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眠り姫を探せ  作者: 奈瀬理幸
本編
3/16

フクロウ小屋

 ようやく、森の木々の半分くらいの高さの階まで下りて来た。フクロウ小屋はこの階から東に突き出た塔にある。

 塔の入り口まで来て、あたしはプリシラを肩から降ろす。プリシラは校内を歩く途中でウェイウェイがいる側のあたしの肩に移動し、ホウホウと、あたしよりたくさんウェイウェイに話しかけていた。ウェイウェイもあたしと一緒でフクロウの言葉がわかるってわけではなさそうだったけど、にこにこと頷いてくれていた。

 木製の扉を押し開けて、フクロウ小屋に入った。薄暗い中に、黄色や赤の瞳だけがきらきら光っている。


「ほい、頑張ったね。プリシラ、ご飯食べて寝な」


 フクロウたちのご飯は、ハツカネズミやウズラ、コオロギやミミズだ。小屋の管理人さんがよく気をつけてくれていて、新鮮で活きのいい餌たちがいつでもフクロウたちを待っている。

 飲み水にもこだわってくれていて、湖の向こうにそびえる山の湧き水だった。

 それからフクロウたちは水浴びと砂浴びをするので、フクロウ小屋の床には、フクロウが入ってお腹の羽毛が濡れるくらいに浅くて、存分に翼をばたつかせることのできる広い人工池と、細かくさらさらした軽い砂が一面に敷かれた砂場がある。

 眠るときには、止まり木、木製の巣箱など、好きに場所を選べる。木の太さや箱の大きさ、入り口の穴の大きさは、様々に用意されている。

 食事後に(くちばし)や爪を(こそ)いで綺麗にするための太い丸太もある。

 本当に疲れたときや、まだ幼い子のために、うつぶせ寝ができるよう、平らな台や切り株や、小さな芝生や小岩もある。

 至れり尽くせりの小屋で、みんなの愛鳥たちは伸び伸びと寝ている。


 あたしは杖でまた光の玉を出し、フクロウたちの並んでいる止まり木に向かって放つ。今度は青、ピンク、白の光の玉がくるんくるんと跳ねていった。

 プリシラは光の玉を追いかけ、すいーっとまっしぐらに止まり木へ飛んでいった。





 全部で七階建てのフクロウ小屋にはたくさんのフクロウがいる。みんなのペットと、学校が飼育する個体だ。

 代表的なのはメンフクロウ、モリフクロウ、シロフクロウ、カラフトフクロウ、ベンガルワシミミズクあたりだろうか。


 メンフクロウは、ハート形の顔をしている。つぶらな瞳と、盛り上がった眉間が特徴的だ。顔とおなかは白く、背中と翼は、灰色の(かすみ)がかかったようなうす茶に、焦げ茶と白の点々が入った色である。くちばしはうすいピンク。穏やかな性格で、学校の郵便フクロウもこの種類が一番多い。中型種だ。


 モリフクロウは、森に棲んでいる。頭も体もこんもり丸い。くりくりしたまんまるな目と小さなくちばし、赤茶と白の混ざった羽で、可愛い。おっとりとした子だ。これも中型種。


 シロフクロウは、白い。雪原で、雪にまぎれて狩りをする。フクロウのなかで一番寒い地方に生息している。オスは真っ白、メスは、白地に薄墨(うすずみ)の斑点が散った羽の持ち主だ。くちばしと爪は、オスメスともに真っ黒い。その頭にはみっっしりぎっっちりふわふわな羽が密集していて、足の先までもふもふとした羽毛に被われている。愛情深い性格の大型種だ。


 カラフトフクロウは、頭が大きい。深く(まる)いお皿みたいな顔に、小さな黄色い目が埋もれている。フクロウのなかで一番耳がいい。羽はグレーのまだら模様、白い眉毛と口ひげが個性的で、サンタクロースのおじいさん(灰色)みたいに見える。性格も温厚だ。大型だけど、体重のとても軽い子である。


