。


 瑞々しい果肉の食感とジューシーな果汁が口の中に広がる。やっぱり味は林檎に似てて、でも今まで食べたことがないくらい甘かった。よく咀嚼してこくんと飲み込むと、ルークの体が淡く光る。


「おおお……」

「なんか、魔力が増えた……気がする。マリア、スキル見てもらっていい?」

「うん。……はい、どーぞ」


 頭の中で唱えたら詠唱なしでもできた。表示されたステータスを二人で覗き込むと、やっぱりルークの〈知恵の樹の実〉が書き換えられて〈賢者の書〉になっている。


「本当に進化してる!」

「これ、どうやって使うんだろう?」

「うーん……唱えてみたら? 私のスキルは常時発動してるみたいだけど、最初は特殊魔法みたいに唱えた方がいいのかも」

「やってみる。……〈賢者の書〉」


 ルークの言葉に光の粒子がきらきらと吹き湧いた。光はそのまま形を作り、ルークの前に超特大の本が出現した。


「すごい……って、え!?」


 突然、ページがものすごい勢いで捲られて、開いたページから花火のような光が飛び出した。青い光はマリアの右手の小指に、赤い光はルークの右手の小指に巻き付き、だんだんと形作っていく。


「……これ、指輪だ………」


 マリアの小指には青い宝石のついた指輪がキラキラと光っていた。ぱっと隣を見るとルークの指にも赤い宝石のついた指輪が嵌められている。


「なんだろう、これ……」


 ルークが呟くと、また勝手に本のページが捲られる。開かれたページに書かれた文をルークがゆっくりと読み上げた。


「『知恵の実を共に食べたものに、〈賢者の書〉からその証〈贈り物〉が贈られる。それは時と場合で形を変え、契約者の望むものになる』って書いてあるんだけど……形を変えるってどういうことだ?」

「……指輪さん、指輪さん、イヤリングになってください?」


 次の瞬間、指輪が光の粒子へと変わり、マリアの耳元へと集束した。驚いた顔をするルークを前に、マリアは恐る恐る自分の耳を触った。手に感じる、冷たい感触。


「イヤリングになった!?」

「……指輪よ、ブローチになれ」


 その言葉に従って、ルークの指輪もマリアのと同様に変わる。光は胸元へと集まり、精巧なデザインのブローチに変わった。

 マリアは思いつくアクセサリーのすべてを呟き、どんどんその形を変えてみた。ネックレス、イヤーカフ、チョーカー、ピアス、マジェステ、ブレスレット、最後にもう一度指輪。


 変えるたびに外してみると、どれもマリアが好きなデザインだった。試しにデザインを思い浮かべながら作ったマジェステはイメージ通りで、これなら肌身離さずつけられる! とマリアのテンションは爆上がりである。


「すごいよルーク! これすごい!」


 もはやすごいしか言葉が出てこない。ルークも何度か変えたようで、最後にはマリアのデザインと同じような指輪をつけていた。


「マリアの、真似しちゃった。おそろい」


 恥ずかしそうにはにかむルークにマリアの心臓はノックアウト。心拍数上昇。やばい、倒れそう。

 お互いの熱を冷ますように赤いであろう顔を仰ぐ。沈黙が続く部屋にララちゃんの声が届いた。


「お嬢様! ルーク様! ユリウス様が目を覚まされました!」


 その声に弾かれたように、ルークがベッドに腰掛けていたマリアの手を取る。二人の気配は一瞬にして部屋から消え去った。



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