悪役令嬢、目を覚ます
お久しぶりです。現実バタバタしてたので遅くなりました!今日から春休みなのでピッチ上げていきたいと思います!
閉じていたまぶたをゆっくりと持ち上げる。
まだ寝ていたいけど何か途中だったような気がして、二度寝はできそうにない。大事なことだったと思うんだけどなぁ……と頭に浮かべた疑問符は覚醒してきた意識に飲み込まれた。
「ユリウス!!」
「きゃあっ!」
さっきまでのことを思い出して、叫びながら跳ね起きる。そばで紅茶を入れようとしていたララちゃんが声に驚いて悲鳴をあげた。
「お、お嬢様! お目覚めに? 体は何ともございませんか?」
「私は大丈夫よ! それよりユリウスは? あの子は大丈夫!?」
「ユリウスなら大丈夫だよ、マリア」
「お父様!」
扉の方から聞こえた声に目を向けると、お父様が佇んでいた。お父様はララちゃんに何やら指示を出し、部屋には二人だけとなる。
「ユリウスの症状は回復して、今は眠ってる。フィーリアがそばについているよ」
「よかった……」
ほっと息を吐くと、お父様の大きな手が頭の上に乗っかった。そのまま優しく撫でられる。
「ありがとう。マリアのおかげでユリウスは助かった。五歳の君に頼ってしまって、負担をかけた。ごめんね」
申し訳なさそうに言うお父様に、私は慌てて首を振った。
「私が助けたかったんです。私にはそれが出来る力があった。それだけですわ」
そう言ってにこりと微笑む。お父様は一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに笑顔になった。次いで、部屋の外からバタバタと足音が聞こえてきた。
「君の騎士が来たようだ。それじゃあマリア、僕はフィーリアとユリウスの所に行くから、落ち着いたらルークと一緒においで」
「はい、お父様」
最後にもう一撫でしてお父様は部屋を出ていった。それと入れ替わるようにルークが駆け込んでくる。
同時に、マリアの頭がぐわんと揺れた。
「マリア! 大丈夫? どこか痛いところはない?」
「大丈夫……だ、けど」
ルークの姿を見た瞬間、記憶がどばどばと流れ込んできた。自分が転生したことに気づいた時よりは少ないけど、それなりに多い情報量に頭がくらくらする。脳裏に刻まれたのは、ルークを主人公に書かれたスピンオフ小説の内容だった。
「けど? どうしたの?」
「……アラベスタ家を貶める計画は『アルマゲドン計画』、計画の発動は私たちが十歳の時よ。『アルマゲドン計画』の内容は元第二王子のお父様を担ぎ上げて王座に座らせ自分たちが実権を握る」
目を見張っていたルークの頬を両手で挟み、言い聞かせるように瞳をのぞき込む。フリーズしていたルークがマリアの言葉を理解し、軽く首を傾けた。
「でも、義父上はそんな計画に加担しないだろう?」
「ええ、もちろん。お父様は王位なんて興味無いもの。だから五年の月日が必要なの」
魔具を用意するために。
ルークがはっと息を飲んだ。
納得したというように頷きながら言葉を繋げてくる。
「確かに、人を操るための魔具なんて貴重な素材じゃないと作れない。魔具で操るのは義父上だけではないだろうし、材料集めのためには長い年月が必要だ」
「だから計画が発動するのは五年後……だったの」
「だった?」
「首謀者たちにとって計算外のことがあったのよ。その事で辻褄が合わなくなってしまう」
「……僕達の、婚約」
「そう。王座を手に入れても汚れ仕事を娘の婚約者の家に押し付けて爵位剥奪なんて、正気だったらする訳ないでしょ?だから計画を変更せざるを得ないはず」
「僕が聞いたこととは全く別の計画になる、ってことか……」
「だけど魔具の発注は止められない。そんな魔具を作れるのは闇ギルドくらいだから。裏社会に表の人間ができる交渉といえば先払いくらいだよ。高いお金を払ったのに今更計画の取り止めなんてありえない。必ず妨害の計画を立ててくる」
「……止められるかな」
不安そうな声で呟くルークのおでこに自分のをぶつける。「いたっ」と言うルークの目を見つめて、マリアはにやりと口角を上げた。
「止めるよ。私はルークと結婚して、しわしわになるまで二人で幸せに暮らしたいもの」
「助けてくれるの?」
「当たり前でしょ! 婚約した時、私はそう誓ったもん」
任せなさい! と声高らかに言えば、ルークがぽかんとした表情を作る。一瞬の間のあと、ルークがくすくすと笑い始めた。
「なんで笑うのっ!?」
「いや、ごめん……マリアがあんまりにも頼もしくて。笑ってごめんね。頼りにしてるよ……僕のお姫様」
そう言って、ルークが私の髪を一房つまんで、キスをした。
ふぇ、なんて間抜けな声が漏れ、顔がぼっと赤くなる。
そんな私の様子を見て、ルークの笑みがさらに深くなった。
まって、ルークって恥ずかしげもなく、こういうことできちゃうタイプなの? 五歳でこの色気ってなに??ていうか、私の反応見て楽しんでるような気が……もしかしてルーク、ちょっとSっ気入ってるんじゃ……
そんなことをぐるぐる考えていると、ふと真顔になったルークが、マリアが最も恐れていた言葉を口にした。
「ねぇ……マリアはどうして、その計画のことを知ってるの?」