 ベンガルワシミミズクは、ニャーと鳴く。おおらかで明るい性格だ。頭には、うさぎの耳のように突き出た羽、「羽角(うかく)」が生えている。この羽角(うかく)は、フクロウの気分によって立ったり寝たり、風に吹かれて向きを変えたり、忙しい。クリーム色のおなかには縦長の黒い点々がある。明るいオレンジの瞳と黒いくちばしが、野性味がありつつ可愛い。インドに棲む大型種。





 ワシミミズクはほかにもたくさんいる。

 ユーラシアワシミミズク、アビシニアンワシミミズク、アメリカワシミミズク、アフリカワシミミズク、ケープワシミミズク、ファラオワシミミズク、トルクメニアンワシミミズク、シベリアワシミミズク、マレーワシミミズク、ネパールワシミミズク、クロワシミミズク──ワシミミズクだけでもいっぱいだ。

 ワシミミズクはみんな大型で、みんな羽角(うかく)がある。賢く、肝が据わっていて、悪戯好きな子が多い。


 見分け方は、ユーラシアが、ベンガルよりちょっと色が濃い。体も大きく、好奇心旺盛で物怖じしない性格だ。


 アビシニアンは、瞳が真っ黒だ。目のふちだけが唯一赤い。全体的に灰色で、おなかは薄く、翼は濃い。堂々とした子だ。


 アメリカは、大きい。ホワイトとブラウンにタイプが分かれる。顔が白い子と赤茶の子がいる。頭とおなかの模様は波紋のように細かく、体の色は顔と同じだ。指が太く、獰猛で、よくじゃれてくれる。


 アフリカは、小さめ。シルバー、レッド、ブラックタイプがいる。全体的に白い子と焦げ茶の子に分かれる。頭には小さな、胸元にはぼやけたような、白く丸い斑点がある。飼い主によく甘噛みしてくれる子だ。


 ケープは、全体的に薄黄色く、胸からおなかまで、濃く大きめの丸っこい模様が広がっている。ワシミミズクのなかで羽毛が一際柔らかい。人懐っこく活発だ。


 ファラオは、ワシミミズクのなかでは中型だ。ベンガルと比べて目が赤く、体の色もうすい赤茶。賢く優しい。


 トルクメニアンは、縦長の模様と、とてもうすい茶色の羽をしている。素直な性格。


 シベリアは、おなかにある縦長の模様以外が白くて、ワシミミズクのなかで一番大きい。大人しくて、あまり噛まない。

 この八種類は、慣れていないとわかりにくい。特に瞳の色は個体差があるから、あまり見分けるポイントにはならない。知りたいときは飼い主に聞くのが一番だ。


 ほかの三種類はわかりやすい。

 マレーワシミミズクは、目のすぐ上にある垂れた羽角(うかく)が特徴的だ。大きな黒目と、白いおなかを覆うような濃い横斑にも目がいく。成長速度もゆっくり、ご飯を食べるのもゆっくりという、おっとりした子たちである。


 ネパールワシミミズクは、マレーワシミミズクととてもよく似ている。垂れた羽角(うかく)に大きな黒目は、一見見分けがつかないし、性格も同じくおっとりしている。はっきりとした違いは、眉の色とおなかの模様。マレーワシミミズクの眉は白くて、ネパールワシミミズクの眉は黒い。そして、ネパールワシミミズクのおなかには、なんと、小さな黒いハートがたくさん散りばめられているのだ。なんてロマンチックなんだろう。


 クロワシミミズクは、ぽってりした白いくちばし、顔をふちどる黒い羽毛、暗い灰色の翼を持つ。まぶたは羽毛が生えていなくてピンク色。別名ミルキーワシミミズク、サルクイワシミミズクとも呼ばれていて、足の力がとても強い。アフリカで最も大きなフクロウだ。性格は大人しくて茶目っ気がある。

