侯爵子息、恋い慕う
お久しぶりです。雪ってしんどいですね…
タイトルから分かるようにルーク視点のお話です。
その子を一目見た時、僕の中で何かが弾ける音がした。
ルークはその日、とても憂鬱だった。
いつも参加させられる侯爵家や伯爵家とは違う、王家に次ぐ権力を有しているセイントベール公爵家の一人娘のためのパーティー。そんなところに行けば自分を、そして自分の父を不吉と罵り、嘲てくる子息たちの絶好の獲物になるに決まっている。ルークは溜息をつき、ある程度の挨拶を終えてすぐ会場から抜け出した。
辿りついたのは、綺麗に緑が整備された庭園だった。さすが公爵家の庭と言うべきだろうか。植えられた植物が生命力に満ちている。周囲に咲いた花を眺めながら庭園を進むと、人の頭が見えた。そこにいるはずのない人物に、ルークは驚いてその少女の名前を呼んでしまった。
白金色の長くてふわふわの髪。薔薇のような深紅の瞳。まるで物語に出てくるお姫様みたいな少女は驚いたようにルークの名前を呼んだ。
自分の名前がその小鳥の鳴くような声で呼ばれたことに戸惑い、向こうの反応につられるようにどもってしまう。
慌ててその場から離れようとするルークに少女……マリアからの制止の声がかかった。思わず足を止める。
なぜ彼女が自分などを知っているのか、という疑問は次に彼女が言った言葉で納得した。
珍しい黒髪。彼女も、自分を馬鹿にする貴族たちの同類なのかもしれない。
かといって挨拶されたのに返さないわけにもいかず、落ち込む心を笑顔で誤魔化し、ルークも紳士な態度を崩さなかった。
だけど、彼女が向けてくる笑顔に邪推するようなものは一欠片もなく、純真無垢な天使のような微笑みで、悪意のないことを悟らせるその笑顔に毒気を抜かれた。
それからはもう、早かった。
穏やかな会話も、引かれた手も、コロコロ変わるその表情も、呼び捨てにしてほしいと望み、嬉しそうにルークの名前を呼ぶその声も、マリアの全てがルークを惹きつけてやまない。
完全な一目惚れだった。




