悪役令嬢、女子力を上げる
本日二部投稿予定です
衝撃の公開婚約から数日後、マリアはある場所で
「お、お嬢様ぁぁ! おやめください! 危ないですから! そのようなこと、私どもがやりますから! お部屋にお戻りください!」
「お嬢! 頼みますから! 怪我でもされたら俺が旦那様に顔向けできません!」
「いーやー! ぜったいぜったい戻らないわ! 離してー!」
慌てて部屋へと引きずっていこうとするララちゃんと、ジャッジとの攻防を繰り広げていた。
「なんですか! 何が目的なんですか!? なんでそんな意固地になるんですか!!」
「ご回復なさってから大人しかったじゃないですか! 何がお嬢をそこまで駆り立てるんです!?」
「なにか企んでるみたいな言い方しないでよ! 私はただルークに……っ!」
自慢の怪力で二人を振り払い、カウンターに用意したチョコレートに手を伸ばして叫んだ。
「手作りのお菓子を渡したいだけなのーー!!」
*****
「公爵家の令嬢が……自らキッチンに立って……料理だなんて……!」
「あら、これはお菓子作りよ。女の子らしいじゃない」
「そういう問題じゃありませんわ……!」
ブツブツ文句を言うララちゃんに言葉を返しながらカシャカシャとボウルの中身をかき混ぜる。反対していたジャッジはこの世界にはないレシピに目を輝かせてメモを取っている。
「お嬢……このレシピをどこで!?」
「……オリジナルよ。ジャッジ、そこの砂糖を取ってちょうだい」
前世でスイーツを作った方々には大っ変申し訳ないが、面倒な追求は避けたい。罪悪感はあるが致し方ないのだ。先人達よ、お許しください。
「オリジナル!? お嬢は天才だった!?」
そんなことを言いながらペンを走らせるジャッジにため息をつきながら、無言でカウンターの袋を手に取った。
嘆くララを宥め、興奮するジャッジを放置し、作業を進めること早数十分。マリアはオーブンから焼き上がったそれを取り出した。
「できた! フォンダンショコラ!」
まだ何か言っているララちゃんと鼻息を荒くするジャッジにまだ熱いそれとスプーンを渡す。
「食べてみて」
「え、いいんですかい? お嬢」
「ええ、いつも特別お世話になってるあなた達におすそ分けよ。お母様とお父様の分も用意してあるの」
そう言いながら、二人が恐る恐るといった様子でショコラを口に運ぶのを眺める。
「……!!」
「こ、これは……っ」
口に入れた瞬間、ララちゃんが大きく目を見開き、ジャッジが信じられないというふうに声を震わせた。
「こ、これはなんですか……甘くてふわふわで美味しいです……!」
「この柔らかい生地、程よい甘さ、中から溶け出る熱いチョコレート……! 美味いですお嬢! お嬢は天才です! 天使です!」
「お褒めの言葉ありがとうジャッジ。それじゃあ私はお母様たちのところへ行ってくるわ」
感動に涙を流す大げさなジャッジと無言で食べ続けるララちゃんを置いて、私はお父様の執務室へと向かった。
*****
「お父様、いらっしゃいますか?」
トントンと扉をノックしながら言うと、中から返事が聞こえた。
中に入ると椅子に座るお父様と書類を持つお母様がいた。
「マリアちゃん〜! 今日も可愛いわぁ! さすが私たちの娘ね!」
これがお母様の最近の口癖である。
ぎゅうううっと私を締め付けるお母様が、私が持つバスケットに気がついた。
「あらマリアちゃん、それなあに? 甘い匂いがするわ」
「さっき作ってきたんです。美味しくできたのでお母様とお父様にもと思って」
「本当かい!? 嬉しいなぁ、娘の手料理を食べれるなんて」
「まぁまぁ、マリアちゃんは器用なのねぇ」
笑顔で喜ぶ二人にスプーンと耐熱カップに入ったそれを渡す。きらきらと子供みたいな目でショコラを受け取った二人が、ぱくんとひと口食べた。
「……すごいわ! あの硬いチョコレートがこんなにふわふわしたケーキになるなんて……! マリアちゃん、これ本当にあなたが作ったの!?」
「はい、ジャッジやララちゃんも今厨房で悶えてます」
「マリア……これは素晴らしいスイーツだ。ぜひ兄上に献上しよう」
「お父様さすがにそれはやめてください!」
興奮のあまりとんでもないことを言うお父様に、私は慌てて首を振った。
父の兄、つまりマリアの伯父はこの国の国王である。重要なことだからもう一度言おう、国王である。そして兄が国王である父は、元王子である。
父は王族の中でもそれはそれは変わり者と称され、何故かその逸話はマリアの耳に入ってこないが、当時の国王、マリアの祖父は王子らしからぬその奇行に大変頭を悩ませたと聞いている。
そんな父は母と恋に落ち、普通は母が嫁ぎ王族になるはずの所を公爵家の一人娘であった母のため婿入りし、それを周囲に“第二王子のいつもの奇行”で納得させ結婚。この騒動は貴族の中で語り継がれる恋愛劇となった。この強引さはゲームのマリアの性格の基本となっている気がする。
拒否を続ける私に拗ねたのか、お父様は優雅に紅茶を飲むお母様の元へと歩いていった。
「フィーリア〜、マリアがひどいんだ」
「もう、オーウェン様。そういうのはふたりだけのときにしてくださいませ」
イチャつき始めた両親はフォンダンショコラの甘さなど優に超す。マリアはカップとスプーンを回収して素早い動きで執務室を飛び出した。
100ブクマ達成しました!皆様本当にありがとうございます。これからもマリアやルークの行く末を見守っていただければと思います。よろしくお願い致します!!
さびねこ。ฅ^•ﻌ•^ฅ