 この三種は、ほかのワシミミズクの隣にいると違う種類に見える子たちである。


 ワシミミズクに見た目が近い種に、シマフクロウがいる。

 シマフクロウは、世界で一番大きなフクロウだ。大きさは七十センチ、翼を広げれば二メートル近くになる。とにかく大きくて、小山みたいにこんもりしている。川魚が好物だ。大きな幅広の羽角(うかく)があって、尾羽は短め。白っぽい灰褐色の羽には、濃い縦縞と薄い横縞の模様が入っている。小顔に金色の瞳が光る、迫力あるフクロウだ。ずっと同じ場所に住んだり、生涯同じ相手と添い遂げるなど、外見に反して一途な性格なのも魅力である。





 まだたくさんいる。彼らは頭に羽角(うかく)のあるミミズク種だ。

 V字の小さな羽角が、スポーティーな印象で可愛いコミミズク。黄色い瞳の目尻側が長く伸びたまつげのように真っ黒で、とても目力が強い。顔に似合わず協調性があり、少しぼんやりした性格でもある。


 ウサギフクロウはその名の通り、ウサギの耳のように長くて立った羽角を持つ。大きくてまんまるな瞳や、草原に住むところにもウサギの雰囲気がある。白い頬には、茶色の瞳から涙が流れたみたいに一筋、茶色い模様がある。この涙の幅は、個体によって太さが変わる。神経質な子が多い。


 トラフズクの模様は、虎のような斑だ。顔の真ん中にあるオレンジの目と、白眉、白ひげが特徴。黄土色のおなかには下向き矢印のような虎縞があり、頭からは大きな黒い羽角がぴょこんと飛び出ている。彼らは大人しい。


 マレーウオミミズクは、名前の通り魚を食べる。鼻(嘴)筋から広い角度で伸びるギザギザした大きな羽角と、ツンツン尖って見える頭が炎のようで格好いいのに、置物のようにおっとりとした子だ。大きな黄色の目、真ん中に一本線の通った赤い黄土色の羽、羽毛ではなくうろこに被われた珍しい足を持つフクロウだ。


 カンムリズクの名前の由来は、立派なV字の太眉。眉間から羽角へ続く白い羽が、深く被った冠のように見える。この白い羽角は、普段は横に寝ていて、何かを見つけるとピンと立つ。黒い目、赤い顔、茶色の体。熱帯雨林に棲んでいて、カブトムシを食べる。(つがい)で寄り添い、ヤシの葉の下で雨宿りをする姿がお馴染みだ。

 ここまでが中型種。





 続いて小型種。彼らは両手のひらに包めるくらいの小ささだ。

 スピックスコノハズクは、こんもり、キリッ、としている。うすい黄色の目。きりっと上がった眉と、細かい縦模様の入った羽がふわっとしていて可愛い。羽角は小さい。性格は温厚で、人懐っこい。仲間と一緒に止まり木にいるときは、たいてい、おなかの境目がわからないくらいにくっついている。


 フクロウ、特にコノハズク種はみんな隠れんぼ上手だけど、ヒガシアメリカオオコノハズクは、特に木の幹に同化するのが上手い。松の木の幹によく似た模様の体で、めり込むように木に馴染む。瞳はうすいクリーム色で、肩のところが白い。彼らには面白い習性があって、巣穴に住み着く虫を食べてもらうために、なんとヘビを飼うのだ。


 アフリカオオコノハズクは、灰色で目が赤橙(あか)い。顔の横に黒い羽毛が生えていて、(まる)くて大きな瞳と、口ひげと、暗く染まった羽角がチャームポイントだ。気が強くてわがままだけど、本当は怖がりなんだよね。


 インドオオコノハズクは、茶色い。焦げ茶の翼に白っぽいおなかだ。瞳は潤んでいて、近づいてみると吸い込まれそうで、こぼれ落ちそうに大きい。その色は黄から茶までいろいろある。目のふちは赤く、瞬膜(しゅんまく)は青く、眉間から眉毛にかけては白い。小型種にしては比較的羽角の長い子だ。性格は好奇心旺盛で、人懐こい。

