儚く散り行く片想いの花
ボクがイタズラ好きなのは、人間が好きだからだけではない。
く~にゃんにボクを認めてもらうためでもあった。
イタズラこそがボクの生き様。イタズラをして、く~にゃんに認めてもらえれば、ボクはもう一生野良猫でもいい!そう思っていた。
ある日のく~にゃんの家。
ボクはダメもとでく~にゃんの家に突入しようと考えた。
そして、作戦は決行された。
ガタガタガタ………
く~にゃんの飼い主のお部屋の窓が開いていた。
これはチャンスだ!
ボクは力いっぱい、窓を開けた。そして、く~にゃんの家に忍び込んだ。
「痛っ!!」
何か丸いものに足を取られた。
乗っかっても乗っかっても転げ落ちる…
これ、なんか楽しい!
人間世界でいう、ボールというものにボクはいつしか虜になっていた。
ボクはこれを今まで見たことはなかったからだ。
否、見ていたかもしれないが、魚屋のおじちゃんにいつもぶつけられてばかりいたから、ボールは怖いもの…といつしか刷り込まれていたのかもしれない。
ボクが遊んでいるうちに、ボールが窓に当たった。
パリン!!
部屋の窓ガラスが割れた。
その鈍い音を聞いて、執事の人がお部屋にすっ飛んできた。
そして、ボクを睨み付けた。
「このイタズラ猫め!お前みたいな猫はこうしてやる!!」
ボクは執事の人が持ってきた、小さな箱に閉じ込められた。
箱のフタが開かない。
いつしか、意識が朦朧としてきた。
完全に酸欠で倒れそうになった。
なんとか最後の力を振り絞り、小さな箱から脱出することができた。
く~にゃんの家から逃げようとしたその時だった。
く~にゃんがボクの目の前にいた。
「く~にゃん!!」
しかし、く~にゃんは明らかに怒った顔をしている。
「ボクは……………く~にゃんが……………好きです!」
言ってしまった。く~にゃんに告白してしまった。
しかし、く~にゃんの怒った顔は変わらなかった。
否、むしろより一層鬼の形相で猫パンチを放ってきた。
く~にゃんの猫パンチはボクの頬にヒットした。
ものすごく痛い!
「あなたみたいな猫は最低!こんなに人間に危害を加えていいと思ってるの??
もう私の前に二度と顔を見せないで!
所詮、野良猫のくせにあたしと付き合おうなんて、10年早いわよ!!」
まさに玉砕だった。
く~にゃんに嫌われた。
それからというもの、二度とく~にゃんの家の窓は開くことはなかった。
そして、く~にゃんは飼い主とともに、イタリアへと旅立っていった。
く~にゃんに逢うことはもう二度とできない。
でも、それこそがボクたち野良猫の宿命なのかもしれない。
ボクは失意の中、眠りについた。
しかし、この失恋以上の衝撃的な出来事が待っていようとは、この時のボクはまだ知る由もなかった。