そして誰もいなくなった
く~にゃんとの別れから1ヶ月が経った。
「お腹空いたなぁ…」
く~にゃんのことはすっかり忘れて、元気を取り戻したボク。
お腹が空いたら、いつもの肉屋のおばあちゃん家へ!
でも、様子が変だ。
開いているはずの肉屋さんが開いていない。
「今日はおやすみなのかなぁ…」
ひとまず今日のところは肉は諦め、コンビニのゴミ箱を漁ることにした。
翌日、再び肉屋に行ってみた。
今日も肉屋は閉まっている。
翌日も、そのまた翌日も……
肉屋のシャッターが再び開くことは、もう二度となかった。
シャッターに何やら貼り紙が貼ってあった。
「当店は、店主の健康上の都合により閉店いたしました」
もちろん、野良猫であるボクに文字など読めない。
ボクは来る日も来る日も、肉屋のシャッターが開くのを待ちわびていた。
もう二度と開くことはないシャッターを前に……
すると、通りすがりの人間のおばさんたちの話し声が聞こえた。
「ここのお肉屋さんって、おばあちゃん1人でやってたじゃない?」
「そうそう。そのおばあちゃん、亡くなられたそうよ!」
「えーーー!!それでお店閉めちゃったのね…」
「そうみたい。ここのお家、女ばかりで跡継ぎがいないですものね…」
「ここのお肉、安くて美味しかったのになぁ…」
なんだって!おばあちゃんが死んじゃった??
折角、く~にゃんにフラれたショックから立ち直ったと思ったのに!
またボクの前から誰かが居なくなるなんて!!
ボクはショックで涙が止まらなかった。
それからというもの、まともにご飯を食べることができず、体は完全に痩せ細っていた。
やはりボクは野良猫。野良猫は世間から嫌われる運命なのだろうか…
ボクの前には、もう誰もいない。
野良猫であるボクに、生きる価値なんてあるのかな?
そんな呆然とした日々が続いていった。