 瞬膜(しゅんまく)とは、まぶたの内側にある薄い膜のこと。フクロウには上下二枚のまぶたがあって、上からも下からも器用に閉じることができるんだけど、この瞬膜は、二枚のまぶたより動きが速くて、とっさのときに眼球を保護するのに役立っている。


 サバクコノハズクの体は、うすいグレー。黒く細い縦斑が入る。目は淡いクリーム色で、羽角もくちばしも小さい。そのくちばしには、対すると少し大きめに鼻の穴が開いている。体は小さいけど、体重の半分の餌が必要な、ものすごくよく食べる子だ。


 ヨーロッパコノハズクは、指に乗るくらい小さくて、とても軽い。羽は灰色みのあるうす赤茶色。明るい黄色の目、濃い灰色のくちばし、こつこつした木の幹のような体だ。この子も食欲旺盛で、もし餌の昆虫をあげるときには、素速く口元まで持っていってあげないとこちらに飛びかかってくる。小さいけれど、まったりした性格だ。





 フクロウの目の色は、ざっくり分けて二種類だ。黄色やオレンジなどの明るい色と、黒や茶色などの暗い色がある。明るい色の子は、太陽の光に目が比較的強く、昼間でも対応できるといわれている。そして暗い色の子は、根っからの夜向きといわれている。──いわれているだけで、みんな好きな時間帯に飛ぶんだけどね。目の色、体の大きさ、羽の色は、飼い主がペットにしたいフクロウを選ぶときの良い基準になる。


 フクロウの足は、ほかの鳥と形が違う。普通の鳥は、四本ある足の指のうち、三本が前、一本が後ろに向かって伸びた形をしている。対してフクロウは、前後にそれぞれ二本ずつ指が伸びている。この足のおかげで、フクロウは長時間安定して枝に止まることができるのだ。

 足の裏には、丸く膨らんだ肉球が指一本につき二個ずつついている。温かくてふにふにしたこの肉球に触ったとき、気持ちよさそうにする子と、ノーリアクションな子と、嫌がって怒る子がいる。


 小屋の床には、乾燥した太ったイモムシのような小さな塊が、あちこちに落ちている。これはフクロウたちが吐き出したものだ。フクロウには、食べたもののうち、骨や毛など胃袋で消化ができなかったものをひとかたまりに押し固めて吐き出す、という習性がある。これは、消化器官に負荷をかけずに済むだけでなく、塊を吐き出すことによって食道をきれいにする効果もある、フクロウにとって大事な行動だ。





 まだまだたくさんいる。ここからはミミズクではなく、フクロウだ。フクロウと呼ばれる子たちは、頭の上に羽角(うかく)はない。

 ほかのフクロウより倍も長い尾羽が自慢の、オナガフクロウ。黄色いくちばし、黒地に白いまだらの翼、黒い横縞の入ったふっくら白いおなかの持ち主だ。がっしりとした体格で、飛ぶスピードも速い。利発で気位の高い中型種である。


 オオフクロウは、オレンジ色の楕円の顔に、V字の眉が白く目立つ。性格はマイペース。焦げ茶の丸い瞳に、なだらかな頭をしていて、ちょっとアライグマっぽい。おなかの羽はケーキのマーブル模様みたいに繊細で素敵だ。こちらも中型種。


 目のまわりの白いふちどりがメガネのように見える、メガネフクロウ。ヒナの頃は綿毛のように真っ白な頭と真っ白なおなかなのに、大人(成鳥)になるとオレンジの体、焦げ茶の胸、真っ黒な頭になるからその変身ぶりがすごい。南米の森に棲んでいて、カニやカエルも食べるくらい好奇心が旺盛だ。大きな足の中型種である。


 マレーモリフクロウの顔は、オレンジ色のハートだ。茶色の頭と背中には、小さな斑点がたくさん。ふかふかした縞模様のおなかにも癒やされる。真っ黒な瞳で、こちらをじっと観察していることが多い。水辺に棲む、おっとりした性格の中型種だ。


