どこでも一緒
ゆりちゃん家の飼い猫となったボクは、いつもゆりちゃんと一緒。
大学生であるゆりちゃんは、学校にもボクを連れてきている。
「おはよー!」
見慣れない女の子が、ゆりちゃんの元に駆け寄ってくる。
ゆりちゃんのお友達かな??
「あ…陽子!おはよー!」
この子がゆりちゃんが言ってた、陽子ちゃんって子かぁ。伊藤陽子ちゃん……ゆりちゃんに似ててすごく優しそうな子。
「ねぇねぇ、ゆり!これ何?」
ゆりちゃんの持ってきた大きなカゴに陽子ちゃんは興味津々の様子だ。
それは無理もない。
ボクはゆりちゃんと出掛ける時はいつも、一際大きなカゴに入れられてお出掛けする。
言ってみれば、ゆりちゃんと一緒に出掛ける時のお家がこの大きなカゴなのだ。
ましてや、大学のキャンパスの中でもボクのカゴは最も目立つ。
犬を連れてくる人は居るけど、猫を連れてくる人はいない。
ゆりちゃんがおもむろにカゴの扉を開けた。
「うわっ!!」
カゴの中にいるボクを見て、思わず陽子ちゃんは驚いていた。
「かわい~い!!」
陽子ちゃんも猫が好きなようだ。
「かわいいでしょ!み~くんっていうの。」
「み~くんかぁ…………あたし、陽子!よろしくね♪」
ゆりちゃんのお友達ならばボクはウェルカムだ。しかも、陽子ちゃんもゆりちゃんに負けないくらいにボクのことを好いてくれている。
「あ………ねぇねぇ陽子!今度の日曜日、一緒にお茶しない?み~くんも連れてさ…」
「い~ねぇ!ゆり。行こ行こ!」
「よ~し、決まり!日曜日またみ~くん連れてくるね。」
「やったー!嬉しい!またみ~くんに会えるね♪み~くん、また日曜日ね!バイバーイ!」
陽子ちゃんとはクラスが違うようなので、今日はこれで陽子ちゃんとバイバイした。
ボクはあまりの嬉しさにカゴの中ではしゃぎまわった。
「コラ!み~くん!おとなしくしてようね!」
時にはしゃぎまわると、ゆりちゃんに怒られることもしばしば。
でも、ゆりちゃんに怒られてもボクは平気だ。なぜなら、ゆりちゃんはボクの命の恩人。
ボクはゆりちゃんの為ならなんだって聞くよ。
イタズラ好きだった野良猫の頃のボクとは明らかに怒られ方が違う。
野良猫の頃はボクのことを煙たがるような怒られ方だった。
しかしゆりちゃんが怒ってくるのはボクを愛してくれているから。それがボクにも充分に伝わっていた。
ボクは大人しくカゴの中で過ごした。そしていつしか寝てしまった。ゆりちゃんとお出掛けする時はいつもこんな感じだ。
そして、楽しみな日曜日を迎えた。
「おはよー!」
「あ………ゆり!おはよ。み~くんも、おはよ♪」
オシャレなカフェでいろんな話をする二人。
すっごく楽しそう。
あ~、ボクも二人と楽しくしゃべりたい!
人間って、実はすっごく楽しい生き物なんだなぁ。二人を見てみると、ホントに人間の良さがつたわってくる。
「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~!!」
ボクもしゃべりたい!カゴの中でバタバタ地団駄を踏んでいるボク。
「ど~したの?み~くん、あたしたちとおしゃべりしたいのかな??」
ゆりちゃんがカゴから出してくれた。
それから、二人とボクの会話が始まった。
ボクは人間の言葉は分からないから、何の話をしてるかは分からない。
でも二人の笑顔を見てると、ホントに楽しい。
「にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~にゃ~!!」
ボクも一生懸命二人の会話に入ろうとした。
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
「陽子!またみ~くんとどこか行こっか」
「いいね!連れてきて連れてきて!!み~くんとバーベキューしたり、遊園地で遊んだりとか、良くない?」
「それいい!じゃー、また予定決めとくね。陽子、またね~」
「うん!ゆり、バイバーイ♪ み~くんもバイバーイ♪」
ホントにこれ以上なく楽しかった1日だった。
ボクをどこへでも連れてってくれるゆりちゃん。
ボクは365日24時間、ずっとゆりちゃんのそばにいたい!そう思うようになっていった。