 アカアシモリフクロウは、幾重にも重なったおなかの横縞模様がとても可愛い。丸いハートマークのような輪郭の顔と、愛くるしい目をした中型種だ。脚には柔らかい羽毛がたくさん生えている。この子たちは飼い主以外が近づくとくちばしをカチカチ鳴らして威嚇してくるけど、甘えん坊さんが多いらしい。


 アフリカヒナフクロウは、顔が灰色。くちばしはオレンジ。アカアシモリフクロウと同じく、おなかにたくさん横縞模様があるけど、アカアシモリフクロウは暗い茶色と白の横縞で、アフリカヒナフクロウの模様はうすい茶色と白、という違うがある。また、頭までしましまなアカアシモリフクロウに対し、アフリカヒナフクロウの頭は茶色い空へ星を置いたみたいに白い点々が散っている。神秘的な中型種だ。フレンドリーで愛嬌ある性格をしている。


 クロオビヒナフクロウの体は、濃いグレーだ。白く細い横縞が全身にびっしり入っていて、瞳も黒い。暗いなかで一点、くちばしのオレンジ色がよく目立つ。のんびりした中型種だ。


 シロクロヒナフクロウは、白と黒でできている。黒い瞳、黒い顔、点で繋がったような白い眉、黒い横縞模様の白いおなか。枝がわさわさ茂り、湿った森が好きだ。怖がりではないけれど、枝越しに隠れていられるところを選んで止まる。熱帯雨林に棲む中型種。


 ナンベイヒナフクロウは、ヒナフクロウのなかでは小さめの中型種で、縦に白い眉がある。やんちゃだったりおてんばだったりする。

 ヒナフクロウたちは、大人になってもヒナのように見えることからこう呼ばれている。


 ウラルフクロウは、頭が丸くて大きい。そのシルエットは二頭身だ。東の()の国でリンゴの木に住んでいる。大きなまん丸の顔に、一重に見える小さな黒目。黄色いくちばしで、うすいグレーに縦縞模様の入った体のフクロウである。大人しいけど飼い主の頭の上に乗るのが好きな、大型種。


 アメリカでフクロウといえばこの子、アメリカフクロウ。丸い頭に大きな体、黒くて丸い一重の目だ。白と茶褐色の羽が縦にも横にも縞をつくり、針葉樹の森によく馴染んでいる。落ち着いていて大人しい。ふわふわと飛ぶ大型種だ。


 マダラフクロウは、まだら模様だ。茶色い翼とおなかに、白い点が散っている。彼らは、眠るときと狩りのときとで森を使い分ける。確かに、苔むした古森は大きなゆりかごみたいだし、日の差し込む新緑の森にはネズミが好きな木の実がたくさん落ちているものだ。行動範囲の広い彼らは人懐っこくおしゃべり好きで、鳴き真似をすれば近寄ってきて返事をしてくれる。黒い瞳の中型種。


 ブラックメンフクロウは、黒いメンフクロウだ。ハート形の顔、くちばし、おなか、脚──メンフクロウの白いところが全部黒い。白いメンフクロウと並んでいると、こんがり焦げたみたいで、あたたかくておいしそうに見えてしまう。


 ススガオメンフクロウは、ハート形の顔が、(すす)けたようにほんのり紫がかった灰色をしているメンフクロウだ。白いくちばしで、オレンジのおなかには小さな斑点がある。元気のいい中型種。


 ヒメススイロメンフクロウは、少し小さくて、顔から尾羽まで墨を流したような暗い色のメンフクロウだ。黒にふちどられたハート形の顔、真っ黒な瞳、濃く暗い翼に白の点々が散って、きれいな墨色のおなかをしている。暗く鬱蒼とした多雨林を好む。偵察好きで、巣穴から顔を出すくらいで、全身は滅多に見せない。


 ニセメンフクロウは、メンフクロウにちょっと似ている。くちばしの上の眉間と額がとても広い。羽角はないけど、少し逆立ったようなこめかみと、水玉模様のある白いおなかがなんとも可愛い中型種だ。フクロウのなかでも輪をかけた面倒くさがりで、昼も夜もとにかく動かず、よく眠る。


 アオバズクは、青葉にまぎれて暮らすフクロウだ。デリケートな子が多い。体は細身で、頭もとても小さい。白と茶色の三つ編みのような色合いのおなかと、金色に光る瞳が印象的な、小さめの中型種である。





 ここからはみんな小型種になる。

 ヒメフクロウは、後頭部に眉、目、くちばしに見えるような黒い模様を持っている。これは、木に擬態して身を守るよりも、敵への威嚇を選ぶような強気な性格ゆえの工夫だ。焦げ茶の羽に金色の目を光らせ、枝から枝への見回りも欠かさない。一方で、背中から見ても翼よりぽってりとはみでている白いおなかは可愛い。ピピッ、ピピッという鳴き声は高く澄んでいて、森の中でもよく通る。


 アカスズメフクロウは、ヨーロッパで最も小さなフクロウだ。まんまるの頭、赤茶の体に、こんもり盛り上がった黄色い鼻の穴。おなかには白い羽毛が混ざっていて、尾羽も長く、スズメとそっくりだ。臆病な性格である。夕暮れや夜明けに飛ぶのを好む。


 キンメフクロウは、頭が大きい。こんもりして、赤茶と白がまざりあったその姿は、茶色い雪だるまのようだ。金色の丸い目を見張っているから、いつも驚いているように見える。夜が好きで、引きこもりがちの静かな子だ。


 コキンメフクロウはその名の通り、小さな体と金色の瞳を持つ。翼はモカ色と銀のまだら模様だ。あごの下には白い襟巻き模様がある。白い眉のせいなのか、いつも目つきが鋭く見える子たちだ。つれなさと人懐こさが九対一のような性格をしている。なかなか気を許してくれないから、たまに甘えられると飼い主のほうが大変なことになる。


 フクロウのなかには木に住まない種類もいて、雪原に降りているシロフクロウ、サボテンの穴に暮らすサボテンフクロウなどがそうだ。

 そして、アナホリフクロウも木には住まない。彼らの巣穴は地面にある。プレーリードッグの古巣を活用して、快適な地下ライフを送っているのだ。飛ぶより地面を走ることのほうが多い彼らは脚がとても長い。目は真っ黄色、体は茶と白のまだら模様で、首元に焦げ茶のラインがある。フットワークの軽い性格で、上下にぴょこぴょこ背伸びと前屈みを繰り返して辺りを窺う仕草が可愛い。


 最後は、サボテンフクロウ。彼らはキツツキが一年前に彫ったサボテンの穴に住む。灰褐色の体、黄色い目、灰色のくちばし、白い眉。大人になっても十三センチほどの、世界で一番小さなフクロウだ。





 フクロウは種類が多くて挙げるときりがないけど、フクロウ好きのあたしからしたらどの子も可愛くてこれでもまだ挙げ足りない……。


 ちなみにこれは秘密の話なんだけど、フクロウで一番可愛いのはお尻だ。顔が可愛いのはもちろんだけど、お尻の可愛さは特別。飼い主しか見られないんだけど、その飼い主でもいつでも見られるわけじゃない。フクロウ飼いのあいだでは、見えた日にはいいことがあるといわれている。……これは羽の話じゃないよ。それは一枚の桃の花びらみたいなんだ。





「お休み、プリシラ!」


 あたしの愛しのやんちゃフクロウの種類は、マゼランワシミミズク。名前はワシミミズクだけど、ワシミミズクにしては少し小さめな中型種だ。枯れ葉みたいな大きな羽角と、にらみを利かせた凜々しい眉が目立つ。大きな黄色い瞳、クリームを混ぜたコーヒーのような色の横縞模様の羽をしている。

 驚きの鏡横丁ミラリ・ミラー・アリーのフクロウショップでこの子を買ったとき、「マゼランは少し豪快なところがありますけど基本的に大人しいですよ」と言われたんだけど、プリシラはずいぶんと腕白な個体だったみたいだ。

 あたしは、暗がりとほかの子たちに紛れて見えなくなったプリシラに声をかけて、ウェイウェイと塔を出た。

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